65話 修学旅行の始まり
6月上旬。梅雨入りが近付く、この季節。俺たちの修学旅行は始まった。高校では珍しい第3学年でこ修学旅行である。
行き先は京都。定番中の定番である。俺たち3年生は学校のグラウンドに一度集まり、それから上野駅に進み、東京行きの電車に搭乗。東京を降りた後は改札を通り、博多方面の新幹線に乗って京都へと出発した。
横には浩平、前の2席には圭吾と学。横の3席には窓側から、栞、桔梗さん、鈴本さん。俺は窓側の席である。
「なぁ、浩平。」
「なんだ?」
「3日目の自由行動どこ行く?」
そう聞くと、浩平は
「そうだな。それは、圭吾と学も入れて話をするか。」
と言って、圭吾と学に席を回させた。
「それで、どこ行く?」
2人がこちらに席を向け終わったのを確認した後、俺はみんなに聞いた。俺と浩平、圭吾、学。この4人が今回の修学旅行の行動班である。
「やっぱ、鹿苑寺緊縛だよなぁ。ハッハッハッ!」
浩平がわざとらしく笑う。
「お前、今のわざとだな。」
俺はツッコミを入れる。
「俺は木屋町通りだなぁ。ナンパするも良し、ナンパされるも良しの場所だろ、あそこ?」
「強ち間違って無いけど、京都府民の方々に謝って!」
次は圭吾にツッコミ。
「僕は可愛らしい幼女がいればどこでも良いよ。」
「『お前たちがいればどこでも良い』みたいなテンションで言うなよ。」
最後に学へツッコミ。
(こいつ、幼女に強制性交とかして、捕まったりしないよな?)
3人揃ってとても心配であった。
そこで、「良い日旅立ち」が流れた後、
「まもなく、新横浜です。横浜線はお乗り換えです。今日も新幹線をご利用くださいまして、ありがとうございます。新横浜を出ますと次は名古屋に止まります。」
と車内アナウンスが聞こえてて来た。俺は前にもここへ来たことがある。高2最後の1ヶ月。外の景色を眺めながら、俺は鈴本さんと始めてキスをしたあの日のことを思い出していた。
そんな思いに更けっていると、新幹線は新横浜を出発し、その景色はすぐに後ろへと流れ去って行き、一瞬にして見えなくなった。俺は窓から目を離し、浩平たちとの話に戻った。
名古屋に向かう途中、俺たちの乗る新幹線は富士山の前を通った。もちろん、日本の西の方へ行ったことの無い俺たちにとっては始めての、目と鼻の先に見る生富士山である。
「おおっー!遠くから見るよりも、ずっと綺麗だな!」
浩平が言う。本当にその通りである。頂上付近に被る純白の雪。山が織り成す大きく美しい円錐形。俺たちはさの美麗さにしばらく見とれてしまっていた。
そして、名古屋に到着。さすがは東京に次ぐ大都市。東京に勝るとも劣らない高層ビル群がパッと目に入ってきた。駅の近くにはガラス張りの建物も一杯ある。そんなことなど都会人の俺達にとっては何ら珍しくないはずなのだが、何故か新鮮さを感じてしまう。中でも、捻れたように見えるビルはとても面白く感じた。しかも、珍しい三角フレームのガラスまで見える。
(あれはなんぞや!?)
俺は目を大きく見開いた。
それから、その驚きが消えぬまま、小1時間。俺たちの乗る新幹線は目的地の京都に到着した。同級生が次々とホームへと出ていく中、俺たちも先生の指示でホームに出、階段を降り、改札を出た。
京都タワーが目に入る。俺たちはそこの階段裏で集合し、先生の話の後、1日目目的地の西陣織教室行きバスに乗った。ついに、俺たちの修学旅行は幕を開けたのである。




