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非リアの俺が学年一の美少女と付き合っちゃった話  作者: プリンアラモード
5章 最後の1年
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57話 五十嵐発案の作戦

残酷な描写が含まれますので、苦手な方はご注意ください。

ひとまず、俺は五十嵐さんの元を離れ、目の前のベンチに座った。そして、浩平は少し先の木の下へ、五十嵐さんは女児を連れて公園の奥の方へと歩いていった。

 その公園の奥は魔法でも掛かっているのかと思う程、滅多に人目に着かない。そんな良からぬことに巻き込まれそうな場所に行くのが、普通の女子なら俺か浩平が止めようとしているだろう。

(その普通の女子のほとんどが話せない相手だと言うことは別問題だ。うん、別問題。)

俺はコクコクとうなずいて、自らのコミュ障に無理矢理、背を向けた。

 そんな場所に五十嵐さんが行くのを止めなかったのはもちろん彼女が普通の女子じゃないからだ。あれは精神的攻撃と肉体的攻撃のコンボを組めるタイプの女子だ。言っては悪いが、鈴本さんが出きるのは精神的攻撃だけ。伊能やら立花さんやらを止める必要があるのは言うもでもない。一方で、五十嵐さんと似た部類には俺の知る限り2人いる。

 それは、幼馴染みの栞と黒ギャルの桔梗さん。栞は確かに精神的攻撃も肉体的攻撃も出来るが、肉体的攻撃に関しては少し力強さに欠ける。桔梗さんに関しては精神的攻撃から見ても、肉体的攻撃から見ても申し分なく、止める必要などどこにも無い。

 そして、俺の前を学が通りかかり、

「あっ、井上くん!」

と話かけられた。俺はあの

「よっ!」

と片手を上げて返す。すると、

「ねぇ、井上くん!この公園に可愛いロリっ娘来なかった?ハァ...ハァ...。」

学は興奮気味に来たので、浩平のいる方向を指差した。

 それを聞いて、

「ありがとう。」

と言って、去っていった。そして、次の場所。浩平のいる場所のさらに先の街灯の下へと茂みの裏から移動した。

 それから、約5分。浩平から「あっち」と今、僕のいる場所を

教えて貰った学がやって来て、

「また、会ったね。さっきのロリっ娘の件なんだけど、もう一度聞いていい?ハァ...ハァ...。」

疑っている様子も微塵もなく、さっきと同じく興奮気味で学は聞いてくる。俺は少し先のベンチの方を指差した。そこが、浩平の次の位置である。

 と、こんな風に俺は浩平のいる方向を指差し、浩平は俺のいる方向を指差すを交互に繰り返すことで、五十嵐さんと女児のいる公園奥へと誘い込んだ。この裏に僕と浩平の移動があることは学には知るよしも無い。

(学の奴、一度も疑わなかったな。あいつって「渡る世間に鬼はなし」を派だっけか?友達なら絶対に信用すると?なら俺は対照的だな。)

「人を見たら泥棒と思え」派の友達ですら時に信用出来ない俺はそう疑問に思った。最近、ましになっては来ているが、俺は幼少期からの重度人間不信なのである。

 そして、学がついに女児を見つけた。俺たちは既に公園奥の茂みの中へと移動して、事の始終を見守ると決めて

「そこのロリっ娘ぉぉぉぉぉっっっっっ!僕は学って言うんだけど、君はぁぁぁぁぁ!?」

そんな浩平を見て、女児は

「キャァァァァァッッッッッ!」

と叫ぶ。

(まだ小さいのに中々の演技力だな。)

俺は少し感心してそれを見ていた。

 その瞬間、茂みから五十嵐さんが飛び出した。

「どうしたの?」

彼女は女児と目線を合わせる。女児は

「あのね、あそこのお兄ちゃんにストーカーされているの。」

と学を指差しながら、顔を青くして、ガクガクと震える演技をする。すると、五十嵐さんは立ち上がり、

「ほほーう。」

と指の関節をポキポキと鳴らせて、彼の前に立ち塞がる。

 学は急ブレーキをかけ、

「あなた誰ですか?賞味期限切れのババァには興味ないので、そこを退けてくれますか?あと、その癖ロリ体型なのもやめてくれますか?ババァの面して、貧乳なんかあり得ませんよ。」

と言う。俺たちは口をポカンと開けて呆然とした。同時に彼の人生が終わると確信した。重度のロリコンである学はロリ以外の女子などゴミに等しいと言う感性をお持ちのようで、その事が災いし、五十嵐さんの怒りは偽物から本物へと変化を遂げた。

 それから、悲鳴を上げる間抵抗する余裕ももなく、学は五十嵐何度も殴られ、何度も蹴られされてしまう。俺たちはその様子に背筋を凍らせながらも、唖然としつつ、口元に片手を添える。女児も顔を青くして、ガクガクと震えている。もちろん、これは五十嵐さんに対する物で、彼女は演技などでは無く、本気で恐怖心を抱いている。

 そんなこんなで、学はついに力尽き、地面に横たわる。要するに、気絶である。

 「ふぅ...。」

そして、事後の五十嵐さんはまだ固まっていない学の鮮血が着いた手で、あたかも畑仕事の後であるかのように、汗を拭った。それから、ティッシュで手の鮮血を拭き取り、靴の血痕のついている部分を切り取ってアンティークにする。しかも、全然不自然じゃない。

(か、完全犯罪だ...。てか、めっちゃ、器用だな。)

俺はその様子に震えながらも、少しの関心も持ってしまった。

 次に五十嵐さんは119番に電話をかけて救急車を呼び、それが着けば救急隊員の手助けをし、最終的には救急車に同乗したのである。

(何と言うマッチポンプ...。)

俺はさっきよりもさらに呆然とし、浩平までもが呆れ顔になっていた。

 こうして、学は全治2週間の結構な重傷を負い、俺と浩平は何度も見舞いに行った。共犯者としてマッチポンプだと学に言われるかと思ったが、そんなことは無かった。これが、俺たちの人間不信をさらに抑えた。

 これは後から知った話だが、あの後、五十嵐さんは、

「先日の件なんですが、侮辱されて腹が立ったので、殴ってしまったんです。すみません。」

と正直に交番へ言いに行ったそうだ。彼女に反省の色が見えたのでお巡りさん達は補導で済ませたと言う。とは言え、傷害を起こしたことに代わりは無いので、彼女は大学から1ヵ月の停学処分を言い渡され、その間は浩平の家で同居していたらしい。

 そのことを浩平から聞き終えた瞬間、俺は

(本当に反省してんのか?あの人?)

と呆れながらも、一時的ではあるが同棲が出来た彼に対して、「俺も鈴本さんもそうなのが出来たらな」と羨みながらも、「お前だけ良い気しやがって」と嫉妬した。

 そんな俺の理想は、彼のようなリア充なのである。だが、俺と鈴本さんはお互いに素直になれないせいか、俺たちはリア充出来ないのである。

(そうだ!そうに決まっている!)

俺は自分が悪いと言う事に目を背けつつ、自らの主観的見解を無理矢理、自分に押し付けた。


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