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【第十一章完結】棄てられ王子の最強イカダ国家 ~お前はゴミだと追放されたので、無駄スキル【リサイクル】を使ってゴミ扱いされたモノたちで海上都市を築きます~  作者: タック
第八章 世界が終わる七日間

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アルケイン王国の現状

「で、アルケイン王国の現状を教えてもらっていいか? ええと……ライトさんだっけ?」


 ノアクルは綺麗なシュレドこと、ライトの家に案内されたあと、服をすべて洗濯してもらい、水桶に浸したタオルで身体を拭いていた。

 最初は絶対に罠だと構えていたのだが、襲おうとすればいつでも意表を突けるようなタイミングでも善人っぷりは変わらなかった。

 本当に他人のそら似ならよかったのだが、決戦魔術で変質した特殊な魔力の残り香のようなものを感じるので残念ながらシュレド本人だ。


「そうですねぇ……。村人さんや行商人さんから聞いた話も交えてですが――」


 第二王子のジウスドラが繰り上がり、第一王子となってしばらくしたあと。

 急に国内の情勢が一変してしまった。

 最初に国民が覚えた違和感は、無限とも言える資源の供給が止まってしまったことだ。

 この出所不明の資源供給があったからこそ、アルケイン王国は栄え、国民も裕福に暮らすことができていたのだ。


 今さら食糧のために狩りをしようにも山はゴミで埋め尽くされ、海は汚染されていた。

 また食糧以外の物品も、いちいちゴミを再利用するようなことは無駄だと思われていたので、修理方法すら忘れ去られていたのだ。

 国民が困り果てて王へ訴えようとしたのだが、王都で出迎えたのは王国軍ではなく、ゴミで出来たダスト兵という存在らしい。

 ダスト兵は人間ではなく、ただ冷酷に反逆した国民を排除して海へ投げ捨てていく

 それらを指揮するジウスドラと、怪しい風体の〝欲〟の名を持つ六人がいるという。


 王国軍はというと、もう必要ないとばかりに国から見放され、その役目を失ってしまったらしい。

 そんな苦しい生活が続いて、二日前に王が例の『七日後に世界を滅ぼす』という宣言をしたそうだ。

 それからいくつか他国の船がやってきては撃破されていったという。


「ザッと説明するとこんな感じですね」

「なるほどな……。船が襲われたときの状況からしても合点がいく」

「私としては以前のアルケイン王国は知らないですが、今はかなり酷い状態ですね」


 実はノアクルは、未来がこうなるというのはある程度予測できていた。

 ゴミが溢れて処理をしないのなら置き場の問題や、汚染が進むのは当然だろう。

 ノアクルとしてはゴミをどうにかするのが楽しいから再利用を当時からしていただけなのだが、それなりの教育を受けていて頭が悪いわけではないので予測可能だっただけだ。


「ある村人は『ゴミ王子の呪いだ』とか『土地へ敬意を払わなかったのだから当然の報いだ』など色々な意見が出てますね……」

「ふむ……」


 普通の人間がノアクルの立場なら『俺を追放したのだから、当然の報いだ!』というコースだが、ノアクルは別に気にしない。

 ゴミの再利用も他人に押しつけるわけではなく、自分が趣味でやっていたものだからだ。

 たった一人で国の未来を動かせると思うほど、自惚れてはいない。

 国とは、国民一人一人で構成されているものなのだから。

 ――とか表で言うと、ローズが『座学の賜物ですわ!!』とドヤ顔をしてきそうなので黙っているだけだ。


「七日後に世界が滅びるとか以前に、アルケイン王国の国民自体がピンチってことか」

「そうですね。無限のような資源供給が急遽停止して、新たな資源を確保できないのなら国民の大半が死に絶えるでしょう。外部から資源を入れるというのも、現状では無理ですし……」

「まぁ無限のような資源供給が再開すれば国は元通りになるかもしれないが、それ自体が胡散臭かったしな。出所不明の資源に頼り切りの大国など気持ちが悪い」

「ごもっともです……」


 本来のシュレドなら『全部ノアクルのせいに違いないーッ!!』と叫んでくるのだろうが、綺麗なシュレドは常識人過ぎて調子が狂ってしまう。

 そんな若干気まずい空気を感じていたら、外で大きな警鐘がカーンカーンと鳴り響いた。

 来る時に少しだけ見えた高い見張り台からだろう。

 綺麗なシュレドが慌ててドアを開けて、周囲の村人に確認を取った。


「どうしたんですか!?」

「だ、ダスト兵が攻めて来やがった!! 王国軍が足止めしているが、今のアイツらは散り散りになって数人しかいなくて役に立たねぇ!! 早く逃げる準備をしろ!!」

「そんな!? ただでさえ栄養不足で床に伏せっている村人さんもいるというのに……」

「置いてくしかねぇ!! みんな死ぬよりはマシだ!!」


 綺麗なシュレドは迫る敵に身体を震わせていたが、何かを決意した表情でフライパンを手にして家の外へ飛び出て行った。


「お、おい!? ライト、まさかそんなもんで戦おうってんじゃ……待て! おい! 無茶だ!! 相手は、あの不死身のダスト兵だぞ!?」


 村人が止めようとするが、すでに走り去ったあとだ。

 それを見ていたノアクルは、身体を拭き終わって立ち上がった。


「やれやれ、どんな状況でも本当に面倒なやつだな……」

「あ、あいつを……ライトを止めてやってください!! 漂流者――いえ、ノアクル様はわかっているかもしれませんが、もう非道な行為をしていたシュレド大臣ではなく、気の良い村の仲間なんです!!」

「ふむ、やはり俺の名前を……? 色々と話をあとで聞きたいところだが、その頼みは了承した。俺も助けられたし、アイツに借りを作ったままだとむず痒い」

「ありがとうございます!! やはり貴方はこの国の王――……」


 ノアクルは王族の貫禄で威風堂々と歩き、綺麗なシュレドの後を追ったのであった。


「って、ノアクル様。なぜ全裸にベスト……」


 ――残された村人は少しだけ不安になってしまった。

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