乃愛の苦悩
昼休みになると、凜は早速僕の元へとやって来た。
「海人君、お昼一緒に食べましょう!」
「おう」
普段は購買でパンを買ったりするのだが、どうやら今日は、凜がお弁当を作ってきてくれているらしいので、その必要もないだろう。
ふと、凜と談笑していると、乃愛が側まで来ていることに気が付いた。
「乃愛、どうした?」
「……乃愛も一緒に食べる」
「え?」
乃愛がそう提案してくるのは珍しい……というか、初めてだ。
いつも、乃愛と一緒に食べているグループはどうしたのだろうか。
気になってしまい、そちらに視線を送ってみると、どうやら向こうもこちら側を見ていたらしく、慌てた感じで目を逸らされた。
……なんだかよく分からないけど、乃愛がそうしたいというのなら、別に断る意味も無い。
「分かった。一緒に食べよう」
「……っ!う、うん」
凜はどうおもっているだろうかと思い、視線をやると、特に普段通りであった為、問題ないだろう。
「あれ、乃愛。お弁当はどうした?」
僕の記憶が正しければ、乃愛は普段、お弁当を持ってきているはずなのだが、今日はもってきている気配がない。
「今日は忘れちゃったの。……購買で買ってくるから、待っていて欲しい。」
「そうなのか。……あ」
ふと、妹が作ってくれたお弁当の事を思い出した。
これを渡せば良いのではないだろうか。
……と、思ったけど止めた。
的確な判断なのだろうが、それは人として間違っているような気がしてならない。
「分かった。じゃあ僕も一緒に行くよ」
「……うん、ありがとう」
そうして僕達は、購買を目指すことにした。
「凜、少し待ってて貰って良いか?」
「ええ、良いですよ」
凜は、笑顔で見送ってくれた。
◆◇◆◇
「海人」
「なんだ?」
「何で今日は、凜と一緒にお昼を食べる?」
突然、乃愛がそんな質問を投げかけてきた。
「今日は凜が、僕にお弁当を作ってくれたらしくてな」
特に隠すようなことでもなかった為、僕は素直に答えたのだが、それを聞いた乃愛が、不満のありそうな表情をしていた。
「……海人は、凜と付き合っているの?」
「……いや違うんだよな、これが」
やはり、乃愛の目から見てもそう感じ取れるらしい。
そうだよな。普通、付き合ってもいない男に、手作り弁当なんて持ってこないよな……。
そんなことを考えていたのだが……。
「……じゃあ今度は、乃愛が海人のお弁当を作る」
「なんで!?」
乃愛までそんな提案をしてきた。
というか、乃愛も料理とかするのか……。
全くもって想像が付かない。
「……乃愛のじゃ、嫌?」
「ち、違う!そういうわけじゃなくて……!」
今にも泣き出しそうな様子になる。
……そんな表情をされてしまうと、罪悪感が半端ないのだが。
「……なら、作る」
「お、おう」
……女の子の考えていることは、やっぱりよく分からない。
でも、手作り弁当自体は凄く嬉しいことなので、ラッキーと考えて良いの、かな……?
面白いと思って頂けたら、ブクマ、評価、感想をお願いします!




