騎士団退団
誘拐犯の自白により、23人の子供が奴隷商の地下室で見つかった。
奴隷商は逃げようとしていたが、挙動不審だったことで、街の門番をしていた隊員に捕まり、尋問を受けて足止めされていたため、捕らえられた。
事件は、誘拐犯マルチがインビジブルという見えなくする魔法を開発したところから、始まった。インビジブルの魔法は発動させると10分ほど姿を見えなくすることができる魔法だとわかった。大商会の金庫を狙おうかとも考えたらしいが、魔法で金庫を破壊されないようについている魔力感知とアンチマジック効果が邪魔で金庫からのお金を盗むことは断念したらしい。次に考えたのが今回の子供を誘拐すること。ただ、この方法では誘拐できてもお金にならなければ意味が無い。そこで奴隷商を仲間に引き込んだという。また、奴隷商でリハーサルをやってみて、インビジブルの魔法は意外と解けやすいということも判り、自分は全身スーツにインビジブルを付与する方法を考えたというのだ。
あとは、子供を誘拐して、ある程度の人数が集まったら、馬車の荷台に隠して街を出て、違う街で奴隷として売るというのが彼らの作戦だったらしい。
◇
「オルト、あなたは命令違反をしたので、捕縛させてもらいました。」
「命令違反?」
「出頭を無視したでしょ?」
「それはエレン隊長が謹慎って」
「謹慎は解除するから、すぐに出頭するように言ったはずです。」
「聞いてませんが」
「いいえ、聞いてないとは言わせません。現にサーバードは出頭しています。」
「サーバードはサーバードですよね。」
「とにかく、命令違反なの!」
あ~、面倒臭せ~!これってバワハラ!ってこの世界にそんな概念は無いか・・・
「聞いてるの!オルト!」
「もういいです。辞めます。じゃあ、エレン姉」
「はぁ~?ちょっと待ちなさい。オルト!オルト」
俺は騒いでるエレン姉をほっといて、第3騎士団を後にした。
◇
しかし、帰ったら、兄貴に怒られるのかな~!
まあ、出て行けくらいは言われるかもな。
王都だと面倒だから、どっか小さな村にでもジャスミン連れて行くかな~。
仕事はどうするかな~。
冒険者でもやるか・・・いやいや、それだと、スキルをいくつか公開しないといけなくなるだろうし、ラノベの主人公みたいに面倒事に巻き込まれることになるから、無いわ~。
鑑定だけでとすると、オーソドックスに商人かな。
となると、元手が厳しいな!市場にでも行ってみるかな。
俺は市場に向かったが、元手が無いことには変わりなく帰るしかなかった。
◇
「オルト!どういうことだ!騎士団を辞めたとは?」
「そのままだよ!だって、エレン姉は酷いんだぜ!パトロール中の報告をしようとしたら、報告は副隊長にして、パトロールで居なくて、大事な会議に出席してないからって、帰って3日の謹慎してろって言うから、帰って、次の日から3日なら今のうちと思って最近構ってやれてないジャスミンを連れて街に出ただけなのに!謹慎していないと捕縛までして詰め所まで連れて行かれたんだぜ!挙げ句に命令違反と言いやがるから、こんな騎士団になんか居られ無いと辞めてやったんだ。俺は何か間違ってるか?」
「お前の言い分はわかったが、謹慎と言われてジャスミンと街に出たのはまずくないか?」
「まあ、そうかもしれません。でも、もうどうでもいいですし・・・騎士団はもういいかなって思ったんで」
「騎士団辞めて、どうするつもりだ!」
「しばらくは何するか考えようかと」
「ふざけるな!勝手に騎士団を辞めた奴を養ってなどやらないぞ!」
「そうですよね。じゃあ、今からジャスミン連れて出ていくよ」
「・・・オルト!」
俺はジャスミンを連れて屋敷を出た。
とりあえず、冒険者登録かな。身分証がいるからな。
◇
とりあえずは仕方ない、冒険者登録すりかな。
「こんにちは」
「いらっしゃいませ。オルト様、本日はどのようなご用件で?」
「冒険者登録をお願いします。」
「は?オルト様?なぜ騎士のオルト様が?」
「ああ、俺、今日、騎士団を辞めてきたんで」
「え~~!」
「まあ、向いてなかったんだろうね」
「いやいや、先日の盗賊団を捕らえたのも、今回の誘拐犯を捕らえたのもオルト様だと聞いておりますが・・・」
「それはたまたまだよ!」
「でも・・・わかりました。それではこちらに記入を」
俺は冒険者登録用紙に記入した。ついでにジャスミンも登録させた。
身分証として持っていると便利だからだ。
「それでは、オルト様はFランクからのスタートになります。Fランクの依頼を10回連続で達成するとEランクへ昇格します。ランクは一つ上の物まで受けることができますが、失敗すると補償金はランクが高くなるほど高くなりますから気をつけてください。」
「了解。ところで、宿を紹介して欲しいんたが」
「宿って、お屋敷があるのでは?」
「さすがに自分から騎士団辞めたから、親父も兄貴も怒っててさ、追い出されたんだよ!ハハハ」
「わかりました。それなら、猫のしっぽ亭はどうですか?」
「ああ、あそこね!あそこはお勧めの宿だったんだね。ありがとう。行ってみるよ」
こうして、俺とジャスミンは今晩の宿を確保した。