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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

甘くて美味しい転生人生

作者: ひろりん

リハビリ作品です。

出来れば、甘い目で読んでやって下さい。

喉の奥に力を入れて、おぎゃあと泣き声を上げたら、

目の前で小さな羽をもつ可愛い妖精が私の顔を覗き込んでいた。

何を馬鹿なと言いたいかもしれないが、これは本当の事。


その妖精は、綺麗な金の髪に7色に光る虹色の瞳の、それはそれは美しい容姿のミニマム美女でした。

これが人サイズならさぞかしとは思うが、リカちゃん人形のように小さいので、なんとも表現しがたい気がする。そんな感じで、美人妖精を泣きながら見詰めていたら、何を思ったのか、この妖精は、プニプニな私の頬をペタペタと触り始めたのだ。それも、手形のハンコでも押す様に、本当に遠慮なく触りまくる。


いくら赤子な私でも、びっくりして思わず声が止まったのは当たり前だろう。

そして、何を思ったのか妖精は、目元に溜まった涙粒に指を入れて、ぺろりと舐めた。


そして、言ったのだ。


「甘い」


あれ?


更に妖精は、私の涙を両手に掬い、蝶が花の蜜を吸うように、

綺麗な仕草で涙を飲み始めた。


「甘くて、美味しい」


は? 涙は普通しょっぱいでしょう。甘いなんて聞いたことがない。

いや、それよりも、私ってば、なんでそんなことを知っているのだろう。

今の私は赤ん坊。記憶も常識も何もない真っ新な状態のはず。


そう思いついたところで、頭の中で何かが弾けて飛び散った。


パァァン、パァァンと何度も大きく鳴らされる電車の警笛。

毎日通った何時もの踏切。

実らない理解されない残業多いの職場でへとへとに疲れながらも、

明日に必要な買い物を済ませ、とぼとぼと歩いていたら、

いきなり左足がズブっと沈んだ。

足元を見たら、左足が線路に見事に挟まっていた。


なんでこんな時のこんな場所で線路に嵌るのだろう。

夜も遅く、周囲には誰一人いない小さな踏切で。

私の足は線路の幅よりもずっと太いはずなのに、嵌ってしまった。

なぜと考えても状況は変わらない。

まずは足を引っ張る。だが、左足は線路に食い込まれたように動かない。

靴は諦めてなんとか線路からの脱出をと靴紐を緩め、足首を捻っても取れない。

段々と赤くはれて痛む足首、そして、遠くから聞こえる警笛の音。


「嘘、電車、来ちゃった」


最後に覚えているのは、走ってくる電車が放つ真っ白なライトの光だった。


脳裏に前世の記憶が走馬灯の様に蘇る。

一歳、三歳、七歳、十歳、十五歳、十八歳、二十歳、二十五歳、二十九歳。

スライドの様に絵が一瞬で切り替わる。


私、私はあの時、死んだ? 死んじゃったのよね。

ぐるぐると回る記憶の渦にのみこまれかけて、気持ちが悪い。

最後に覚えているのは、嵌ったままの足がどうしようもなく痛いという痛覚。

そして同時に、幼き頃の思い出が脳裏によぎる。


「痛くてつらかったね。ほら、飴でも舐めて元気出しなさい!」


予防接種の注射が痛くて泣いていた私に看護師が言った言葉と、

美味しい飴の味が蘇る。

そうだ、これだけ痛い思いをしているのだから、それに見合う甘味が必要だと。

死ぬときに思った最後の欲求がそれだった。


死の間際で、最後の望みが甘味って、それって人として欲望に忠実すぎない?

そう思ったが、後の祭りだ仕方ないと、何処か冷静な自分が告げていた。

前世の記憶と死の間際の想いが、今の自分と相まって、視界の悪さに吐き気がする。


気持ち悪い気持ち悪い、どうしてどうしよう。

反射的に目を閉じようとして、視界の端にあの妖精が目に入った。


さっきまで周囲でちょこまかとしていたあの妖精は、

どうやら私の耳と足の裏に何かを描いていたようだ。


「気に入ったから、持って帰るよ。いいよね」


ぐらぐらと揺れる世界で、妖精が私のほっぺをパチンと叩いた。


「あぅ(いたい)」


と言ったのが、承認となったようだ。

気が付けば、私は人の世ではなく、妖精たちの世界に取り換えっ子として存在していた。


電車にひかれて生まれ変わって、赤ん坊になったら妖精に誘拐されて、

妖精界ってところで、面白可笑しい妖精たちに囲まれて、私の異世界生活が始まった。


何故この世界に転生したのかとか、どうしてこんなことになったのかとか、いろいろ疑問はあるが、周囲にいる妖精たちに聞いても、解らないと首を傾げるばかり。

妖精の女王様は、私が前世の記憶を持っていると言っても、

へぇ、そう、便利でよかったわねと一言で終わってしまった。


便利。それで終わってしまうくらい、なんの影響もなかった私の前世の記憶。

ため息はつくが、つまりはそういうことだと納得してしまった。


だって、小説や漫画で前世の記憶持ちがチートで内政とか読んだけど、

普通に暮らしている庶民が出来る事って、こっちの人にも出来る事ばかりだ。

変わった料理を振舞うっていうのもあったけど、

基本、私の周りの妖精は霞や植物の生気、花の蜜を主食で食べている。

私もそんな中で生きているので、どうにも生前の食に対する興味が薄いようだ。

朝も昼も夜も、ただふわふわ、とろとろ、ゆらゆら、もくもくと妖精たちと過ごす日々。


「最近美味しくて綺麗なお花が咲いてるって」


「え?どこでどこで?」


「マウモ老の古木の傍だって。パチパチするって」


「うぉぅ、パチパチ。面白そう~」


「いこういこう。パチパチお花、楽しみだねぇ~」


実に呑気で平和で明るい会話である。


こんな感じで、前世の記憶を持ったまま、妖精界に慣れつつ、

毎日を穏やかに楽しく暮らしていました。

そうして気が付けば、私は15歳になっていた。


この世界で15歳といえば、成人して大人とみなされるらしい。

人間界では、成人すると畑が与えられたり、結婚したり、

親元を離れて職について賃金を得る生活をするらしい。

他人事だから関係ないと思っていたら、妖精の女王様に言われた。


「月子、貴方は人の世界に戻らなければなりません。

 残念ですが、人間の子は大人になると、

 私達の世界では暮らしていけなくなるのです」


あ、月子っていうのは、私の前世の名前ね。

私を拾ってきた妖精が名前を付けようとしたけど、センスがなくて諦めたらしい。

何しろ、『センスの無い扇子』とか『妖精の養成を要請された』って言ったら、アイツは腹を抱えて笑い転げていたくらいだ。これって典型的な親父ギャグなんだけど。


ちなみに、どんな名前候補があったのかと聞いたら、クムリンとトッポギと言われた。なんの意味があるのかと聞いたら、赤キノコとマダラバッタの事らしい。この世界の赤キノコは何時も傘を赤くして踊っている踊りキノコで、マダラバッタは肉食で、大変凶暴で迷彩柄がカッコいいらしい。

