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結論

 

 少し、彼女等について考えてみた。

 

 乃愛はことある毎に空回りをしてしまうし、相変わらず人との交流を得意としない、とても不器用な女の子だ。

 でも、言葉や行動に嘘偽りがない、純粋でまっすぐな女の子だ。


 凜は物事を深刻に考えすぎる習性があるけれども、気配り上手で人にとことん尽くしてあげられる優しさを持った女の子だ。


 芽依は言うまでもないだろう。

 とにかく明るい。その明るさで、いずれは世界を救うかもしれない。僕は既に救われている。


 それで後は……妹だな。

 あいつには感謝してもしきれない。……いや、本当に。


 それで。


 僕はどうだ?

 僕は…………本当に、つまらない人間だ。

 

 考えが、自分優先で独りよがり。周りの人の気持ちを理解しているつもりで、実はしようともしていなかった。


 芽依の件が、実にいい例である。

 勝手に罪悪感を覚え、芽依から離れることがその罪滅ぼしになるのだと、勝手に解釈していた。

 芽依の気持ちを、汲み取ろうともしなかった。


 本当は、分かっているのだ。

 桜は、こんな僕に嫌気が差して、見限ったのだと。



 『……桜は、僕のことを愛しているんだよね?』

 『ええ、もちろんよ』

 『そ、そっか。よかった!……なら』

 『なら?』

 『……なら、絶対に僕のことを裏切らないでね?』



 …………。

 ズキリと頭が痛む。

 嫌な記憶が……嫌な台詞が、脳裏をよぎった。

 ……でも、これでようやく。


 ずっと目を背けてきたけど、ようやく分かった。

 裏切られた、なんて言葉はおこがましい。そもそも、裏切られてなんかいなかった。


 言ってしまえば、ずっと僕の独り相撲だった。

 一人で勝手に愛を誓って、一人で勝手に愛を押し付けて……馬鹿みたいだ。

 いや、本当に馬鹿だな。

 やり直そうと思っても、もうやり直せない。


 ――――コンコンコン


 突然のノック音に、僕の意識は向けられた。


 「……お兄ちゃん、入ってもいい?」

 「……なんだ朱里か。いいぞ」


 そう返すと、ガチャリと音を鳴らして、ドアは開かれた。


 「……お兄ちゃん。こんな時間だけど、まだ寝ないの?」

 「え?」

 

 反射的に壁時計を確認した。……ああ、もうこんな時間なのか。

 そろそろ就寝しないと、明日に支障をきたすような時間帯だった。

 どれだけ長い間、考え込んでいたことだろうか。


 「悪い、もう寝るわ」

 「……うん、そうして」

 

 この部屋から光が漏れているのを確認して、わざわざ注意しに来てくれたのだろう。

 僕なんかよりも、よっぽどしっかりした人間だと、妹にまた一つ感心する。


 「……あのね、一つだけ聞いてもいい?」

 「ん?ああ、なんでも聞いてくれていいぞ」

 

 この部屋から一向に出ていこうとする気配がなかった朱里は、どうやら質問があったらしい。

 遠慮した様子で尋ねてきた所から、いじらしさを感じた。


 「えっとね?……お弁当、美味しかった?」

 「…………うん」

 「なんで考えたのさ!?」

 「違うって!!」


 珍しく声を荒げる朱里。

 ……いや、美味しかったのは本当に本当。

 しかし、流石に凜の弁当と合わせるとボリュームが凄かった……。

 

 「もういい!二度と作らないからっ!!」 

 「いや待って!?聞いて!?行かないでー!!」


 僕の声は届かず、ドアが激しい音を立てて閉じられた。


 ……明日謝ろう。

 うん、それでいい。

 別に、やり直す必要なんかどこにもないのだ。ただ、その失敗を生かせられるかどうかが重要なのであって。


 明日はきっと、全てが変わっているはずだから。

 考え方も、見える世界も……そして、彼女等との接し方も。


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