誘拐?事件発生
盗賊団のその後だが、首領と幹部の3人は盗品を取りに来たところを捕らえた。
3ヶ月程度で俺達がアジトを見張らなくなると考えるとは、浅はかである。
まあ、盗品が見つかった時点で、戻って来るのが確定で、転移魔法が使える奴がいることが分かっていれば対策をするというものだ。
そして、ジャスミンが気づいた潜入組の男は、当然、泳がせて、仲間と思われる女と共に捕縛。そいつらは、二人組の潜入専門の盗賊で、何組かの盗賊団を知っていて、進入後にそこに自分達を売り込む手口を使っていた。
おかげで、こちらはさらに盗賊団を3つ潰滅させることに成功したのだ。
おかげでここ2週間は忙し過ぎてジャスミンを構ってやれてない。
まあ、今回の事件の盗賊団は全て潰滅したので、ジャスミンの危険は無くなった。
と喜んでいたんだが・・・
ここ数日、王都では奇妙な誘拐?事件が起きているのだ。
なんでも、ほんの一瞬目を離した隙に子供がさらわれたというのだ。
ジャスミンには悪いが、もうしばらくは我慢してもらうか。
◇
今日は朝からエレン姉の機嫌が悪い。見つかると何を言われるかわからないので、さっさとパトロールに行こう。
「サーバード、パトロールに行こうぜ」
「おう、オルト!珍しくやる気だな」
「ハハハ、まあ」
俺は同期のサーバードを誘ってパトロールに出かけた。
「サーバード、気づいてないのか?エレン隊長、朝から機嫌悪いの?」
「そうだったのか?あ!だから、お前が自分からパトロールとか言い出したのか?」
「詰め所に居て、隊長に見つかってみろ!絶対に八つ当たりのターゲットになるにきまってるからな!」
「まあ、幼なじみの弊害だな!」
「普通は、幼なじみって可愛くて、もっとこうフォローしてくれたり、優しくしてくれたり初恋の相手だったりするもんじゃないのか?」
「ハハハ、でも、エレン隊長は美人だから、初恋の相手じゃなかったのか?」
「馬鹿を言うなよ!エレン姉は早くから兄貴の婚約者だったから、俺は小さい頃から完全に弟扱いで、本当の姉貴だと思うことはあっても、初恋の相手には見えたことは無いよ」
「ハハハ、そんなもんかよ。それより、隊長はなんで機嫌悪いんだ?」
「例の誘拐?事件さ!全く手掛かりが無いとも言えないんだが、かなり妙なんだよ!」
「妙って?」
「もうじき、全体で話があると思うけど、子供が消えるらしいんだ。親と一緒に居て、一瞬目を離した隙にだ。酷いのは、ずっと手を繋いでいて、買い物をしてお金を払うために手を離した隙に子供が消えたと言うんだ。」
「親の見てる前でか?」
「そうだ!これには目撃者も何人か居てな!母親は発狂してたらしい。」
「だろうな。でも、犯人はどうやって・・・」
「それが、わからないし、被害者は増えてるしで、隊長はいらいらしてんのさ」
「はぁ~、なるほどね。それで、エレン隊長の頭脳のお前は?何か気づいてるのか?」
「エレン隊長の頭脳は止めろ!まあ、俺も全く検討もつかないな」
「ふーむ。しかし、見てる前で消えるってことは魔法?魔道具?」
「転移魔法なら、魔法陣が現れるから、周りの人も気づくだろ!もしかして、姿を消せる魔法とかあったりするか?」
「俺に聞くな!俺に!」
「スマン!脳筋のお前に聞いた俺が悪かった。」
「誰が脳筋だ!」
「ハハハ」
そんなことを話しながら、俺達はパトロールしていた。
「誰か~!誰か~!ミリオンがミリオンが~」
一人の女性が急に叫び始めた。俺はとっさに魔力感知を発動した。俺達の横を魔力の塊が通っていく。俺は魔力の塊に身体をぶつけた。
「うっ!」
「誰だ?」
ドサッ!
「わぁ~~ん」
タタタタタタッ
「ミリオン!」
母親らしき女性が近寄ってくる。
どうやら、母親が捜していた子供だったらしい。
しかし、魔力に体当たりしたら、子供が現れたってことはやっぱり、何かの魔法を使って誘拐していたってことだな!
「おい、オルト、お前は今、何をやったんだ?」
「ああ、母親が騒いでる方から、何か近づいてる気配がしたからな、気配が読める訳じゃないが、試しにこの辺にいないかな~なんて思って身体を寄せたらうまくいったって感じだな!」
「じゃあ、たまたまか?」
「まあな」
俺達がそんな会話をしていると・・・
「ありがとうございました。騎士様」
「ああ、別にたまたまだから、気にしないで!それより、その子、ミリオン君だったか?が居なくなった経緯を少し話してくれないか?」
「はい、もちろんです。私はミリオンと買い物に来ておりまして、夕飯のおかずをあそこのお店で買おうと、財布を取るためにミリオンの手を離したところ、突然、ミリオンの姿がかき消えたので焦って騒いだのでございます。」
「ミリオン君、君は何かされたのかい?」
「ひっく、ひっく、えっとね。ママと手を離したら、急に誰かに口を塞がれて担がれたの、そして、どこかに連れて行かれそうになったところを騎士のお兄さんが急に僕の方に移動してきてぶつかったんだ。すると、見えない誰かが僕を置いて逃げたんだよ」
「ありがとう。ミリオン君、怖かったね。あとはママとしっかり手を繋いで帰るんだよ」
「本当にありがとうございました。」
「こちらこそ、ご協力感謝します。」
俺達は、急いで詰め所に戻ることにした。