八十九話 休日
エイリスとカッセルと食事をした次の日、俺達は今日もギルドに来ていた。
昨日深刻そうに俺に悩みを打ち明けたエイリスだが、今日はいつもと変わらない。
あの後、カッセルにも力になれることがないか聞いた。
だが、カッセルによれば神であっても解決できない……自分でしか解決できない問題なのだそうだ。
エイリスが酔って口を滑らせたのだが、どうも男女関係らしい。
ともかく、俺達は今日も仕事をすることになったのだが……
「ルディス君、お待たせしました!」
後ろから、ルーンの声が響いた。
振り返るとそこにはルーン、マリナ、ネールがいた。
【透明化】で見えないが、ガーゴイルのベルタもいるようだ。
「おお、帰ってきたか」
「はい! 確かに置いておきました!」
ルーンはうんと頷いた。
ルーン達に頼んだのは、昨日俺達が地下都市の宝物庫で見つかった宝の一部を、地下都市の孤児院や病院に置いてこさせることだ。
俺達だけであの宝を独占するつもりはなかった。とはいえ、あまりいっぺんに渡してしまうと、色々と混乱を招くことになる。
だから、一部だけにしたのだ。
これからも時期と量を考え、配っていくつもりだ。
ネールが俺に訊ねた。
「それでルディス様の方は、大丈夫だったのですか?」
「ああ。故郷の両親と村に、いくらかお金や道具、その他もろもろ……仕送りしておいた」
今世の育ての親にも恩返しをしたかった。
これもあまり渡し過ぎると、村の経済がおかしなことになる可能性が在る。
なので、お金は少なめに、あとは道具など生活を豊かにするものを送ることにした。
これらは王都の郵便局で配達を依頼した。
とはいえ途中魔物や賊に襲われたりする可能性も有るため、やはり高額なものは送れない。
「これでとりあえず分配はいいかな……さて今日は……」
皆が来る前からいい依頼がないか提示版を見ていたが、手ごろなものはなさそうだ。
いや、討伐系の依頼は多いのだが、お金のある今、むしろ探索が進むような依頼を受けたかった。
アヴェルに頼んだことも有るし、今日は一日計画を練るだけでもいいか。
それに、ネール達も買い出しをしたそうだし……
「ベルタも王都をゆっくり回りたいだろうからな……よし、今日は休日としよう」
「本当ですか⁈」
ネールとマリナが目を輝かせて、俺に訊ねた。
「ああ。せっかくおたか……報酬も入ったんだ。装備の拡充も兼ねて、王都を回るといい」
「やった! ありがとうございます、ルディス様!」
喜ぶ二人。
ベルタも体を跳ねさせて喜んでいるのが分かる。
一方のルーンは、冷静に俺にこう言った。
「ルディス君は、どちらに?」
「俺はノール……さんに頼んで、王都の図書館に行ってみるよ。鍵についても色々調べたいし」
「そうですか! では、私もお供いたします!」
「ルーン、ありがとう。だけど、お前もたまには羽目を外していいんだぞ?」
「いえ。私もしばらく書物とは離れてましたし、たまにはいいかなと」
「分かった……それじゃあ、ノールに頼んでくるよ。ネール、マリナ。ベルタに王都を案内してやってくれ!」
俺が言うと、ネールとマリナは「はい!」と元気よく応じる。
そして俺とルーンは、ノールに頼んで、この王都の図書館へ向かうことになった。