よかった、その名前を付けられなくて。


まぁ、それは兎も角、好きな名前をと言われて、

前世の名前を言ったら、それで決まった。


で、話はもどるけど、私、今更ですが人間界に戻されるらしい。

なんでも妖精界は子供なら大丈夫だけど、大人だと弾かれてしまうらしいと。


始めて知った事実に、驚きながらも受け入れた。

だって、妖精界は綺麗で気楽で毎日が楽しいけど、人間が私一人しかいないから、少しさみしかったのだ。それに、人がいる世界にも、すこしだけ憧れもあった。


ならばと、産みの親の所へ返却をお願いすると、実は、妖精界の時の流れは人間界よりも緩やかで、

人間界でいえば150年が経過しているとの事。

それは、びっくりだ。これも初めて知った。


そして、私を連れてきた妖精が調べたところ、当然ながら私の両親も兄弟も死んでた。実は、人間界で、大きな戦や酷い病が広がった時に、一族全員が他界したとか。


本来なら、連れてきた人間の赤子は、一年以内に返却するらしい。

まぁ一年と言っても、人間界では10年が経過しているからね。


でも、その頃の人間界は戦が激化し、人も自然も消えて、悲惨な状態だったらしい。妖精たちが非力な私をこんな危険な世界に返すのを嫌がったので、つい返しそびれたとか。


あと、こっちが本当の理由のような気がするが、

私の特殊な体質を酷く惜しんだらしい。


私の体質。

私が妖精界に連れ去られた原因である、甘い涙を覚えているだろうか。


私の常識をぶち破る最初の事象であったが、私の涙は確かに甘かった。

私の涙や体液が甘いと知った妖精たちは、私を手放そうとしなかった。


「ねぇ、そろそろ一年でしょう。どうするの?」


「え~、一年? 経ってないでしょうまだ」


「そうそう、気のせい気のせい、まだまだだよ」


「あとちょっと先よ、きっと」


「ですよね、王様、女王様?」


「そうね、ここは多数決よ。月子がここにきて一年も経ってないと思う妖精は手を上げて」


その場にいる全員が手を挙げた。序に女王様も。

王様は、厳かに頷いた。


「うむ、まだ一年経ってないことにする」


「「「「「「は~い」」」」」」


良い返事である。ちなみに月子は、すやすやお休みタイムである。


あと少し、もうちょっと。

そうやって、女王様を筆頭に、甘味処私に夢中になってしまったのだ。

私の体液は、花の蜜よりも甘くて、極上の果物よりも爽やかで、

熟成した最高級の果実酒よりも濃厚。つまり、最高に美味しいらしい。

私的に、自分で舐めてみたら、涙は三温糖、汗はみりんの味がした。


恐らく、死の間際の甘味欲望が強すぎたのか、もしくは、死んだときに手に持っていたのが、明日のコーヒーに入れる三温糖198円の袋と、ブリの照り焼きに使うはずの調味料、本みりん399円だったからかもしれない。


つまり、私の体は、三温糖本みりん味というわけだ。

これが果たして美味しいのだろうかと、前世の記憶から首を傾げる私だったが、妖精たちにとっては堪らない甘味だったようです。


お蔭で、どこへ行ってもペロペロ、スンスンと舐められて、

私はいつもへろへろ、べちょべちょだった。

だが、齢3歳の折に、私は体質を改善することに成功する。


手のひらにパンや野菜を乗せ、甘くなれと念じると、なんとびっくり。

私の体液味に甘く変化したのだ。

パンはラスクに、水は水あめに、干物はみりん干しにと。

日頃、固形物を摂取しない妖精たちに、これはどうだと差し出したら、

癖になる味とか、止まらない悪魔な甘味とかと評価されて、受け入れられた。


これで、無理に泣けと髪を引っ張られたり、

寝ている間に汗や涎を無作為に舐められたりしなくなった。

人間、やれば出来る物だ。進化万歳である。

こうして、私は甘味を求めてきた妖精たちに、

甘い水や甘いパンを融通して、

日々穏やかに、綺麗な世界でまったりと過ごしていた。


実は、私が2歳になった時にも、私を人間界に返品しようとした事があったそうだ。私の自我も落ち着いているし、妖精への貢物を条件に人間界に返してもいいかもと、考えていたらしい。だが、私の代わりに置いてきた妖精の子供は、思っていたよりもよく人間界に馴染み、妖精界に還るのが嫌だとダダをこねたそうだ。


迎えに行った妖精達は驚いてはいたが、その体は人間に似せた妖精の体。

人間界に合わなくて、いづれ儚くなる前に還ってくるさと、

楽観して見守っていたら、大恋愛して人間と結婚してしまった。


その数年後には、なんとお腹に子供が宿ったらしい。

通常であれば、妖精と人との間に子供は産まれない。

子供がお腹に宿ることはあっても、異種な魂が定着しないため、命は儚くなる。だが、自分の現身として命を移すのは出来ると、気まぐれな妖精が教えたらしい。その子は、どうしても愛した人の子が産みたくて、産まれてくる子供に妖精の命を与え、息絶えたそうだ。

妖精の命を持って生まれてきた人の子は、丈夫な人間の体と妖精の力を駆使して、人間界の勇者として長く続く戦を終わらしたのだとか。


ほうほう、なんだかどこかの勇者物語みたいだ。

で、私はその国に降りる事になったらしい。

今は、戦も終わっているし、病も収束しているから、

心配ないと女王様は教えてくれた。


それを聞いて、正直ほっとした。

会ったことがない家族や親に会えないのは、すこしばかり残念に思うが、

戦だの病だのと怖そうな事象に巻き込まれるのは嬉しくない。


平和ボケしているであろう私が、過酷な世界に突然放り出されてたら、

死出の旅路にあっという間に出発するに違いない。


それは兎も角、私は人間界に降りることになった。

妖精達総出でお見送りも兼ねたパーティが始まった。


長い長い、長老妖精の挨拶に始まって、各種妖精達のお別れの一言。

楽しいダンスに、昔の私の恥ずかしい話大会(止めてくれ、泣くぞ)

