60話 御神籤
そして、原宿。全く原宿駅まで電車に乗っていけば良いものを、浩平が東京の中心部の様子を見てみたいと言うことで新宿駅から歩くこととなった。
「なぁ、浩平。わざわざ新宿から歩く必要は無いんじゃねぇか?」
4人で歩道を歩きながら、俺は浩平に聞いた。すると、
「だから、東京の中心部を見たいって言っただろ?」
と返される。確かにそうだが、上野でも負けず劣らずの様子のばすだ。試しにそう言ってやると、
「お前、分かってねぇなぁ。東京の町並みってのは、上野の域を越してんだよ!」
と返された。
俺はあまり人混みが得意では無い。圭吾や学に関してはあまりの人混みにもう目が死んでしまっている。そんな中、一際目立つのは浩平の目。1人だけその目に飛び切りの輝きがある。
「いや、お前な...。」
俺は目を細めつつも、これ以上言っても無駄だと諦めた。
「まぁ、良いけどさ...。」
とそこでカップルが手を繋いで目の前に現れた。その瞬間、俺たちは4人して縦に並んだ。間の距離も開けて。
何をする気かと言うと、あのリア充の間を通過する気なのである。俺と浩平も端から見ればリア充なのだが、こんな公衆の面前でイチャラブはしない。俺たち4人の間は例外であるが。
そんなこんなでわざと時間差で4人がリア充の間を通過する。まず、浩平が通り、再び手が繋がれる。その瞬間、俺が通り、三度手が繋がれる。他の2人も同じように通過し、繋ぐ離されるをもう二度ほど繰り返した。
そして、原宿に辿り着くと、アニメグッズを買い占め、本屋で好きな本を沢山買い、ゲーム屋でゲームも少し買った。俺たちはそうやって原宿を巡り、そのまま、ひとまずそこから代々木へ電車で向かった。
そして、出発から20分程が経ち、代々木駅から飯田橋駅へ。そこから、徒歩で東京大神宮に辿り着いた。流石縁結びのご利益があることもあってカップルが沢山湧いていた。
それから手水を終わらせた俺たちは、大神宮の奥へと奥へと進んでいき、とりあえず御賽銭箱に10円を投げ入れ、上にある鈴の音を奏でる。さらに、二礼二拍手のあと俺と浩平は良縁を、圭吾と学は縁結びを願う。そして、最後に一礼。
その後、俺たちは恋みくじをしにいった。そこには、リア充もいれば、非リアもいる。それぞれが、それぞれの目的で列に並んでいる。俺たち4人はその最後尾に浩平、俺、学、圭吾の順番で並んだ。
それから、俺たちは順番に引いていき、4人とも引き終わると見せ合った。
「さぁて、俺たちの恋愛運はー?」
浩平が良い、圭吾と学が
「ドュールルルルル...」
「バンッ!」
と効果音を声で表す。
まず、開くのは浩平。結果は吉。「絶縁の可能性無しとは言えぬが、諦めず相手を思い続けよ」とある。続いて、開くのは俺。結果は大吉。「絶縁の可能性無しではあるが、有頂天なれば報いを受けし」とある。その後、開くのは圭吾。結果は凶。「縁有りしも、その縁いと脆きことこの他なし」とある。そして、最後は学。結果は大凶。「ほぼ縁無きと思いて、期待を捨てよ」とある。
俺は財布に大事にしまう。一方、浩平はなんと口に含んでいた。主への反感を丸出しにムシャムシャ頬張りながら、
「口の中に広がるほのかな木の香りと、わずかに感じるインクの渋味!噛むごとに滲み出るシンプルな紙本来の味!それらの絶妙なハーモニー!これは、まるで斬新な味の宝石箱やー!」
(なんで、そんな地味に上手い食リポしてのっー!?て言うか、そこまでか!)
俺は口を大きく開ける。
さらに、圭吾と学。
「紙焼きじゃー!紙焼きにするのじゃー!」
「僕の大好きなロリはいないのかなー!?」
発狂している。恥ずかしいので、俺と浩平は他人の振りをした。
(御神籤を紙焼きにするって...。それ、お前らの仕事じゃなーい!)
俺はそんな思いで、
「そこ書いてあること全部本当だぞー。こっちに帰ってこーい!」
と言ってやった。すると、
「そうだよな。」
「そうだよねー。」
一瞬にして現実に帰り、かなり落ち込んだ。
(お前らメンタル弱すぎー!)
こうして、俺たちの大神宮参拝は終わり、地下鉄1本で上野御徒町まで行き、そこからタクシーを捕まえて、上野駅へ到着。そこで俺たちは解散した。
そして、俺たちがそれぞれの家に着く。その頃にはもう、太陽が燃えるように赤い光を発しながら、西の空に傾いていた。もう、すっかり夕方となってしまったのである。




