パーティ追放
酒場にて。
「お前もう用済みだからうちのパーティ抜けろ。」
そう唐突に告げられた。
数秒経ってようやくその言葉の意味を飲み込めた。
「分かった。抜ける。」
深くは聞かなかった。
「いやぁ、お前が物分かりが良くて良かった。何せお前みたいなクズがいても報酬のうちの俺らの取り分減るだけだしよぉ。」
腹は立つけどあながち間違いではない。
何処から説明しようか。うーん···じゃあまずは···
この世界の名前はルート。大いなる世界樹の加護の元にある世界らしい。俺の生まれは少なくともルートだが、神話には曖昧だったり、矛盾する点が多く、その言い伝えもその中にあり、詳しいことは分からない。ただ、物凄くアバウトに言えば、この世界はそちらの世界で言うドラクエとかラノベみたいな物の世界観に近いだろう。ん?そちらの世界?何の事だっけ?
まぁ気を取り直して、自己紹介に移る。
俺の名はレイ。冒険者のはしくれをしていた。
だがさっきので俺は冒険者として捨てられた訳だ。
普通、冒険者は個人の役割や、適性によって、
出来る事、ステータスが傾き、一人だと稼業がしにくい。
そのため、冒険者は2~12人位が集まって、パーティを結成する。
すると、お互いの弱点を埋める事が出来て、依頼の攻略が簡単になる。
そんな中、俺は比較的オールラウンダーなタイプらしい。
しかも、その能力のほとんどが人が言うに高い水準らしい。
俺は知らん。
ただ、やはりそんな中にも弱点はあり、攻撃力がとても低い。
そのため、さっきまでいたパーティでは、回復、攻撃力等能力の
補正、挑発、罠の設置、まぁ、攻撃以外のほぼ全てを
担当していた。パーティができたての頃は、だ。
ただ、パーティが強くなってきて有名になってきた所、
新たにパーティに入れて欲しい、との申請が来た。
申請してきた彼女の役割は僧侶。回復役だ。
リーダーは即入団OKを出した。俺もまぁ少し戦闘の時忙しいと
思っていたので有難かった。
実際、俺だけが戦闘時の回復をやっていた時よりもずっと楽になった。俺はその空いた分を他の事をやるのに費やせた。
少し経ったある日、また申請が来た。バッファーだった。
味方に補正を掛ける役割だ。また団長はOKした。
そんな感じで数日毎に新メンバーを迎えながら着実に戦力を伸ばしていた。
ただ、パーティの人数が増える毎に俺はやることが
なくなって、たまに取りこぼした事を埋めて、サポートする位になった。そのあたりからか。団長は俺をこきつかい始めたのは。
料理、洗濯、野宿の場合はテント、寝る場所の整備、消耗品の
買い出し、依頼の受注。戦闘以外のほぼ全て。
「お前は戦闘中何かしてんのか?してねぇだろうがバーカ」
なんでも、俺達は戦闘で疲れている。だからそれ以外は戦闘中暇してるお前にやらせる。それが団長の意見だ。
ごもっともだ。だから俺は何も言わず、嫌な顔もせず
雑務をこなした。仕方ない。そう思っていた。
ただ、そんな事が次第にエスカレートしていった。
戦闘で、団長が失敗すればお前のせいだと俺を蹴った。殴った。団員は嘲った。何人かは、否、恐らく全員が俺を
袋叩きにした。その血を流して倒れれば、
「早くしろ。雑用だろうが!俺は疲れてんだ!」
と罵りながら俺を鞭で打った。それが後に竹、木の枝、
金棒となった。それでも俺はすぐに雑務に戻った。
そして今。追放。心がストン、とすっきりした。
「じゃ」
俺はそう言って立ち去ろうと思ったら
「待てよ。」
呼び止められた。
「まさかとは思うがよぉ。このまま俺らに何もなく出て行こうって訳じゃないな?」
···俺は黙って所持金を全部差し出した。
「これだけか!?あぁ!?てめぇが今まで散々俺らに迷惑掛けた分は金貨200枚!?」
団長は怒りに身を任せ立ち上がった。
「お前の武器、道具、装備。お前のきったねぇパンツ以外全部!置いて行け!」
···俺は周りの人が見ているなかで装備を全部脱ぎ、
パンツ一丁になって装備を全部差し出した。
「···今までありがとうございました。
力になれずすみませんでした。」
今度こそ出て行こう。そう思ったら
「待てよ。」
またか。今度は何だろう。
「最後に殴らせろ。おいお前ら!」
呼ばれた元同じパーティのメンバーは立ち上がり俺を取り囲み
逃げれない状態にする。
他の無関係な人達は「お?喧嘩か?」
という目付きで俺達の方を向いている。
「行くぞ」
団長はそう言うと、目一杯の力を込め俺を殴った。
「ははは。気分はどうだ?痛いか?大丈夫だ。
すぐに楽にしてやる、よ!」
二発。俺は床に倒れた。
「よし、お前らもやって良いぞ」
そう言うと、パーティの他のが待ってましたと言わんばかりに
俺を脚で踏んだり蹴ったり、杖で叩いたりした。
すでに体は動かない。血が出て意識も飛びそうだ。
「よし。止めだ。」
団長がそう言うと俺の体はメンバーふたりによって無理やり立たされた。
次の瞬間、俺は団長の全力の蹴りを喰らってドアから酒場の外へ蹴飛ばされ、意識を失った。