償い、そして……
急で申し訳ないのですが、設定の方を変えさせて頂きました。
内容自体は変わりないので、今後もお願いします!
「大事な話、ですか?」
「ああ、そうだ」
僕は、芽依の瞳を見てみた。
綺麗な瞳なのだが、今はその奥に、不安の色が覗える。
もしかしたら、この話をしてしまえば僕は、芽依に嫌われてしまうかもしれない。
結果的に、大切なものを失ってしまうことになるのかもしれない。
だけど、それでも言うんだ。
それが僕にとっての「責任」であり、また芽依をこんな目に遭わせてしまった事への、せめてもの罪滅ぼし。
「長引かせてもなんだし、単刀直入に言わせてもらう。…芽依、お前は今日を以て、水泳部を引退しろ」
「……え」
何を言っているのか分からない、そんな顔をしている。
当たり前だろう。僕だって、そんなことを急に言われたとしても、納得出来ない。
そう思っていたのだが……。
しばらく経った後、何故か芽依は、微笑んでいた。
「……なんで、そんなに笑顔でいられるんだ」
「だって、引退しないといけないって事は、私の身体に何かしら影響があるって事でしょ?」
「……そうだ。僕をかばってしまったが為に―――」
「だったら、しょうがないよ!」
「っ!しょうがない訳……っ」
頼む、頼むから。
「水泳を失った代わりに、先輩を失わずに済んだんだもん!安い位だよ?」
頼むから、そんな笑顔を向けないでくれ。
「来年の夏の大会、私、精一杯応援しますから!最後ですもん!それだけで満足ですよ!」
「もうやめてくれ!!!」
びくっ!!と、芽依の肩が大きく揺れた。
それほど、自分でもびっくりするくらいの大声を出したのだ。
「頼むから…頼むから、ちゃんと怒ってくれよ……」
「……先輩」
芽依までもが僕を許してしまえば、一体誰に責められれば良いのだろうか。
芽依の両親だって、悪いのは運転手の方だから、と庇ってくれて。
世間はあろう事か、運転手を悪者にして、僕を擁護してしまった。
そりゃあ、信号無視したが1番悪いよ。
でも、本当は僕だって、責められるべき悪者なんだ。
……それを分かってくれないのなら、仕方がないよな。
「悪いが芽依、お前は大会に参加する事はおろか、来ることすら出来ない」
「え、な、なんでですかっ?6カ月もあるんですよ?流石に間に合いますって」
「ああ、すまん。ちょっと語弊があったな」
そう、正確には来られないと言うより……。
「芽依、お前は僕を応援するために来たいんだよな?」
「そ、そうですけど……」
「だから、来る必要はないんだよ」
「……先輩、やめて下さい」
「今日を以て、如月 芽依、及び松葉 海人は、水泳部を引退するからだ」
「やめて下さい!それだけは絶対に駄目なんです!!」
芽依は、激しく反発した。
僕は考える。一体何が、彼女を動かしているのだろうか。
「私が失うのは良いんです、先輩さえ失わなければ!」
そもそも、僕が水泳を続けたら、彼女にとって何のメリットがあるというのだろうか。
「でも、先輩が何かを失ったら駄目なんです!だってそれじゃあ……っ」
違う。僕の水泳なんて、所詮そこまで大きな影響は与えない。
「それじゃあ、私は何のために水泳を失ったんですか……」
「……やっと、本音を話してくれたか」
芽依は、僕を含めて部員の誰よりも、水泳を楽しんでいた。
共に生きていた。
僕は、そんな彼女の姿に惹かれたんだ。
そんな彼女が、水泳を失って、何も思わない訳がない。
「今回の件で、気付かされたんだ」
「……え?」
事故の直前、芽依は僕に自分は水泳と同じ位、大切かと尋ねてきた。
はっ、笑わせるな。
「芽依は僕にとって、水泳と同等どころか、それ以上に。水泳なんて、どうでも良くなるくらい、大切な存在になっていたんだ。」
「……ふふっ。今言いますかっ?それ」
「……確かに。今言うべきじゃ、ないか」
……雰囲気最悪だな。
「……分かりました。先輩がそれで納得してるなら、もう何も言いません。……これからどうするんですか?」
「毎日ここに来るよ。退院するまでは、面倒見させてくれ。」
「……それって、退院した後は?」
「……今日はもう、帰るわ」
外、真っ暗だし。
「ちょっ、先輩!!」
ばたんっ。
扉を閉めて、会話を強制終了してやった。
……変なところで鋭いんだよな、あいつ。
「あら、もう帰るの?」
ちょうど、芽依のご両親が戻ってきた。
「はい。話したいことは、話せたので」
「あらそう」
ではっ、と頭を下げ、その場から立ち去ろうとすると、後ろから声を掛けられた。
「……また、来るんだろ?」
「……ええ、もちろん」
芽依が退院する頃には、僕は3年生、芽依は2年生になっていた。
学校では、なるべく芽依に会わないよう、避けながら行動した。
高校受験は芽依と同じ高校に行かないよう、偏差値の高いところを選んだ。
勉強が遅れているあいつなら、ここに入ることは不可能だろうと考えての事だ。
その代わり、僕自身も苦労する結果となってしまったが。
受験シーズンの際、幼なじみの凜含め、3人から志望校を聞かれたのだが、正直その頃の僕には興味がなかった。
何なら、他二人のことは覚えていない。
とにかく、これで金輪際、芽依とは関わらないと決意した。
それが、僕なりに考えた償いだから。
◇◆◇◆
「って、先輩なら考えるだろうなぁと思って、前もって勉強していたんですよ!」
「……すげ」
中学時代の事を思い出して、彼女を見たときに突き放そうと思ったのだが……元気そうな姿を見て、思わず嬉しくなってしまった。
「……先輩、私はもう、振り切りましたよ?」
「……そうか」
「先輩はどうなんですか?」
僕自身はどうなのか。
もう、自分の過ちを許せているのだろうか。
いや、万が一許せていなかったとしても、それで彼女から距離を置くのは、単なる逃げなんじゃないのか?
そんなことを考えていると、急に放送が学校中を響き渡った。
『12HRの如月さん、今すぐ教室に戻って来て下さい』
「……ありゃ」
「……」
「じゃあ私は、もう行きますね!先輩、私の事、少しでも信用してくれてるなら、考えといてくださいねー!」
ドタドタドタッと、勢いよく走っていった。
相変わらず騒がしいやつだ。
でも……。
少しでも信用してくれてるなら、か。
芽依のことを信用してるかしてないかで言ったら……そりゃあしてるわな。
そろそろ、歩み寄る努力をするべきなのかもしれない。
因みに、この一件を経て、乃愛、凜との間に新たな物語が生みだされたのだが……それはまた、別のお話。
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