つらつらと続いた催しの最後を締めくくる王様の挨拶。


「え~、月子、最後に、ここで言っておくことがある」

と妖精王様。


まずは、私の容姿について。


「月子、君は今の姿と赤子の頃の姿を比べた事があるか?」


妖精界には、写真のような記録媒体など見たことはない。

森のちらこちらに池があるので、今の自分の姿は知っている。

私が覚えている幼少期の姿は精々5歳くらいからだ。

今とそう変わらなかった気がするのだが、違うのだろうか。

私は首を横に振った。


「赤子の時、月子の髪は闇のような黒髪、瞳は空のような青だった」


自称私の親代わりの誘拐妖精が、ぽつりと呟いた。


実は、永の妖精界暮らしで、私の容姿は様変わりしたらしい。

濃いブルネットであった髪は、みりんのような琥珀色に。

碧眼は、金が混じった琥珀水晶のような瞳になっていた。


これは、妖精界で育ったため変質したのだろうと言われた。

この妖精界では、妖精達は全てその本質に沿った容姿に形成されているらしい。

土の妖精は、赤茶オレンジのような色合いに。

緑の妖精は、黄緑緑系統に。

水の妖精は、青緑白系統だ。

なるほど、言われてみるとそうだ。


つまり、私の今の姿は私の本質が現れた感じなのだと。

私の本質、みりんカラーが意味するのは、やはり甘味なのか。


前世で、外国のモデルさんの様だと憧れていた黒髪碧眼が、

何時も間にやら、身も心もみりん色に染まっていたらしい。

知らなかった。なんてもったいない。


「次に、月子は外界の成人に比べて、かなり小さい。知ってたか?」


確かに。

実質150年経ったのに、私の身長は現在140cm足らず。

どこもかしこも柔らかな、出るとこ出ない幼児体型は、未だに大人な変化がなかった。

普通、人間は成人間近になると体型が変わってくるらしいが、私には変化らしい変化も成長もなかった。でも、成長期って人それぞれだし、これから大人になっていくんだから、いずれ大人の女性らしくなるはず。そうだよね。


「ううむ、そんな月子には残念なお知らせだ」


え?


これは、契約に不慣れな親妖精のスペルミスで、私の成長が著しく阻害され、体内時計が狂ってしまったらしい。更には、妖精界に馴染みやすい様にと組んだ余計な術が、不完全に体に浸透しすぎて、私が人間界に帰っても、この成長阻害は消せないらしい。


ええっと、つまりはどういうこと?


「月子の成長期は、この時点でほぼ終わったとみて間違いないのぅ」


女王様の言葉で、かっと目を見開いた。


「えええ~ 私、大人になったのにこれ以上成長しないんですか?」


「うむ、無理だろうな」


つまりは、今のキューピーぽっこり体型永遠維持?

これも、初めて知った(怒っていいかな?)

周囲を見回したら、原因をつくったであろう親妖精は姿を消していた。


つまり、私の体は幼児体型の15歳。

この先の成長が望めない、みりんカラーなロリ決定である。


更には、私の体質改革その3もあった。まだあるの?

妖精界に15年居た私の存在は、ちょっとした不思議体質(甘味処私)だけに留まらず、

呪術や呪いに大変影響を受けやすい体質になっているらしい。


「魔法や呪術が廃れて久しいとはいえ、人間界では十分に気を付ける様に」


つまり、どういう風に気をつけたらいいのでしょうか。


「気を付けるのは、特に名前だな。

 妖精界では名は、真名といい、本人の本質を指し示すものだ。

 外界で悪意を持って名を呼ばれると呪われるやもしれない」


な、名無しの権米?


「住まいとか職業の総称を名乗るか、別名を名乗るかだな。

 だが、別名も月子を指し示す物として認識されれば、駄目かもしれん。

 名は、縁に連なる予定の者か、口の堅い信頼できる者のみ、教えるがいい」


住まいや職業の総称って、どこそこ村のどこそこで働く娘その2とか?

それって、引っ越ししたり職業が変わると名前も変わるってことですよね。

それでいいのか、名前の意義。


別名も駄目って事は、愛称とかも駄目。

本当の名前は、将来の旦那様か、親しくなった親友だけに教えなさいと。

それって、なんだかとっても、


「面倒ね」


女王の言葉に、こくこくと頷くと、ふふふと婀娜っぽく微笑む女王様が、更に不吉な事を言った。


「ねぇ、月子。知っていて?

 月子の体質は、この世界でも大変珍しいものなのよ。

 貴方の体質がばれれば、砂糖に群がる蟻のように、

 あっという間に、貴方は人間達に搾取されてしまうかもしれないわ」


思わずその有様を想像する。

私に群がる妖精が、人間に代わるのだ。

ぺろぺろでは済まない。

嘗ての人生で観たホラー映画が脳裏に蘇る。

ゾンビが生きている人間を貪り食う様に、バリバリむしゃむしゃと頭から足の先まで食べられる私。


残るは骨のみ。チーン。


それは、なんて、恐怖。

永遠子供体型の力ない私が、どうやってそれらを撃退することが出来ようか。無理!


「そんな、どうしよう」


わが身に起こりうる不幸な未来を知って、恐れおののいていたら、

女王様がにっこり笑って、手招きをした。


「大丈夫よ、可愛い月子。私に良い提案があります」


女王曰く、人間界と妖精界の狭間にある妖精の森に、

管理人として居をかまえてはどうかと言われたのだ。

そこならは、人間界の一部だとはいえ、妖精も出入りできると。


妖精達の時間で一昔前、妖精の森と外界を繋ぐ管理人という存在が、

居たことがあるらしい。今の外界は人族がその世界を謳歌しているが、

嘗ては、人族以外の一族もそれなりに数がいたそうだ。

最後の管理人はその一人で、長寿なエルフと呼ばれる人種だったらしい。


エルフって存在したんだ。

まぁ、妖精が存在しているんだから、ありと言えばありだよね。


「最後の管理人が妖精の森を出て行った時、

 立派な状態保存の術をかけたので、まだ使えるだろう」


樹妖精の長老が、うんうんと頷きながら家の様子を教えてくれた。

家の中の家具も庭も、今すぐ住んでも問題ない状態らしい。

でも、状態保存をかけて出て行ったと言うことは、

もしかして帰ってくるつもりではと尋ねたら、王様は笑って言った。


「なに、月子の様に、記憶を持って生まれ変わらぬ限り帰ってこぬさ。

 何しろ外界時間で3千年前の事だ。ここでは300年だがな」


なるほど。

私が納得していたら、妖精達が嬉しそうに提案した。


「月子の家に、僕たちが行き来できる妖精の道を作ろうよ。

 月子に何かあった時、大変だもの」


妖精の道って、満月ロードでしょう。

あれって、月の光を受け入れるそれなりに大きな池がいるはずだよね。


「そうだな、管理人の家の庭にちょっと細工して」


「そうだわ、どうせなら私達の部屋も作っちゃいましょう」


「いいね、いいね、そうしよう」


「これで、頻繁に遊びに行けるし、美味しいおやつも今まで通り食べれるね」


「いいね、いいね、それはいいね」


王様も妖精たちも、それはよいと諸手を挙げて賛成した。

更には、樹妖精の長老達や森の仲良し動物達も巻き込んで、

妖精の森の管理人家と庭の増築をしてくれるらしい。



私が何も言わないうちに、私の職と居住地が決まった。


私、妖精の森の管理人に就職したらしいです。

人間界に帰るはずではなかったのでしょうか。


妖精曰く、ここは境界線だから、人間界と妖精界のどちらともいえないらしい。

ならば、ここに住むならどっちもありだそうです。



*****



妖精の森は、迷いの森とも言われ、悪意ある者が入れぬ不思議な森だ。

だが、数年前に突如管理人と名乗る女性?が現れた。


いつも頭から足の先まで隠れるマントを被っているが、

身丈は子供と見まごうばかりに小さい。

本人曰く、成人しているらしいので、ここは女性としておく。


で、この妖精の様に美しく可愛らしい女性は、村人が初めて食べる甘い珍味や料理を手に、近隣の集落に現れては、必要な物資と交換していくそうだ。


当初、村の小さな販売所に彼女が持ってきたのは、見たことがない物ばかり。ピカピカ光る良い匂いのする干し魚、甘い良い臭いがするウサギ肉、うっすら白いカリカリパン、瓶に入った透明なとろりとした水。


