償い
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入学式。
特に面白いこともなかったので内容は割愛するが、新入生退場の際に、僕はある人物を目撃してしまって驚きを隠せなかった。
「……先輩」
その人物が、小さくそうつぶやいたのを、僕は聞き逃さなかった。
……こりゃあ恐らく、後で一波乱来るな。
案の定、一波乱きた。
その人物は、入学式が終わるや否や、僕の教室へとやって来て待ち伏せしていたみたいだ。
……新入生が入学早々、こんなところに居て良いんですかね。
「先輩!」
とてとてとて、と可愛らしく僕の元に駆け寄ってきたのは、中学時代の後輩である如月 芽依。
というのも、僕は中学の頃、水泳部だったので、その類いの繋がりだ。
近くにものすごいオーラを放ちながら僕を睨んできている乃愛と凜は一旦保留するとして……。
「芽依。こんなところにいたらやばいんじゃないか?新入生はこの後、クラスでやるべき事がたくさんあるだろう」
もしかしたら今頃、芽依がいないことに気がついた担任が探しているかもしれない。
「そんなことはどうでもいいんです。今は、先輩に再会できたことを喜ぶべきじゃないですか!」
「……相変わらずぶっ飛んだやつ」
芽依のこの謎の行動力には、昔から恐れ入っていた。
「でも先輩は、そんな私のことが好きなんですよね?」
にまにま~、という感じのからかうような笑みを浮かべながら僕に尋ねてきた。
「はいはい、そういうことにしといてやるよ」
「またまた~、照れないでくださいよ~!」
芽依も、冗談で言っているのだと言うことは分かっている。
だから別に照れてなんかいないんだからね!
無駄なツンデレムーブをかましつつ、僕は芽依に、1番気になっていることを尋ねることにした。
「それで?わざわざ今ここに来たって事は、なんか用があってのことだろ?挨拶だけって事はないだろ」
「お~。流石先輩!私のことならなんでもお任せって感じですか?」
そりゃあ、伊達に2年間先輩やっていた訳ではない。
芽依のことはそれなりに理解しているつもりである。
すると、彼女の雰囲気が急に変わった。言ってしまえばそう、それは真面目そのものであった。
「……先輩、私、勉強頑張って先輩に会いに来ましたよ?」
「……ああ、そうみたいだな」
僕たちが通っているこの高校は、中途半端な成績では入れないと思う。
芽依は元々、勉強は得意な部類ではなかったため、恐らく相当な努力をしたことだろう。
「約束です。また私を先輩のそばに置かせてください」
「……いや、それは」
「まさかまだ、あの時のことを引きずってるんですか?」
「……」
「罪を償いたいのなら、私のお願いを聞いて下さいよ!」
芽依が言う罪というのは、忘れもしない、僕が中学3年だった頃に起きたあの事件の事だろう。
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