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百十三話 買い物してたら

 最下層へ行く前日、俺達は王都の服飾店に買い物に来ていた。


「ルディス様、こんな服どうですかねえ?」


 ネールが豪華な紫色のドレスを俺に見せ、笑った。


 そんなネールにルーンが言う。


「行くのは最下層ですよ! 急な寒暖に対応できるよう、こういった防寒着なりをですね……」


 一方のルーンは毛皮のついた外套のようなものを手に取っている。


 いつもならはいと気怠そうに返事をするネールだが、今回はドレスを諦めのつかない表情で見ている。


「でもなあ……」

「ネール。それはそれで買ってもいいんじゃないか? お前に与えたお金もあるだろう?」

「本当ですか! やった!」


 ルーンがじいっと俺を見てるが、欲しいものなら仕方がない。


 まあ、何故ネールが今日に限ってドレスにこだわるのかは分からないが……

 常におしゃれをしたい、という気持ちは理解できなくもない。

 

 ネールは早速このドレスを着ていくようだ。


 衣料品を買い込んでから、俺達はこの店を後にした。


 道具や薬などは、マリナやロイズが買いに出ている。

 あとは、非常食を揃えれば問題ないだろう。


 俺達は加工品を売っている市場へと向かった。


 その途中、俺の範囲に突如、膨大な魔力が現れる。


 ロイズの魔力ではない……悪いが、ロイズの何倍もある魔力だ。


 一瞬で現れたことに、俺も思わずはっとした顔になった。


「この魔力……まさか!」


 当然、隣のルーンもそれを感じ取ったようだ。


 しかし、ネールはさして驚くような顔を見せていない。


 この魔力は……魔王か。


 俺は放出される魔力の中心部に目を移した。

 その”子”はすぐ目の前にいた。


 長い赤髪を伸ばした女の子は、黒く宝石があしらわれた黒いドレスを着ていた。

 

 幾何学的な文様が刻まれた髪飾りはこの王国の様式とは明らかに異なっているが、王族のような品の高さがあった。


 ネールが着飾ろうとしたり、この魔力に驚かなかったのは、魔王が来ると知ってたからだろう。

 

 女の子は赤い瞳を俺に向け、口をすぼめた。 


「あーあ。見つかっちゃった。さすがルディスね」

「……カリス」


 ただの貴族の女の子に見える彼女こそ、かつて皇帝時代の俺と争った魔王カリスだ。


 魔法の腕は俺と互角……いや、魔法の種類だけでいえば、俺のほうが多く扱える。

 だが、それは俺が魔法を学んだからで、カリスはそもそも魔法を学習しようとはしなかったからだ。


 カリスは俺をじろじろと見た。


「……髭、剃った?」

「いや、前も髭は生やしてなかっただろ……」

「そうだっけ? あ、そっちはルーンね。おひさー」


 カリスはルーンに手を振った。


「なにがおひさ、ですか。私達魔物からすれば、たいした時間じゃないでしょう。というかネール。知っていたなら……」

「ごめんなさい! でも、まお……カリス様が秘密にしてくれって言うんで」


 ネールにカリスは頷く。


「そのほうがルディスが驚く顔が見れるかなって!」

「十分驚いたよ……それより、カリス。来てくれたという事は」

「もっちろん! ルディスになんか甘いものをおごってもらおうと思ってね! 人間の国の食べ物、しばらく食べてなかったし!」


 カリスが甘党なのは前からそうだったな。

 難しい話をする前は、いつも何か甘いものを要求してくる。


「はあ……まあ、立ち話もなんだ。近くの茶店にでも入るか」


 俺達は最寄の茶店へと入っていくのであった。

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