「それは、食べ物なんだよね?」


販売所の女性店員が尋ねると、


「食べてみますか?美味しいですよ」


と小さいナイフで削って、パンの欠片を差し出した。

美味しそうな匂いと好奇心に逆らえず、女性は恐る恐る欠片を口に入れた。


「んんんんん~ん。あま~いい。美味しい~」


女性の言葉に、じっと固唾をのんで周りを囲っていた人達が、一斉に女性に手を出した。


「お、俺にも少しくれ」

「わ、私にもよ」

「俺は、こっちを食べてみたいが、駄目かね?」


女性は口元を引き攣らせながらも、快く頷いて、彼らの手のひらに小さな試食を渡した。それらの甘味を口にした村人たちは、こぞって頬を押さえて幸せそうに微笑んだ。


「んんんんん~まい~」


それらの料理の名を聞いたら「みりん干し」とか「照り焼き」とかいうそうだ。食べてみると、酒のつまみにとても合うし、ほんのり甘い酒の臭いがする料理は大層受けた。更には、びっくりするほど甘い「ラスク」や「みずあめ」は市場の女性達に爆発的に売れた。


彼女は、物の価値をきちんと理解していないのか、これらの甘味を日用品や食料と取り換えたいといった。人々は、我も我もと小麦や大豆、乳製品に塩などを手に、それらと喜んで取り換えた。


本当に世間知らずの女性である。

なんだかとても悪い事をしているような気がして、村人たちがそっと尋ねた。


「妖精の森の管理人さん。

 今更こういってはなんだが、本当にこんな物と交換でいいのかね。

 本来、砂糖や蜂蜜と言った甘味はとても高くて、

 私達のような辺境の田舎暮らしでは、手が出ない代物なんだ」


「はい、いいんです。これは蜂蜜でも砂糖でもないですから」」


彼女は、にこにこと屈託なく笑い、これでトーフがチーズがと、なにかの呪文を嬉しそうに唱えて、交換品を大事そうに持って帰った。

人を疑うことの知らない子供のような笑顔に、村人たちの良心が痛んだ。

次は、交換する分量を少し多くしようかと相談し合った。


更には、森の管理人の女性の世間知らずは、他の所でも発揮された。


流石は妖精の森の管理人というべきか、

森の深層でしか取れない貴重な薬草や実を、なんの捻りもなしに出してきた。


「あの、これ、先日言ってた物だと思うんだけど、買ってもらえますか?」


袋から取り出したのは、大変貴重で、幻のキノコと呼ばれる虹色キノコ。

どんな状態でも服用すれば、たちどころに一晩ギンギンとなる霊薬が作れる。

王侯貴族が喉から手をだして欲しがる代物だ。


「こ、これは、確かに、虹色キノコ。それもこんなに沢山!」


先日、試しにこんなの見つけたら持ってきてと気軽に薬屋亭主が頼んだら、

ぽんと持ってきた。それも株ごと。


「駄目ですか?」

「買いましょう。全部いただきます」


金貨20枚で買い取った虹色キノコは、王都の薬問屋で金貨300枚で売れたらしい。更には、管理人の女性に助言してもらい、虹色キノコの株を庭に植生させることに成功した。


お蔭でいつも生計はうなぎ上り。

薬屋亭主は店を綺麗に改装し、可愛い嫁を貰ったらしい。


妖精の森の管理人は、いつも小さな荷車にほんの少しの荷を積んで来て、

帰りは荷車一杯で一人森に帰る。

時に、大金を持っていることもあるのに、随分不用心だ。

小さく、弱い子供のような、うら若い女性?なのに、護衛も使用人もいない。

聞けば、森の奥の一軒家に、一人暮らしなのだとか。


「彼女の家には、金目の物が沢山あるに違いない」


ある日、誰かがそう呟いた。


それを聞いたちょっぴり欲深い村長が、彼女の家を知ろうと後をつけたが、

森の入り口で煙の様に姿が消えた。

慌てて探したが、足跡一つ見つけられなかったようで、がっくり帰ってきた。


翌日早朝、村長の甲高い悲鳴が、村に響き渡った。

村長自慢の八の字髭が、誰かに切り取られたらしい。

村長は使用人や家族を問い詰めたが、誰もが首を振って否定した。


村長はその日から、引きこもりになった。


村人たちは噂した。

妖精の森の管理人に、不埒な事をしようと企んだからだと。


さて、村人たちも言っていたが、辺境では砂糖は高級品だ。

蜂蜜もめったに口に出来ない。

甘い醸造酒に至っては、王都で金貨を積まなければ手に入らない。


そんな中、皆、初めてのみりん味に、三温糖味に狂喜乱舞した。


みりん風味の醸造酒を酒屋に卸した時は、

利き酒に煩い酒屋の主人が、思わず喉を鳴らしたくらいだ。


「あっさりとしているのに、コクがあってまろやかで。

 なのに、酒精は強く、香りも高い。こんな酒は初めてだ。

 これは、どこで作っている酒だ。どうやったら手に入る?」


管理人は、申し訳なさそうに言った。


「これは、妖精が気が向いた時に手に入るとしか」


実際は、妖精の森に住む、酒が大好きな猿の一族が作った強い果実酒を、

月子がみりんで割って飲みやすくしたもので、料理に使っている代物だ。

今では、妖精の王様がお気に入りのお酒である。


この果実酒は、猿の一族が大きな木の洞で沢山の酒を造っているのを、

妖精達が洞の底に小さな針程の穴をあけて、無断で拝借しているものなのだ。


妖精達が王様の為に取ってきて、私がみりんで薄めて希釈する。

定期的に手に入るという代物だといえばそうなのだが、

黙って拝借している以上、沢山と言うわけにはいかない。

現に、月子の手元には料理に使う酒として、3つほど小さい瓶があるだけだ。


「手持ちにあるのを全て売ってくれ。これは売れる」


酒屋の主人は、王都の利き酒会でこの酒を『幻の妖精酒』と銘打って出したところ、王都でバカ売れした。酒屋主人は、その売り上げで、酒屋の二階を改装して宿屋にした。そこの宿屋では『幻の妖精酒』が運が良ければ飲めるらしい。世界のあちこちから、客が頻繁にやってくるようになった。

美味い酒が飲める宿屋として、後にそれなりに有名になっている。


また、町唯一のパン屋の娘が、女性の持っていたラスクに飛びついた。


「こ、この甘いパン、どうやって作るの? 材料は砂糖なの?」


女性は首を振って答えた。


「い、いえ、砂糖ではないです。

 え~と、ちょっと変わった者から取れるというか」


「変わった物?妖精の森でしか取れない植物とかなのね?

 それって、私に売ってくれない?

