62話 王様ゲーム(前編)
「こちら、第3学年の修学旅行に関する企画書と資料です。」
伊能が恐怖で少し震えながら、資料の山にそれを追加する。
(そう言えば、もうすぐ修学旅行だな。)
俺は少し先のその行事に思いを馳せる。
その一方、鈴本さんは、
「ありがとう。」
とさっきまでが嘘かのように、穏やかにお礼を言って、すぐにキーボード打ちに戻る。
そして、そんな作業が約1時間。その間、鈴本さんと伊能以外全員でアニメの話やお互いの趣味を話し合った。一方の鈴本さんと伊能は生徒会の仕事。
その仕事も終わり、彼女たちも雑談に入って来た。そこで、伊能が
「王様ゲームをしましょう!せーんぱい!」
と手を挙げた。すると、浩平と圭吾と学の目が輝く。さらに、
「king games!king games!king games!king games!king games!」
と5回の唱和。その後、トランプを持ってきて机に置く。それから、
「私も参加するけど、エッチな指令出したら...わかってるわねぇ?」
と鈴本さん。
「お、おう!」
浩平がグッドポーズ。
「あ、当たり前だろ!」
続いて、圭吾もグッドポーズ。
「僕はロリ以外にエロを求めないねー!」
さらに、学もグッドポーズ。
(こいつら、本当に分かってんのか...。もし、エロい指令なんか出したら、鈴本さんに殺されるぞ。)
「て言うか、お前らは羞恥心を持てっ!」
俺は目を細めて、そう言ってやる。彼らは少し黙るが、すぐ目をそらして、盛大にスルーされてしまう。
「と、言うわけでこれより王様ゲームを始める!」
浩平が言うと、次いで圭吾の一言。
「ルールは簡単!エロい指令は無しっ!軽い方のキスはおk!パイもみはおk!拒否権は無い!」
さらに、学。
「この9枚のトランプは13と1~8!13の人は王様!指令が出来る!そして、1~8はその指令を受ける!トランプの番号がそれぞれの番号を表す!だが、僕はロリ以外興味なっーし!」
(一番羞恥心を持つべきはお前だ!学!)
こうして、王様ゲームが始まる。初めの王様は浩平。俺は4番。浩平が言った。
「6番が4番にデ・コ・ピ・ン!」
(いきなりいかがわしい指令は出さないんだな。良かった...まだ理性があって...。一安心。)
僕は安堵のため息をつく。
が、別のことでその安心は消え去った。なんと、6番は桔梗さん。つまり、4番の俺が桔梗さんのデコピンを食らう。そう思うと、身震いがした。そこへ、
「それじゃぁ、井上くーん...。」
と桔梗さん。
「はいっ...!」
俺は恐怖で背筋がピンとなる。
「覚悟しろよ?」
急にマジの声になる桔梗さん。全身に恐怖が走る。
そして、構えの状態へ。俺は腹をくくり、目を瞑る。その瞬間、デコピンが打ち出された。
バチンッ!デコピンにあるまじき凄い音がした。あまりの強烈さに俺は勢いよく床に叩きつけられる。その痛さはほとんど感じなかった。ただただ額にピンポイントな痛みが残るだけであった。




