82話 海水浴
強く日が差す夏の青空の中、少年少女ら11人が横に並んで走り、並木道を進む。向かう先は東京湾に面する砂浜。彼らは、
「海だぁぁぁっっっ。」
「おい、ちょっと待てよ。それはまだ早いぞ!」
「せっかくの計画が無駄になってしまった気分だわ。」
「そんなことより、もうすぐだぞぉっ!」
「あんたたちうるさいわよ!黙ってなさいよ!」
と会話を交わしている。
その末、海水浴場のある砂浜の前で彼らは上に飛ぶ。そんな少年少女らは
「海だーーー!」
と叫ぶ。彼らにとって、と言うよりはその内に男4人にとってそれは初めてであり、あまり無いご縁であった。
「って、言うのをやってみたいんだ。」
そんな話を横に座る浩平が締める。そこへ、後ろから圭吾に学にが、
「俺もやりたいぜ。そんな縁なんて滅多に無いからな!」
「僕も幼女がやってくるなら是非やりたいな。」
(圭吾の言い分に賛成だが、学は何を言ってるんだ?)
そう思った俺は、
「『海だーーー!』をやるだげで幼女がやってくる人生なんて楽しいか?て言うか、お前の趣味とかどうでも良いんだが。」
と澄まし顔で言ってやる。
「えー、井上くん酷くなーい?」
と、そう言う学。
「うんうん、井上の言う通りだ。」
「ちなみに、俺は幼女に興味はないぞ。俺が興味あるのは年上で、それでいてお若いお嬢さんだ。」
「ちょっとあんたたち、ここはバスの中よ。公共の場なんだからもっと自重しなさいよ。それに、迷惑だからもっと声のトーンを下げなさい。」
そこに五十嵐さんが口を挟む。
俺たち4人はそれぞれに思う。
(お、大人だ...。)
(流石、俺の慎耶香だ!大人びている...。)
(あのお嬢さん、浩平の奴の女だったら手を出していたところだぜ。危ない、危ない。)
(へっ、僕はああいうババアには興味ないね。まぁ、合法なのは確かだけどー。)
俺は感心し、浩平は無礼と感心がない混ぜになり、圭吾は変態、学は隅から隅まで失礼。そんな中、俺はさらに思う。
(そう言えばあの5人は何してるかな?)
もう1つのバスに思いを馳せて。
その頃、それを知る由も無い鈴本さん、桔梗さん、立花さん、伊能、栞の方も楽しく会話をしていた。
「沙耶香ちゃんはどんな水着を買いましたの?」
立花さんが聞くと鈴本さんは
「私は白いフリルの水着を買ったわよ。」
「良いですわねぇ。私は黒のビキニですわ。」
「ふーん、沙耶香はフリルなんだぁ。」
「何よ雫。」
「なーんでも。」
さらに、その会話の中で栞が白のビキニ、伊能が赤の紐と大胆な代物であることも判明する。
そうやって、2つのバスは町を抜け、海の見える坂道に出る。俺の方でも鈴本さんの方でもその光景に皆が目を輝かせる。その先には日の光を浴びて細波が遠くからでも目に映る美しい海があった。