 もしくは、私をその場所まで連れて行ってくれないかしら」


女性は慌てて首を振って、断った。


「どちらも無理です。申し訳ないですが」


女性は、ラスクになった商品ならパン屋に専用で卸してもいいと言ったが、パン屋の娘は納得しなかった。


「だって、酒屋と薬屋があんなに儲かったのは、王都で成功したからでしょう。パン屋が成功するには、あの甘味の素をがっちり押さえて、王都で店を構えて、大々的に売り出さないと」


あの甘味の素は、妖精の森奥深くに自生している植物らしい。

そこには、あの管理人の女性しか行くことが出来ないらしい。


それを聞いたパン屋夫妻は早々に諦めた。


「無理だ。妖精の森に人間は入れない。商品自体は卸してくれるって言ってんだ。

 それでいいとしようじゃないか。王都で大儲けなんて、大きな夢を見過ぎだよ」


だが、娘は諦められなかった。パン屋で一発当てて、王都で大きな店を切り盛りして、後にお金持ちで素敵な旦那様に見初められて嫁入する未来があるかもしれない。妄想まみれだった。

だから、店の金を持ち出して、言うことを聞く余所者を雇い、森での採取を頼んだ。雇われた男達は、甘味の素となる植物を探して、何度も妖精の森に入ったが、駄目だった。入ったと思ったら霧に囲まれ、気が付けば森の外に出ているのだ。さすが妖精の森だけある。

諦めて帰ってきた男共を怒鳴りつけて、今度は娘が一人で森に入ったが、何度やっても同じことだった。


疲れ果てて家に帰り、泥の様に眠ったパン屋の娘は、翌朝、悲鳴を上げた。村でも評判の器量よしで、目尻が少し上がった大きな猫目が可愛いと言われ、きつめの性格に目を瞑れば婿の成り手も引く手あまただと言われた娘の顔に、黒緑の隈取のような落書き(歌舞伎の隈取みたいな感じ)がされていたのだ。その隈取は誰も知らない特殊な染料で描かれ、何度も洗っても、どんなに擦っても、落ちなかった。


パン屋の娘は、その日から引きこもった。


森の妖精が、節度を知らないパン屋の娘に罰を与えたのだと、村人たちは噂した。

村人たちは、やれやれと首を振って、これはどうにもならないと諦めた。

人々は、週に一度、村に訪れる小さな管理人を心から待ちわびた。



ある日、髭がようやく生えそろった村長が、それらの珍味を持って領主に拝謁して、まるで自分の成果のようにその旨さを自慢し、ついでに献上したところ、たまたま王都から帰ってきていた領主の一人息子が大層気に入った。領主の息子、デリックは、その味を求めて、皆の制止を振り切って妖精の森に入り、三日三晩さまよって、なんとか月子と出会うことに成功した。


余談だが、その翌朝に、漸く生えそろった村長自慢の髭が、またもや剃り落とされていた。今度は、うっすらと残っていた村長の頭頂部の髪の毛も一緒に消えていた。一般的に言うサビエル禿、もしくは河童スタイルである。目に入れてもいたくない程に可愛がっていた村長の孫は、早朝一番に祖父を見て、腹を抱えて大笑いした。


村長は男泣きに泣いて、またもや引きこもった。


それはさておき、問題は領主の息子、デリックである。

実は、領主の血統は、あの例の勇者の子孫であった。

妖精の魂をその身の奥底に宿すデリックは、妖精の術が効きにくかった。

デリックは、妖精が放った霧や幻術、数々の危険な罠を掻い潜り、

突発的雷雨や凶暴な獣攻撃にも負けずに森を進んだ。


そうして三日三晩彷徨って、執念で森の奥の月子の家までたどり着いた。

家の前での行き倒れである。


「み、水」


生きているのかと月子が指で突いていたら、そう呻いた。

月子は、庭の手水鉢に溜まった水を手のひらで救ってデリックの口元に掛けた。


最初はちょろちょろと水を口元に含ませる形で流していたが、

途中からデリックが口をがばっと大きく開けたので、遠慮なくざばっと口に流しいれた。


「も、もっとくれ」


目を開けないまま図々しいお願いをする行き倒れが、月子の手を掴んで離さないので、

仕方なく手元にあったジョウロの水をその口に突っ込んだ。


ちなみに、ジョウロの水は、月子が手を洗った後の水である。

これを植物の苗に掛けて育てると甘く成るかもと思いついたので、

月子は、これでフルーツトマトや、さつまいもを作ろうとしていた。


ジョウロや庭に気を取られていた月子は、突如、手のひらが生あったかい何かで撫でられている事に気が付いて悲鳴を上げた。


「ひっ!」


小さなジョウロの水でも足りなかったデリックが、

月子の濡れた手をベロリと舐めたのだ。

その途端に、デリックの眼が、かっと大きく開いた。

更に、ベロベロと遠慮なく月子の手を、指を舐め回す。


「ひ、ひぃぃい~、変態変態変態! い、いや、舐めるな齧るな吸わないで!

 い、いやぁ~離して~」


「こ、この味だ。この甘味だ。

 私を惹きつけてやまない甘味の素は、君だったのか。

 そなたがあの、妙なる妖精の甘味を齎す娘。妖甘娘なのだな。」


「ようかんむすめって言うな!なんで態々省略するのよ。

 変な名をつけないで!私には月子っていう名があるんだから」


あっ、と思った時には名乗っていた。しまったと思ったが、後の祭りだ。

でも妖甘娘って、羊羹娘みたいじゃない? あ、羊羹もいつか食べたいかも。

まぁ、後でしっかり、勝手に名前を呼ぶなと言っておこう。


「月子、月子か、素敵な名だ。妖精の乙女に相応しい。

 私はデリックだ、妖精の森を含む、この辺り一帯を治める領主の息子だ。

 月子。どうかデリックと呼んでほしい、可愛い人」


濃い茶髪に青い目を持つ、筋肉隆々の偉丈夫である。年のころは30。勇者の血筋をもつ領主の一人息子で現在独身、デリック・マローイ。王都で王騎士の位を持つ、堂々たる体躯の男性が、子供の様に小柄な月子の手をそっと握って膝まずいた。


「どうか妖精の乙女よ、私に君を一生食べさせてくれ」


偶然にも月子の手を舐めて、その甘味に惚れたデリックは、妖精のように可愛らしい容姿の月子の手をベロベロ舐めて、一世一代のプロポーズをした。


対する月子の眼は冷たかった。


「離せ、ロリコン、気持ち悪い事をするな、変態!

