美人上司との恋仲を疑われる俺。うん。まぁ、悪くない。
山野井さんは俺の勤めるIT会社の上司である。
容姿端麗の美人上司。
男性社員からモテモテで、常日頃、
「山野井さん、飯行きましょ!」
「山野井さん、今夜空いてますか?
俺と一緒に飲みに...」
などと誘われていたが、彼女は冷たく断っていた。
「あのねー、私、仕事で忙しいの。
話しかけないで」
「いやでも、もう、机の上、片付いているじゃないですか?」
「うるさいなー。他の女性社員誘えばいいじゃない?」
「....っ」
などと、有無を言わさず、
男性社員を蹴散らしていた。
基本的に。
周りの男性に完全なる塩対応。
そんな美人上司は。
何故か俺にだけ甘い。
「山吹くん。頑張り過ぎてない?
ほら、アイスコーヒー買ってきてあげたわよ」
そんなことを言いながら、
プログラミング中の俺をねぎらってくれる。
ピトっと、冷たい缶コーヒーを、
おでこに当てられて。
本当なら美人上司を前にして
真っ赤になってしまうところだが、
ひんやりとした缶のおかげで、
ドキドキ感が下がってくれてる。
「ほら、一息入れなよ」
「あ、はい!ありがとうございます!」
山野井さんは俺にコーヒーを手渡すと、
くるり向きを変えて、デスクに戻って行った。
この光景。
完全に他の男性社員のやっかみを買ってる。
俺は食堂での飯の時間や、仕事の休憩時間に、
山野井さん目当ての男性社員、先輩や後輩たちから、文句を言われる毎日だった。
喫煙所にて。
「何なんだよ、なんでお前には
山野井さん、甘いんだよ」
「さぁー??」
「おかしいよな、どうして山吹に対して、
優しいんだかわからねぇな」
「それ、俺も思いました!なぜか、山吹先輩を前にしたときは、山野井さん、態度違いますよね」
「まさか、おまえら二人できてるとかねぇよな?」
「いや、全然、ないですよ」