謹慎
「「只今戻りました。」」
「何よ!あなたたち!勝手にパトロールに行って!今日は緊急で誘拐事件について会議を行う予定だったのよ。あなたたちが居ないから、会議は行わさせてもらったわ!あなたたちは、この事件には、関わらなくていい!今日はもう帰りなさい。」
「わかりました。でも、隊長、パトロールの報告は・・・」
「今はあなたたちの顔も見たくないわ!ミナトにでも、報告して帰りなさい。3日間、謹慎してなさい。」
「「わかりました」」
エレン姉は相当怒ってるようだ。
「オルト、でも・・・話さなくていいのか?」
俺は心配するサーバードをよそに、ミナト副隊長のところに行った。
「ミナト副隊長、パトロールの報告です。」
「どうした?何かあったのか?」
俺は最近起こっている誘拐事件が起こりかけたこと。犯人らしき者と接触して、子供を奪還して、未遂に終わらせたこと。
誘拐事件は犯人が見えなくなる魔法を使っていそうなこと。姿は見えなくなるけど、実体までは消せないこと。今回は、事件現場で母親が騒いだ方向から、たまたま、不自然な足音が聞こえたため、試しに何も無いところに体当たりしたら、何かにぶつかり、子供が現れたこと。その後、子供を救出後、足音をさらに追おうとしたが、子供が泣きだし、周りも騒がしくなったため、足音が聞こえなくなり、追えなかったことを報告した。
ミナト副隊長は、報告を聞いて、唖然としていた。
「では、我らは帰宅して謹慎してます。行こうぜ!」
「いいのか?オルト!」
「いいんだよ!エレン隊長は、自分勝手過ぎるから、これくらいやらないとわからないんだよ。それより、サーバード、お前まで巻き込んで悪かったな!」
「いや、そんなことはいいんだが・・・本当に謹慎なのか?」
「たぶん、すぐに謹慎は解除になると思うぜ。俺は3日間謹慎するけどな!3日間はジャスミンを遊んでやれるぜ!さあ、帰ろうぜ」
俺達は帰宅した。
◇
「隊長、オルト達の報告ですが・・・」
「ああ!あいつらの話は今はしないで!」
「隊長!あいつらの報告が今回の誘拐事件と関係あってもですか?」
「はぁ?何を行ってるの?」
オルト達はパトロール中に誘拐事件の現場に遭遇し、その場の機転で、犯人から子供を奪還したという報告をして帰ったことをミナト副隊長が隊長に伝えた。
「・・・・・・・・・そ、そんな大事なことを何で報告しないのよ!」
「いえ、隊長がパトロールの報告は副隊長にして、帰って謹慎しろと言われたと言ってましたが・・・違うのですか?」
「お、オルトの奴~~~」
「すぐに呼び戻して!」
◇
「サーバード、俺はせっかくの休みだから、絶対に出ないけど、お前は出てもいいからな。」
「そうなのか?でも、出てこいと言われたら出ないと、隊長命令違反になってクビにならないか?」
「確かに、その可能性はあるね。でも、俺はいいや!サーバードは出た方がいいぞ。」
「せっかく、騎士団に入れたのにか?」
「まあ、そうたが・・・次は何をするか考えるかな~!それより、見えなくなる魔法があるんだな~!びっくりだぜ!ジャスミンが連れて行かれないように対策を考えないと」
「オルト・・・はぁ~お前って奴は」
◇
家に帰ってしばらくすると、すぐに出頭するようにとの通達が来た。
当然、俺は行かないと答えた。そして、次は騎士団が捕らえてでも出頭させようとするだろうから、伝令の騎士団員が戻ったところで、ジャスミンを連れて街へ出かけた。
「ジャスミン、最近、街では人を見えなくする魔法を使って、子供を誘拐する事件が起こってるんだ。お兄さんの手を絶対に離しちゃダメだからね」
ジャスミンはコクコクと頷いた。
そして、俺はジャスミンの髪に赤いリボンをつけた。
ジャスミンは喜んでくれているようだ。実はこのリボンは帰る途中に考えたジャスミンが誘拐されないための対策なのだ。
このリボンにはアンチマジック効果があるのだ。アンチマジック効果がある布は普通に売っているが、広い面積にアンチマジック効果を付与すると魔道具扱いとなり、かなりの値段となる。だが、ハンカチやスカーフ程度なら、そんなに高くない。赤いスカーフとしてもらっていたものを今回、ジャスミンのリボンにしたという訳で、ジャスミンは喜んでいるが、ただの有り合わせだ。
◇
くそ~あの騎士め!いきなり、ぶつかってきやがって!まさか、俺が見えていたのか?
いや、そんなはずは無い。現に俺は逃げれたじゃないか。
お!あの子供で試してやる。
そして、男は次の犯行を実行した。
「誰か~マークが、マークが!」
・・・・・・
へへへ、うまくいったぜ!
やっぱり、あの騎士、見えてた訳じゃないな。たまたま、あの騎士にぶつかったって訳か!
くそっ!なんかまた、腹が立ってきたぜ。