 勝手に名前を呼ぶな、変態!」


叩き落された手は、足元から月子の膝を救い上げる様に持ち上げ、今度は月子の膝頭をぺろりと舐めた。流れるようなデリックの唐突な動きに、月子はバランスを崩してただ狼狽えた。


「わ、わわわっ?」


「ふふ、可愛らしい膝小僧だね。

 ああ、どこもかしこもすべすべで、とても甘い。

 君は私の天使だ。全身を舐めたい」


ガシリと掴まれた左足は、無遠慮にもベロリと撫で上げられた。


「ギャー、やめろ、離せ、変態、すけべ、馬鹿」


月子は、男を蹴り倒して逃げた。


「ふふふ、月子がここに居るなら、王都にもう用はない。

 早速、王に職を辞する手紙を書こう。またすぐ来るよ、月子」



******



実は、デリックは騎士の中でも最高峰と呼ばれた王騎士の地位にあった。

当然、王族の覚えも、同僚や部下からの信頼も厚い。

将来は、王族に連なる公爵家や、それなりの娘を娶って、辺境伯という生家の地位を盤石なものにするだろうと、周りは勝手にそう思っていたので、行き成りの辞職願に、王城に激震が走った。


「デ、デリック、職を辞するというのは真か?」


粛々と身の回りを片付けていたデリックのもとに、中年チョビヒケで、最近ちょっぴりメタボな王とその側近であり幼馴染のカッシェ・パドック卿が走ってきた。この二人とデリックは、学生時代からの付き合いで、お互いがそれなりに気がしれている間柄なのだ。


「はい。今までお世話になりました」


形式通りに別れの挨拶をはじめようとするデリックに、カッシェが眉を顰めた。


「おい、今日の今日って余りに急だろう。

 仕事の引き継ぎだって碌に出来んだろうが。

 それが解らないお前ではないだろう。

 何があったか知らんが、考え直せ。

 待遇の改善については考慮してもらうから」


王は、コクコクと頷いて、両手を握りしめた。


「すまなかった。連続8か月勤務休みなしを決行した余が悪かった。

 休みが一週間では足らなかったのだな。よ、よし、更に三日でどうだ」


「連続8か月勤務休みなし??お前、デリックに何させてんの? 

 いくらこいつが体力馬鹿でも嫌になるに決まっているでしょうが!」


「し、しかしだな、例の政策の反対派が随分とキナ臭くての・・・」


僅かに首をふり、苦笑いをするだけに留めたデリックに、王は更なる懺悔をする。


「これじゃないなら、あれか。

 お前の部下である女性騎士を余の側室に迎えたいと、

 お前の休暇中に、こっそり手続きを行っていることがばれたのか?」


わりと女癖が悪い王の初告白に、カッシェは目を剥いた。


「デリックの部下の女騎士って、あのステファニー・バルデミーシュ嬢か?」


「う、うむ、あの美しく冷たい視線に、あの妖艶な足が堪らなくて、つい」


王は、とんでもなく足フェチだった。

だが、デリックは、これにも首を振った。

そして、すこし砕けた様子で返事を返した。


「ああ、それはステフに相談されたので知ってる。

 そして、そのことについては、すでに王妃様に相談済みだ。

 バルデミーシュ伯もステフもその気はないそうなのでな。

 お前には残念だが、その話は私の権限で潰しておいた。

 王妃様は、知らなかったようだな。激怒してたぞ。

 今晩、お仕置きだとよ。頑張れよ」


王は自身の両手で頬を包み込んで、声にならない叫びをあげた。


「お前も懲りねえな。王妃にしっかり踏んでもらえ」


王妃も当然だが、王がほれぼれする美脚である。

現在の彼女のお気に入りは、鮫の皮を使った珍しい鞭であるらしい。


「ったく、自業自得だろ。危険なお楽しみの相手は、王妃だけにしとけ」


「まったくだ」


二人の言葉に項垂れていた王が、がばりと顔を上げた。


「ちょっと待て、話がずれてるぞ。今はデリックの退職話だ。

 その二つが理由でないなら、なんだ。

 側室との内緒のお出かけに、お前の馬を勝手に使って出かけたことか?

 お忍びでの外出先で、勝手にお前の名前でツケで飲んだことか?

 それとも、従妹姫にお前の半裸な絵姿を勝手に売った事がバレタか?

 ええい、思い当りがありすぎて、解らん。はっきり言え」


どうどうと嫌な告白がありすぎて、もはや頬を引き攣らせるしかないカッシュは、ちらりとデリックに目線を動かした。


デリックは、ふぅっとため息をつくと、王の頭にゴンっとげんこつを落とした。


「なにをこそこそやっているのかと思えば、お前はガキか」


頭を押さえて悶絶する王に、カッシュは冷たい目で王を見下ろして言った。


「なぁ、もう見放されていてもいいレベルじゃねぇ?それ」

「ああ、そうだな。もう、心置きなく去れるな」


デリックは、小さな木箱に机の上の私物を投げ入れ、蓋をきっちり締めた。


二人の冷たい言葉に、王の顔色がさぁっと白くなる。


「そ、そんな、お前が居なくなれば、余の命は風前の灯だ。

 王妃も子供達も、従妹殿も余よりお前を頼りにしておるのだ。

 どうか考え直してくれ」


「私の後任には、ギャランを据えました。どうぞお元気で」


「ギャランって、筋肉ムキムキの男色の卦があるって噂の副隊長だろ。

 選抜試合でもいつも上位入りだし、実力も確かだ。

 ふむ、わかった。後任が決まって業務に滞りがなければいいだろ」


王の顔がピキリと固まるのを横目に、

側近であるカッシュはふむふむと頷いて了承を出した。


「え?」


「お前には、ちょうどいいんじゃね、すこしは反省しろよ」


「そういえば、ギャランにこの話を持ちかけたら、舌なめずりしてましたね。

 意外に守備範囲が広いそうですよ。良かったですね」


ニコヤカに爆弾を落とすデリックに、涙目な王の背筋がぞぞぞと震えた。

頭を抱えて未来を嘆き始めた王はほっといて、

カッシュはこそっとデリックに耳打ちした。


「なぁ、実際の所、本当の理由はなんだ? 

