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10/14

その憂鬱な日に彼女たちは…乃愛編

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 僕と凜が学校に到着すると、乃愛と鉢合わせした。


 「よう乃愛」

 「乃愛さん、おはようございます」

 「……おはよう」


 お互いに挨拶を交わしたのだが、、何故か乃愛の機嫌が悪いようなきがする。


 「どうした?なんか嫌なことでもあったか?」

 「……今あった」

 「え?」

 

 今あった。

 ならば必然的に、原因は僕ということになるが、今のところ皆目見当もつかない。

 そんな僕の様子を見据えてか、乃愛はこれまた不服そうに答えた。


 「なぜ二人が一緒に登校してくるのだ」 

 「……あーね」


 凜に言われて、少し考えた。

 僕と凜が一緒に登校している様子を、乃愛や芽依が目撃するとどう思うだろうかと。

 答えは今出た。


 乃愛は、自分だけを信用すればいい、と言った。

 恐らくそれは、乃愛なりのプライドなのだろう。


 自分だけが、僕を支えられると。

 自分がいなければ、駄目なのだと。

  

 その気持ちが、変に空回りしてしまっているんだよきっと。

 僕は、それが乃愛の優しさだということを知っているから、素直にその気持ちが嬉しい。


 「乃愛、あのな」

 「……何」

 「いつも、僕のためにと思って色々考えてくれてるんだよな。ありがとう」 

 「!き、急に何を」

 「でも、もうちょっと気を抜いてくれてもいいんだぞ?」

 「……え」

 「僕はさ、お前達が側に居てくれるだけで充分幸せなんだよ。だから、これからは僕だけじゃなくて、お前らにも仲良くなって欲しいと思ってる」

 

 皆仲良く。

 これ以上素敵な言葉があるだろうか。

 心優しい乃愛の事だ。きっと分かってくれるだろう。

 

 「……海人」

 「うん、なんだ?」

 「海人は、何も分かってない!」

 「えっ……ちょっ、乃愛?!」


 なんだかよく分からないが、乃愛はそのまま走り去っていった。

 ……我ながら完璧な解答だと思ったのに、一体何が気に入らなかったというのか。


 「可哀想な乃愛さん……」

 「え」

 

 どうして凜までそんなことを言うのか。

 この時の僕は、気が付いていない。

 その答えが分かる時は、もうすぐそこまで迫ってきていたということに。

  

 

 

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― 新着の感想 ―
[一言] 言葉にしないで伝わると思ってるんですかね? 思ってるんでしょうね。 だからそんな言い方が出来るんでしょうね二人とも。
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