百三十三話 待ち伏せ
フェニックスの赤子はユリアにテイムされると、その肩へと留まった。
フェニックスの体は火で覆われているが、燃やしたいと思う者以外には火は移らない。また友好的な者に対しては、優しい暖かさを感じさせる。
ユリアは早速そのフェニックスを撫でると、今度はインフェルティスに頭を下げた。
「この子は、必ず私が守ります。そして必ず、あなたの期待に応えてみせます」
「うむ、楽しみにしておるぞ……他の者には、私の加護を与えるとしよう」
すると、フェニックスの体から皆の武器や杖に赤い光が宿る。
ノールが呟く。
「これは魔力……」
「うむ。私の炎の魔力を分けた。武器を振るう際、燃やしたいものがあれば念じよ。お主のような魔法使いには、更に強力な炎の魔法が扱えるようにした」
インフェルティスは炎の属性を武器や杖に付与したようだ。
本来、魔力属性を武器に付与できるのは一時的なもの。しかし俺と従魔は、魔力や属性を【刻印】という魔法で半永久的に付与させることができる。
「あ、ありがとうございます」
ノールが頭を下げると、皆も同様にインフェルティスにお辞儀をした。
「なに、私も増えすぎた魔力を解放する必要があったのでな」
そう答えるインフェルティスの視線は俺に向けられていた。
インフェルティスは俺の剣にも、膨大な魔力を付与してくれたようだ。
俺はインフェルティスに【思念】を送る。
(……感謝するぞ、インフェルティス)
(いや、私こそ礼を言おう……陛下。とても面白い者に会わせてもらった)
インフェルティスは満足そうな顔を俺に向けた。
(……お前とここの魔物たちのことは任せろ。すぐに俺の従魔のいる隠れ里に転移柱を運ばせ、行き来できるようにする)
(私はいいが……よろしく頼む。アヴェルにも、会ってみたい)
(あいつもきっと、会いたがっているよ。それでは、少しの間、ここを頼む)
こうして俺たちはインフェルティスと別れ、地上に帰ることにした。
帰り際、ユリアは何度もインフェルティスに頭を下げていた。
「いやあ、まさか私の弓に魔法の効果が付くなんて!」
「うむ。魔法の武器など、とても買えるものではないからな……」
帰りの途中、エイリスとカッセルは強化された自分の武器を見て、満足そうだ。
ロストンや護衛たちは、ユリアの志を応援すると、感動したような様子だった。
皆、実りがある冒険となったな……
今まであった魔法の扉は、俺たちが出ると勝手に閉じていった。
皆はそういうものなのだと思ったようだが、これは俺が魔法で閉じて、更に強力な施錠魔法を施したものだ。
俺と従魔以外は開けられないようになっている。
そうして闘技場まで戻り、最後の扉が閉まったとき、そこにひとりの男と、重装の騎士のような者たちが立っていた。
ユリアは声をあげる。
「兄上!?」
闘技場に立っていたのは、ユリアの兄であり、同じく地下の秘密を探っていたリュアックだった。
次回、地下都市での最終決戦となります……特に苦戦しそうもないですが、果たして。
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