63話 王様ゲーム(後編)
ガールズラブ要素があります。苦手な方はご注意ください。
「1番が3番にこれだ!」
王様になった圭吾がパッキーの箱を振る。箱がカシャカシャと音が鳴る。
「おー、定番中の定番だねぇ。」
「定番、定番。」
「井上くんが相手じゃない限りすぐ折ってやるわ。」
「私だって正一が相手じゃなかったらぶん殴るし。」
「私も私もー。」
「そのままの勢いで舌も入れちゃいます!」
女子たちがそんなことを言うが、1番も3番も俺たちの中には無い。
「あっ、私1番ですわぁ。」
立花さんがそう言ってAのカードを見せてくる。
「わ、私3番。」
そう恥じらいながら言ったのは栞だ。
(何か新鮮で良いかも...。むしろ、このまま「しおさゆ」しか「さゆしお」で頼む。「さやさゆ」「さゆさや」は何か辛い。仮にも鈴本さんと付き合っているんだし。て言うか、栞って女の子同士は恥ずかしいのかっ!?)
「何興奮してるのかしら?」
鈴本さんにそう聞かれて、
「あっ!いや別にっ。」
と繕う。彼女はしばし疑りの視線を止めなかった、やがて諦めてくれたようだ。彼女が「そう言う趣味なのね」と小声で言ったような気がしたのは多分、空耳だろう。
チュッ。唇と唇が触れ合う音が鳴った。満更でも無い顔の立花さん。顔を赤くして黙り込む栞。受ける側だけが妙に意識してしまう。
(俺の大好きなシュチュだぁ。事後にお互いに意識も捨てがたいけどもさぁ。)
俺は鼻血を鼻を啜って吸い戻した。だが、幸せそうな顔は隠せなかったらしい。みんなに少し引かれた。
続いて、俺がついに王様となった。既に指令は考えてあった。俺は言う。
「5番が愛を叫ぶ!」
すると、学の瞼がピクリと動いた。
(何か、嫌な予感が...。)
そして、学は5のトランプを机に叩き付け、
「ロリが好きだっーーーーー!愛してるっーーーーー!」
(ハハハ...思った通りだぜ。)
俺と浩平と圭吾が後ろへ引く。女子に至っては伊能以外がゴミを見る目で彼を見ていた。
(ほーら、どうするよこの空気。俺のせいでもあるけど。)
「6番が自虐的発狂をしながら床に10回頭を叩き付けてもらおうかな。」
次に王様となった桔梗さんがそう言う。
(さ、流石桔梗さん。半端ねぇ。)
そして、6番は浩平である。彼はため息をつき、少し間を置いて、床に頭を叩き付け始めた。
「俺のバカ!バカ!バカ!バカ!バカ!なんで、まだ童貞なんだよ!俺がヘタレだからか?あっー!」
と自虐的発狂をしながら。
(こ、これは下手なホラー映画よりも怖い。)
それから、色々な指令が出された。「5番が8番の胸を揉む」や「7番がセクシーポーズ」など少しエロい指令もあれば、「4番が缶ジュースを一気のみ」や「1番が中二病っぽく名乗る」など普通の指令もあった。だが、エロい指令を受けたのは大体が女の子同士で、赤面や吐息、喘ぎ声なども時折聞こえてきた。18禁まではいかないが、15禁は確実であろう。
もちろん、俺は興奮しっぱないしだ。もう鼻血を隠すこともなく、ほとんどずっとしたたらせ、肌を伝わせていた。そのせいか、解散の頃にはあたりも少し色褪せて見えた。少しめまいもして栞にぶつかってしまった。
「大丈夫?」
と心配され、俺は
「大丈夫。軽い貧血だから。」
またクラッと来た。
それを見て、栞が
「肩貸すわよ。」
と言ってくれた。
「でも、悪いよ。」
と言うが、彼女は聞いてくれもしない。無理矢理肩に手を置かされた。さらに横から鈴本さんにも同じことをされた。
こうして、俺は浩平の家を去った。圭吾と学、立花さん、伊能、はそれぞれ違う方向へ帰り、俺に着いてきたのは鈴本さんと栞と桔梗さんの3人。男女比率1:3と言うハーレム状態か、もしくはその一歩手前かであった。




