90話 いざ、風呂へ
男4人が男湯へ向かう一方で、女7人は女湯を向かう。と、次の瞬間、彼女たちの方へ浩平が向かい始めるではないか。それを俺は見逃さず、その肩を鷲掴む。
「おい、待て。どこに行く気だ?」
と聞けば、彼は
「ちょっとトイレへ...。だから、離してくれ。ここで漏らしても良いのか?」
と下らない嘘を付き始める。第一、トイレは反対側である。
「下らない嘘つくんじゃねぇよ。どうせ覗きにいく気だったんだろ?トイレあっちだし。」
俺がそう言ってやると、
「おい、浩平!抜け駆けしてお前だけ女の裸覗けこうとして、ただで済む思うなよ!」
と圭吾がたたみかける。
「なっ!?ま、学!お前は味方してくれるよなぁ?」
浩平が助けを求めるも、学から放たれたのは酷く冷淡な言葉である。
「僕は幼女にしか興味ないから同情できないよ。だからって、邪魔もしないけどぉ。」
「おぉぉぉっっっ!やっぱ、持つべきはロリコンだなっ!」
感激する浩平は何の悪気も無く言うのだが、そこで学の中の何かがプツンッと切れた。
「正一くん、圭吾くん手伝うよ。」
「おー、サンキュー!じゃあ、とりあえず奴の身動きを封じてくれ。」
「オーケー!」
俺の言葉に学は頼もしい返事をする。
「おっ、おいっ、学!お前は中立だったばすだろ!!!」
「気が変わったんだよ。」
「笑顔で言うなぁっー、頼むからぁ。」
俺はそんなやり取りに内心爆笑し、変わって圭吾が
「そのまま、引きずって風呂の中へ!」
「了解だよ。」
「了解してんじゃねぇ!おい、止めろ!俺にはやるべきことがあるんだぁぁぁっっっ!」
引きずられながら叫ぶ浩平。まさに、コントである。
「高3にもなって馬鹿なことしてるわねぇ。」
その様を遠目で見つつ栞がそんなことを呟いた。傍らの鈴本さんに五十嵐さんも
「えぇ、ホントに。あれ、私の彼氏よ?」
「そうですねぇ。あんなのが...」
そこへ悪魔の囁きが聞こえてくる。
「別れちまえばぁ?」
主は例の黒ギャル桔梗さん。が、そんなものに惑わされる彼女たちではない。
「ちょっと、雫!そんなこと簡単に言わないで!」
「そうですよ。」
と即返し、桔梗さんの方は
「ちぇー、冗談だってー」
と少し怪訝そうな顔をして見せた。
「先輩同士が別れたなら私が貰いますよぉ?」
「七奈美ちゃん、あなたもよ?」
伊能は言うが、鈴本さまの恐ろしい笑顔の圧力にはどうすることもできない。彼女はさっさと
「はい。」
と言ってしまった。
「お姉ちゃんたち、お風呂まだ行かないのぉ?」
そこで浩平妹が口を開いた。その言葉に皆の会話は止み、五十嵐さんは
「今から一緒にね。」
と言って五十嵐さんは2人で先に入っていった。
それに続き、他の5人も続く。
「沙耶香ちゃんとの揉み合い、楽しみですわ~!」
「そんなこと、させないわよ。」
「じゃあ、私が。」
「雫も同じよ。」
百合っ気たっぷりなやり取りを響かせながら。




