百十九話 処刑場
「おお、灯りが見えてきたぞ!」
ついに階段が終わるようだ。魔力を飛ばすと、先程の闘技場のような広い空間があるのが分かる。
だが思ったよりも、まだおりてない。
しかも熱や魔力の反応がないので、最下層ではなさそうだ……
「慎重に行きましょう……また、スケルトンたちに囲まれるかもしれないわ」
後ろから響くノールの言葉に、俺はうんと頷く。
盾を構えるルーンとマリナがその広い空間に入っていくと、皆それに続いた。
入った場所は……
「な、なにここ……」
エイリスが思わず口を抑えた。
広い石造りの空間の中央には、白骨の山があったのだ。
高さは人の背丈の倍。幅は、それこそ民家ほどはありそうだ。
しかも、四方にも同じような骨の山がいくつも築かれている。
この異様な光景に、皆驚いた顔をしていた。
「……これ、人間の骨じゃない?」
ノールが言うように、これは魔物の骨だ……ゴブリンやオークなどの人型の魔物だけでなく、サイクロプスのような巨大な魔物の骨も見えた。
逆に人間の骨は全く見えない。
「魔物の死骸……さきほどの牢獄にあったのとでは、比べものにならないわ……」
ユリアも言葉を失ったように立ち尽くしていた。
闘技場で戦わされていた魔物か。
または、違う魔物か……
俺は、後ろから付いてきているベルタに【思念】で問う。
(ベルタ……ここに見覚えは?)
(い、いえ……こんなのは初めてです……)
(仲間の墓地とかじゃないか?)
(墓地は別にあります。全部自分達で埋葬しているので……)
ベルタも困惑した様子であった。
というのも、ガーゴイルの骨らしきものも見えるからだ。
とすれば、ここは最下層の魔物と関係ない……もちろん、誰も覚えてない程昔に関係がなくなった可能性もあるが。
そんな時、ユリアがなにかに気が付いたようにいった。
「この魔物たち……皆、頭蓋骨に穴が……」
「本当だ……というか、矢じりがいっぱい……」
エイリスは骨の中の矢じりに気が付いたようだ。
つまり、魔物たちは矢で射られ死んだことになる。
だが、木でできた矢柄の部分が残っていない。
矢じりだけなのは、遺体ごと焼かれてしまったということだろう。
同じように殺され、同じ場所に置かれる……処刑されたか。
そんなことをしたのは誰か……ひとりしかいないな。
「これは……ヴィンダーボルトがやった……」
ユリアが理解したように、そう呟いた。
そんな時だった。
俺たちの周囲で、無数の光が弾けた。