 王には内緒にしておくから教えてくれよ。

 そうじゃないと、なんか納得いかねぇからな」


デリックもカッシュの耳元で返事を返す。


「私は、領地で私の運命を見つけた。それが理由だ。納得したか?」


思いもよらない返事に、暫く目を白黒させていたカッシュだったが、

すぐに納得するとにやりと笑って、デリックの背をバンっと叩いた。


「おう、了解した。そりゃあ、王には言えないわな。

 お前が、本腰を入れないといけないって、どんだけなんだ」


「わからん。だが、私の一生をかけても惜しくないと確信している。

 どんなことをしても、手に入れるつもりだ。

 だから、邪魔なものは、一切排除する」


つまり、王にも邪魔させるなと、デリックは釘を刺した。


「うわぉ。歴代王騎士最強の称号を持つお前が、

 そこまでしないと無理ってことか。

 そっちも了解。ま、しっかりやれよ。

 それにしても、お前がそこまでとはな。

 手ごわい相手に当たったもんだ。ご愁傷様って言っとくよ」


目の前で芋虫の様に転がって苦悩する王は任せろと、

カッシュは楽しそうに手を振った。 


「じゃあな、デリック、元気でやれよ。

 王都に出てきたときは、酒でも奢れよ」


「ああ、カッシュも王も元気で」


「ま、待て待て待て。なぜ余の事を放置して勝手に決めておるのだ。

 余の貞操が危機になるやもしれぬのだぞ。

 たのむ、デリック。余を見捨てないでぇ~」


一瞬で我に返り、涙目で縋りつく王をべりっと引きはがしたカッシェは、

王をずるずると執務室に引きずっていった。


その後、城のどこかで王の甲高い悲鳴が聞こえた気がするが、

特に命に差し障るほどでもないと判断して、もくもくと作業を進めて行った。


デリックは恐ろしい勢いで仕事を全て片付け、王の後始末という慣れた作業も済まして、翌朝、意気揚々と王都を旅立った。 


「もう私を止める事は、何人たりとも出来ない。

 待っていろ、月子。

 私は、お前を絶対に手に入れて見せる」




*********



デリックは、無事、辺境の領地に帰ってきて、領主の引き継ぎという膨大な仕事をこなしながらも、ほぼ毎日の様に、妖精の森の月子の家を訪れる。


「私が領主を継いだら、月子は領主夫人だね。

 妖精の森の管理人の仕事は代理を立てよう」


勝手な事を言うデリックに、月子の冷たい目は変わらない。


「結婚しないから、代理も必要ない」


「月子が仕事を続けたいという気持ちは解らないでもない。

 結婚後も軍部で働き続けている女性の部下もいたからね。

 まぁ、彼女は結婚自体を内内の事情で内緒にしていたのだが。

 現実問題、やはり子供が出来たら、両立は厳しい」


「いや、さっきから言ってるけど、結婚しないから。

 それに、妖精が認めないと、代理人は立てられないからね」


呆れた顔で言い返す月子に、デリックはにやりと笑う。

 

「なら、月子の子供が育ったら、そのうちの一人を代理人にすればいい。

 どうだ、いい考えだろう」


「だ~か~ら~、結婚しないっていってるでしょう!」


そんなこんなで、月子とデリックの攻防は、3年続いた。


「もう3年たったのよ。領主になったのだし、

 お見合い話も沢山きてるんでしょう。いい加減諦めたら?」


「月子、君を諦めるなど、天地がひっくり返ってもあり得ないよ。

 見合い相手がどんな相手だろうが、君以上の女性は存在しない。

 結婚しよう、月子」


月子は、はぁとため息をついた。


「いい加減三年も経つと、私が貴方の理想の女でないと、

 現実が解りそうなものでしょう。

 一目ぼれも効力が薄れる頃合いだって解ってるから、もういいんじゃない?

 甘味が欲しいなら村で買ってちょうだい。

 貴方の注文が多いようなら、大目に納品しておくから」


もうここに来るなと言わんばかりに顔を歪めている月子に、デリックは楽しそうに笑った。


「馬鹿だね、月子は。まぁ、そこも可愛いけど」


「馬鹿? なによ、随分な言い草ね」


くわっと目を剥く月子に、デリックは目を細めて微笑んだ。


「三年の間に、私が君を見初めた熱が冷めただろうと言いたいのか。

 ああ、確かに冷めただろう。だが、それがなんだ。

 この三年の間に、私は君を沢山知った。

 そして、君の好きなところを増やしていった。

 今では、星の数以上に君の好きな所が積もって、胸が苦しい程だ]


「は?」


キョトンとした月子の顔が可愛くて、デリックはちゅっと口づけた。


「ほら、そんな所も可愛い」


「な、な、何を」


顔を寄せてくるデリックの意図に、今更ながらに気が付いた月子は、

顔を真っ赤にしながら、後ずさりする。


「か、甘味目当て、だよね。今の言葉」


月子の手をさっと握って、デリックはその爪先にキスをする。


「甘味は君自身、君の一部だ、月子。

 君の全てを愛している私が、君の一部を欲するのは当然だろう」

 

男の手には月子が村で卸した、幻の妖精酒があった。


「ああ、これが君の味。素晴らしく美味だ、月子」


領主が代替わりして、デリックが地領を引き継いだ後も変わらない。

そして、人間の食べ物を食べているせいか、ちょっとふっくらしてきたが、

月子の身長も体型もあまり変わらない。

縦に伸びず、横に伸びたらしい。ちょっと切ない。


「月子、結婚しよう。そうすれば、君の体のどこもかしこもが私の物だ。

 一生離さない。誰にも渡さない。子供は5人くらい欲しいね。

 私が、手取り足取り尻取り、舐めながら教えてあげるからね」


床に落ちていた私の髪を取り上げ、ついっと舐める領主な男、デリック。


「絶対嫌。口さみしいなら、飴でも舐めてなさい」


髪の毛を取り返して、ごみ箱に捨てる。


「その小さな体に私を受け入れる時は泣くのかな。

 その涙も、とても甘いのだろうね。ああ、ぞくぞくする」


「帰れ、もう二度と来るなこの変態、ロリコン、鬼畜馬鹿」


月子は、いつもの様にデリックのお尻を蹴り、

家から追い出して庭に放置した。


その庭で、妖精の女王様達が、デリックと偶然にも鉢合わせして言った。


「ねぇ、貴方は、月子を誰よりも何よりも愛しんでくれる?

 私達妖精は、月子が大好きなの。貴方もでしょう。

こんなにも可愛く美味しいんですもの、もう絶対に手放せないわ。

 月子の幸せの為に、貴方の中に眠る妖精の力を失ってもいいっていうなら、

 貴方が月子の夫になることに協力するけど、どうする?」


妖精の魂を回収する意味もあっての提案であったのだが、

デリックは迷うことなく頷いた。


「ああ、私は、喜んで一生彼女の甘さに囚われ続けるだろう。

 彼女を失ったら、私の心も体も死んでしまう。

 女王よ、喜んでその申し出を受けよう」


満足げに頷いた女王様達に認められて、私はデリックの嫁となった。

ここに私の意見は全く必要なかったらしい。


ある日ある時ある場所で、気が付いたら、花嫁衣裳を着せられて、

デリックに手を取られ、祭壇の前で誓の言葉の真っ最中だった。


「貴方は、この男を夫とし、その生涯を添い遂げることを誓いますか?」


教会の神父様の言葉でいきなり目が覚めた私は、妖精に頬をつねられ言った。


「いはい(痛い)」


これで、誓ったことになったらしい。


且くして、妖精の森の管理人は、変態甘党領主、デリックの嫁になった。


夫となったデリックは、私付のメイドさん曰く、私を溺愛しているらしい。

だが、私からしてみると、非常にしつこく、面倒な粘着男である。


「ああ、今日も我妻は可愛く甘く愛らしい。ああ、未だに夢のようだ。

 私は、君をもう離さないよ。愛してる」


そういって、朝から晩まで文字通り、傍から離さないのだ。


「執務があるでしょ。私はここにいるから、いってらっしゃい」


隙を見て逃げようと笑顔で送り出しても、


「何を言う。私達は新婚だ。新婚は甘い生活を送るものと決まっている。

 さぁ、一緒に甘く素晴らしい時を過ごそう、可愛い人」


そういって、ひょいっと私を持ち上げて膝の上。

必死で抵抗しても、笑いながら可愛い可愛いと抱きしめられて、

時にキュと意識が落ちるを幾度となく繰り返した。

そうこうしてたら、逃げる事を諦めた。


デリックは、仕事をしながら、私の髪を撫で、

手を握り、肩を抱きしめ、首や頬を舐める。


「ああ、なんて甘いんだろう貴方は。私の愛を受けて、もっと甘くなっておくれ」


そういって、舐めたり噛んだり齧ったりで、一日の最後はベッドで泣かされて、

頬が涎でべとべとになった。

私だって、前世をもつ自称立派な大人だ。

我が夫は、頭が新婚という言葉で緩くなっているのだろうと考えて、耐えた。

新婚生活3か月、5か月、1年、3年。長いわ!


