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七十六話 新人ラッパ手の頼み

(助ける……? 何か困っているのか?)

(ええ、とっても!! 一人でも働き手を集めなきゃいけないんです。でないと……)

(……働き手? っとここでは人が多いな…… どこか話せる場所はないかな?)


 ここでずっと立っているのも不自然だ。

 【思念】とはいえ、会話なので俺も表情が表に出てしまう。

 外から見れば、目の前になにもないのに表情を変える男に映っているのだ……不自然極まりないだろう。


 悲鳴のような音の原因である透明の存在はこう訊ねる。


(ってことは手伝ってくれるんですね?!)

(まあ、内容にもよるが……まずはどこか静かなところで、話を聞かせてくれないか?) 

(こ、これは失礼しました! この先に詰め所が在りますので、そこへご案内します!)


 そう答えて、姿の見えない存在は、道を進んでいった。


 俺もそれに続くと、ルーン達も付いてくる。


 歩きながら、俺は透明な存在に訊ねる。


(名前だけ、聞いておいてもいいか?)


 目の前で進むこいつが、俺の従魔ではないのは確かだろう。

 だが、ゴブリンのベイツのように、俺の従魔の名前がその後継者に引き継がれている可能性も有る。


(あっ……これは申し訳ございません! 申し遅れました! 僕の名前はベルタと申します)


 ベルタ……聞いたことはないな。


(ベルタだな。よろしく頼む……質問ばかりで悪いが、父や先祖の名前は知っているか?)

(父ですか? 父はヴィリアと申します! 祖父は……ごめんなさい、僕は会ったこともなくて……)

(そうか……いや、知り合いかもしれないと思ってな)

(し、知り合いですか? 父はずっと下層なので、会うのは難しいと思いますが……)


 俺みたいな若い人間が会えるはずがない場所にいるということか。

 これは何だか厄介なことになりそうだ。


 それから少し複雑な道を進むと、人気の少ないところに出た。


(着きました!)


 ベルタは、一見ただの壁の前で立ち止まりそう俺に伝えた。

 

(ああ、分かりませんよね。壁に見えますが、扉になっているんです。今、開けますね!)


 確かに肉眼では見えないが、壁の向こうに魔力の存在を感じる。

 恐らくは魔鉱石だろうそれは、扉を自動で開閉する装置に使われているのだろう。


 しかし、誰がこんな装置を?

 それなりの魔法と建築の知識がなければ、これは作れない。


 ベルタが周りに人がいないことを確認して壁に触れると、やはり壁は一人でスライドして静かに開いた。


(さあ! 今の内にお入りください!) 

(ああ、失礼するぞ)


 その前にルーンが俺の袖を引くのは、あまり信用しすぎるなという事だろうか。

 俺は一応の警戒をしながら、その中へと入るのであった。


 中へ入ると、サキュバスのネールが、ごほごほとせき込む。


「ちょ……ひどい所ね」

 

 中には、埃を被った丸い机と椅子が六つ。

 その他には金管楽器やナイフなどの簡単な道具が置いてあった。

 確かに兵士が詰める、詰所そのものだ。


 扉が閉まると同時に、ベルタが声を出す。


「ああ、これは失礼いたしました!! しばらく使ってなかったから、こんなに埃まみれに……」

「ひっ! あ……申し訳ございません」


 突然声が響いたことに、マリナは驚いたようだ。

 ベルタは不思議に思ったかもしれないが、気にせず続ける。


「こちらこそ、こんな汚い場所にお通しして申し訳ございません。すぐに、片づけますね」


 ベルタは壁にかけてあったぼろぼろのほうきに向かおうとする。


「いや、それには及ばない……ちょっと待ってくれ」


 俺は手を出して、風属性魔法【竜巻】を小さく、部屋に放つ。

 すると、部屋中の埃が【竜巻】に吸い込まれ、やがて収まると毛玉のようになった。


「……え? ええっ?! 今のは何を?!」

「今のか? 風の魔法を使ったんだよ」

「魔法……というとさっき声を使わずに話せたのも」

「ああ。【思念】という魔法だ」

「あれも魔法だったんだ……と、それよりも」


 ベルタは透明のまま、椅子を引いて、俺達に座るよう促す。

 

 そして俺達が座ると、ベルタは【透明化】を解いたのか姿を現した。

 【透明化】を使える魔力とは思えない。首にかけてある魔鉱石のネックレスの効果によるものだろうか。


 ベルタは丸っこい見た目の、まだ小さなガーゴイルだった。

 とはいえ、年齢にすれば、五十歳は確実に超えてるだろうか?


「改めて、自己紹介させていただきます。僕は、ベルタ。最下層保全隊所属です!」

「最下層保全隊……? その前に、こっちも皆の紹介がまだだったな」


 俺は手短にルーン達を紹介して、ベルタに訊ねた。


「まず、その最下層保全隊ってのは何なんだ?」

「その名の通り、最下層を保全するべく組織された魔物の部隊です!! 地下都市の基盤である最下層を保全しています!!」


 魔物の部隊……もしかすると、俺の従魔もいるかもしれない。

 だが、まずは判明させなければいけないことがある。


「誰が、何のために保全させたんだ?」

「つまり、創設者という事ですね? 保全隊はいまから、えっーと……だいたい五百年前、ヴィンダーボルト総督によって創設されました!」

「総督?」

「ええ。または、帝国皇帝の名代と名乗っていたようです!」


 どういうことだ? 五百年前といえば、かろうじて帝国はまだ残っていたかもしれない。

 しかし、ヴィンダーボルトが帝国の貴族という事は聞いたことがない。

 そもそも俺以降の帝国では貴族という身分は消失したはず。

 貴族の地位にしがみつこうとした者は、他の国に移ったことも聞いている。


 とにかく、ヴィンダーボルトの東部での領地は、帝国領だった場所ではないことだけは確かだ。


 しかも、地方で皇帝のように振る舞う総督という職は、俺が廃止した……


「どういうことだ……いや、それで何を目的に?」

「最下層にある火口の蓋の保全です!!」

「火口の蓋……」


 その時、俺の頭で様々なことが繋がった。

 この人間では決して作れないであろう地下都市……そもそも火山であったものの上にたてられたこの都市は誰の手によって造られたか。


 この都市を造るよう命じたのはヴィンダーボルトだろう。

 しかし、実際に造ったのは……


 ベルタは続けた。


「そうなんです……そして今、その火口の蓋が危ないんです!!!」


 ベルタは深刻そうな顔でそう言うのであった。

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