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第二話 情報収集開始

 とりあえず、外に出て電車に乗って信彦先輩から送られたメールを確認する。

 タップしながらメールを読み終え、自分の頭の中でまとめを開始した。

 スマホに送られてきた内容を黙読するに、ニュースなどで知られている情報の方は行方不明になっている学生たちの家族が捜索願を出して警察が現在も捜索中という状況らしい。

 しかも男女の性別に関しては関係なく主に学生がターゲットで何人も失踪しており、一部の家族からも捜索願(そうさくねがい)が出されているレベル、というのがニュースでの情報なのだとか。

 そして信彦さんによる独自の調べた情報によるとと神隠しと一部の学生たちには呼ばれているらしい。神隠し、失踪事件があるたびに一部の人がそう呼んだりするお決まりの単語だ。

 ……そして、信彦先輩が調べた情報では、ターゲットにされているのは学生だが、失踪しているのは主に異形な生き物を見た人が多く狙われているとのこと。


「……完全にオカルト案件だな」


 思わず声に出してしまったので、思わず顔を挙げて周囲を確認する。他の乗客は特に気にした様子もないようだったので、目を伏せてもう一度開いてからスマホの画面に集中する。

 眉が寄ってしまうのはしかたのないことだろう。

 ……異形な生き物、TRPGに出てくる類のと遭遇したとでもいうのだろうか。

 親愛なる信彦先輩と、認めたくないがクズミカド先輩とやったことがあったから、多少の予測めいた想像ができるわけだが……だとしたも、絶対間違いなく自分のSAN値(さんち)が下がるわけで。

 ああ、困った。うーん、ゲームのように残機扱いになる幼馴染がいたら違ったのかなぁ。


「……ゲームみたいに数字が出ていれば楽なのにな」


 ……って、いかんいかん。ゲーム脳をリアルに持ち込むのはいかん。

 いや、正気度が下がることに怯えていたら気づいたら自分も、という流れになる可能性は否めない。不安要素を早めに潰すのは得策だろう。しかし対応したくてもゲームのようにGMからのヒントとして魔術書なんて手に入る場所がわかるというわけでもない。

 それに、そういう話を信彦さんが私にしたということはおそらく信彦さんも殺される可能性がある、というわけだ。

 学生が他所の人と関わり合いを持ちたくてもそういうきっかけの出会いなんてなかなか都合よくできるわけもないし……うーん、どうしたものか。

 どちらにしても戦闘能力は自分には皆無だ。

 図書館には多少技能は触れられるだろうけど……うーん、何か武器になるものなんて……あ。

 

「……あ、あった」


 バックの中にあるペンケースに入っている文房具に鉛筆がある。

 これをもし目玉があるような敵だったら突き刺してやればいい。


「うん、これで一突き…………」


 いや、やっぱりだめだ。

 絵を描くのは好きだからそれを後々使うのはいろいろな意味で呪われそうな気がする。

 というか、怖い怪物の血なり肉片なりが一度でも付いた鉛筆を使いたくなるわけがない。

 うん、やめておこう。それが賢明だ。

 鉛筆をペンケースにしまってから溜息を吐く。

 リアルSAN値がゴリゴリ削られるのを分かったうえで行かなくてはならない強制イベントなのはわかっているけれど、何か他に代わりになる武器になる物を購入すべきだろうなぁ。

 信彦さんはああ見えて社交的だから、失踪者の家族に話を聞いているだろうからそれ以外の人たちの情報を集めよう……信彦が調べきれなかった範囲の情報収集を開始する(ゆき)であった。



 ♂ ♀



 とりあえず駅を降りて、ホームセンターでとあるTRPGで最強とされているバールのようなものは買わずにハサミとネイルハンマーなるものを購入した。

 なぜ買ったかと問われたら、もし実際に遭遇した時の対処法を考えたため、というのが理由だ。

 なんとなく見た目と使いようがありそうなものを選んだつもりである。

 だってホームセンターでバール買う学生なんて想像ができないだろうし、他の客が後で通報でもされたら困る。だからこそまだ授業や課題で使うとか言えそうな武器をチョイスした、というわけだ。

 後はコンビニで携帯食的なおやつや水を持っていくことにしよう。

 それからライターも三本くらい……念には念を入れて、だ。

 信彦先輩に経費として提出するためのレシートもバックの中で一番安全な場所に入れておく。

 そして、私が向かうのはもちろんネットカフェだ。

 行きつけの店にたどり着くと、店員とのやりとりを終えてウーロン茶をカップに入れてから部屋に入る。バックと飲み物を机に置いて、パソコンを起動させる。

 さぁ、ここからが私の仕事だ。


『こんにちは、ミャーコさん。今起きてますか?』


 チャットでの自分の名前はスノウホワイト。

 白という漢字なのに雪と読む自分の名前を順番を逆に呼んだらたまたま当てはまった白雪姫の英名から発想した安直なハンドルネームだ……実は意外と気に入っている。

 キーボードでそう打つと、三秒もかからずに返事が返ってきた。


『ん? どした?』

『ちょっと、お聞きしたいことがありまして……』


 いつものチャット仲間のミャーコさんに質問する。


『今日はどんな話を聞かせてくれるんだ、スノウホワイト』

『そうですね。あの、ミャーコさんは最近の失踪事件について知ってますか』

『……なんでだ?』

『すみません、知り合いが困っていたので……』

『また先輩の命令か』


 う、ミャーコさん鋭い。

 思わずキーボードを打つ手を一瞬止める。


『それで、今日はなんの情報料を支払うつもりだ? 体で返してくれるなら、いくらでも紹介するが』


 ハッカーである貴方には、そんなことを言わなくても稼げる金なんていくらでもあるだろうに。

 私は三秒もかからずに返答を返す。


『もちろん、アダルティ以外で』

『ちぇ、ノリ悪ぃな』

『そういう冗談はもっと素敵なレディの前で口説くために用意しておくべきですよ、ミャーコさんの魅力が半減してもしりませんからね』

『それじゃあスノウは美人じゃないのか?』

『想像にお任せします』


 茶番が好きなミャーコさんが語り始めるのを待って、ウーロン茶を数口飲む。

 そして、画面を見るとミャーコさんからの返信が来ていた。


『わかったよ、それで? 誰の話から聞きたい?』

『そうですね、では――――』


 そこから、信彦さんでも知らないであろう情報のやり取りをして、数分経った後、私はネットカフェから出た。

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