もはや新婚といえない時間を過ごしているのに、夫の態度は変わらない。

それどころか、益々激しくなり、私は息絶え絶え。


子供でも出来れば落ち着くかと思い、夫に相談すると、大感激。

これでやっと妖精の魂が回収できると妖精達も大興奮。


あれ?


更にしつこく愛され、体力のない私はベッドから出られない体にされた。

後で思い出したが、デリックは騎士という名の体力お化けであった。

私は、朝まで泣かされ、起きたら夕方。

夕食を一緒に食べたら、またベッドに逆戻り。

デリックは大層ご機嫌で、めきめきと執務と訓練に勤しんでいるらしい。

私は、反対にヘロヘロ、ヨロヨロ、腰痛い。

誰だ、子供を作ろうだなんて考えた奴。私か。


最初に出来た子供は妖精の魂として回収されたが、

私はデリックとの間に更に3男3女をもうけ、

男と共に、甘々でペロペロな日々を送った。もうふやける。


なんだかんだと言っても、子供は可愛いし、夫は何時も優しく逞しい。

外見も中身も夫に良く似た子供達は、王都で騎士になったり、学者になったり、

宰相補佐官になったり、はたまた、大商人の嫁に乞われたり、

会社を興したりと、毎日楽しそうに過ごしている。

そんな子供達は、見目麗しいだけでなく、才気あふれる人材だと、

内外共に評価が高い。つまり、大変モテた。

いつもラブレターとプレゼントの山である。

うん、羨ましい限りである。


子供達は、私達の結婚生活を見て、

結婚相手を探すときは、まず舐めてみることを家訓としたとか。

そんな家訓は、焼いて滅ぼしてしまえと思うが、

意外にいい感じで伴侶を得ていた。

解せぬ。


一番下の末娘、アリスだけは不幸にも私に似たらしく、

成人間近なのに、どこもかしこもサイズが平均より一回り小さい。

まぁ、私の方がもっと小さいけど。

だが、子ウサギのようだと兄弟姉妹父親からの溺愛具合が酷い。

ちなみにちょっとだけこの子も甘いのは、家族だけの秘密。


あ、末娘アリスの甘さは、キャラメル風味。

多分、お腹の中に居た時に、どうしてもキャラメルが食べたくて、

試行錯誤して掌で出来ちゃったキャラメルもどきを、

誰にも言わないで毎日こっそり食べていたせいだと思われる。

私のせいだね。

ちなみに、アリスの髪と瞳は、綺麗なキャラメル色です。


アリスの体液は、香ばしくて癖になる味と評判で、

お蔭で幼少の頃より妖精に懐かれた上、家族の溺愛マックスで、

何一つ自由に出来ないと、日々嘆いている可哀想な娘である。

解る、お母さんは解るよ。


余りに娘が可愛そうなので、夫と子供達を、私発明の甘いジャガイモ(さつまいもは無理だった)を使った料理長自信の新作スイーツで籠絡し、あの手この手で説得し、遂には王都の女学校になんとか三年間だけと送り出したら、なんとびっくり。


末娘アリスは、在学中に甘党な王子様を引っ掛けてきたらしく、

気が付けば第二王子に嫁入りとなったりした。

第二王子は文武に優れ、外交を一手に担うヤリ手婆垂涎の出来る男らしい。

アリス曰く、あの手この手で絡め取られ、

気が付いたら婚約に頷いていたらしい。

まぁ、表情を見る限りは相思相愛なので、私はいいとした。


だが、夫と子供達は、悔し涙にハンカチを噛み千切り、

呪いの言葉と木刀を裏山の木々に滔々と叩きつけていた。

裏の山が段々禿山になってきている気がする。


特に、我が夫は荒れに荒れて、とても大変だった。主に私が。


「もう私には君だけだ。どうか私を慰めておくれ、愛しい我妻よ。

 傷ついたこの心が穏やかになるまで、君を存分に味いたい」


そういって何時もよりも早い時間に押し倒された。

今では領主夫人として、私もそれなりにすることがあるし、

昼日中からそれはちょっとと言葉を濁すと、


「ああ、あの時、娘にも友人をと、

 君に甘く優しく説得されたのが間違いだった。

 アリスを王都になど出さなければ」


なんていって私からの抵抗をあっさり奪った。更には、


「もう一人、アリスのような可愛い娘を今からつくろう。そうしよう」


そういって、朝から晩まで甘く切なく求められ、

激しく攻められ、私はまたもや腰砕け。

なんでこの夫は、こうも元気なのだろうか。

もうじき、夫の願望が本当になりそうな気がする。


晴れた秋の日に、アリスと王子の結婚式が行われた。

列席する王族や辺境伯や高貴な身分のお貴族様達の前を、

アリスと第二王子が静々と進んでいき、司祭の前で結婚の誓が行われた。

プリンセスラインの薄ピンクなドレスを着たアリスは、大層可愛らしい。


素敵な結婚式だったと、概ね評判が良くて、ほっとして家族を振り返ったら、

夫も子供達も滂沱の涙を流していた。

感動の涙なのかと思いきや、悔し涙だったらしい。


挨拶に訪れた新郎新婦に向かって、夫はにやりと笑った。


「新たなる門出を迎える娘夫婦に、父として贈り物を用意した」


王子に気に入らない事をされたら、すぐに知らせろと、

伝言鳩ならぬ、伝言妖精便を娘の新居に設置したらしい。

夫と子供達が、妖精女王に頼んだそうだ。

女王様、面白い事大好きだから。


家族は、連絡したらマッハで迎えに行くからと、

大泣きしながら娘を取り囲んだ。娘の顔が盛大に引き攣っている。

ちなみに、妖精が術を施した赤いポストは取り壊し不可らしい。

ドラゴンが乗っても壊れないって。

え? この世界にドラゴンもいるの?


第二王子は顔を引き攣らせながらも、

何があっても娘を大事にすると私達に誓ってくれた。

序に、その誓の場で、誓の妖精が頭上で粉を盛大に撒いていた。

ねぇ、その粉って、誓を破ったら死んじゃうってやつじゃなかった?

本当に大丈夫?

・・・娘が幸せなら何でもない事なので、まぁいいか。


そんなこんなで、騒がしくも甘くて楽しい日々を送ってます。

普通の異世界転生生活は送れなかったけど、こんな甘々な人生も悪くない。



落書きのように一度に書いたので、誤字脱字があるかもしれません。

ごめんなさい。

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