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非リアの俺が学年一の美少女と付き合っちゃった話  作者: プリンアラモード
5章 最後の1年
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56話 犯人はやはりあの男

 「助けてよ、お兄さん!お姉さん!」

涙目で上目遣いをする女児に俺たちは胸を打たれた。と言うより、心を奪われた。

(この笑顔...守りたい!)

俺は浩平と顔を見合わせて頷いた。五十嵐も同じく、

「わかったわ。私たちに任せなさい!」

と承諾した。

 「さぁて...。こんなちっちゃい子を困らせたんだし、見つけたらただじゃ置かないわよ。」

五十嵐さんは眉にシワを寄せ、薄ら笑いを浮かべ、さらに、右手に拳を握り、それを左手で強く揉んだ。指の関節がポキポキと鳴った。

(怖い怖い。五十嵐さん、怖い!何でそんな暴君みたいなこと出来るの?)

俺は元の美しい顔とのギャップが激しい身震い

 「なぁ、慎耶香ぁ。」

浩平が五十嵐さんに話しかけた。

「何っ!?」

彼女はその顔のまま、こちらを振り向いた。

「あっ、認めた。」

さりげなくそう言う、彼に対して、彼女は用件を聞いた。。

「うっさいわね!で、何っ!?」

そう言われて、彼は少し後ろへ退いたものの口を開いた。

 「慎耶香...。いや、優香!そんな顔をするな!可愛い顔が台無しだろ!」

(お、お~。なかなか、カッコいいことをおっしゃいますね、え?浩平君?)

俺はそんな浩平を半ば賞賛しながらも、驚いていた。五十嵐さんの方は顔を赤くして、口をもごもごと動かしている。そこには、さっきのような面影は無く、可愛いと感じてしまう顔であった。そんな彼女がやっと放った言葉は、

「か、可愛い...な、何言ってるの!私なんか、私なんかっ!それに、あんた、今、優香って、呼び捨て...?バ、バカー!」

だった。

(あぁ、こりゃ、ツンデレって奴ですな。浩平の奴、こんなツンデレが義姉だったのか。けしからん。)

俺は幼馴染みにツンデレがいる自分を棚に上げて、彼に少し嫌悪した。

 「可愛いだろ?俺の彼女。」

浩平に耳元でそう囁かれ、黙って頷く他に無かった。と、

「何、密談なんかしてるの?『壁に耳あり障子に目あり』って知ってる?密談なんですぐバレるんだから、何言ってたのか、話なさい。」

五十嵐さんが口を挟もうとしてくる。

「こう言うところは可愛げがないんだがな。」

また、彼に耳元で囁かれ、俺は納得してコクコク頷いた。

「あー!もー!言ったそばから!」

彼女は地団駄を踏む。

 「お姉さん!お兄さんと仲良いんだね!あっ、でもお兄さんは2人だね!どういう関係なの?」

「...。」

「...。」

「...。」

女児のその言葉に俺たちは揃って言葉を失った。

(何この子!?まだ、幼いのに、何か色々なこと知ってそう!)

俺はそう思いながらも、誤解を解くべく、しゃがんで女児に説明してあげた。

「こっちのお兄さんとあっちのお姉さんは恋人って言って君のお母さんとお父さんが夫婦になる前の関係と同じ。それで、俺はそのお兄さんの友達だよ。」

と丁寧に。それなのに、女児は腑に落ちない様子だ。しかも、とんでもないことを彼女は言ったのだ。

「えぇ、歪んだ愛の物語なのかと思った~。」

(何この子!?本当に何なの!?ちょっと、親の顔が見てみたいんだけど!)

俺は愛想笑いをしようとするが、どうしても引きつってしまうのである。

 ちなみに、浩平は胸を張っており、五十嵐さんは俯きつつ赤面していた。その様子を見ながら、

(何だ?その対照的な反応は。まぁ、羨ましいけど。俺と鈴本さんもあんな風になれるのかな?)

俺は彼に不覚にも憧れを抱いてしまった。

 「まぁ、そう言うことにしてて良いよ。」

俺はとりあえず女児に助けを求めた。

「どうすんの?これ?」

と聞いてみると、2人は首を傾げた。

(役に立たん!)

「どうすんだ、これぇぇぇぇぇっっっっっ!?俺、こんな子と会話が続く気がしない!浩平も五十嵐さんもお手上げって感じだし本当にどうすんだ!?これぇっ!早くこの子の保護者...むぐっ!?」

 と、五十嵐さんが人差し指で俺の唇に優しく触れ、強制的に黙らせてきた。いや、思わず黙ってしまうが近いのだろうか。俺は頬を赤く染め、わずかだが胸が鳴り、体も少し熱くなる。口元も綻び、鼻息も顕著ではないが荒くなる。俺はその細くて指を見ながら、そんな軽い興奮状態に陥っていた。下に変化は無いが。

 それから、俺たちは木の後ろに隠れた。

(ち、近い...!)

俺は赤面をする。さらに近い浩平も流石に赤面していた。よく見れば汗も垂れている。

(五十嵐さんは確かにツンデレだけど...デレが大胆!)

俺は彼女の顔を見上げてそう思った。

 「あれぇ?ここに僕の"運命の人"が逃げて行った気がするんだけどなー?」

公園に入ってきたのは、学であった。しかも、キョロキョロと怪しい素振りを見せている。俺たちは勝手に学を被疑者に下手上げる。そして、その後の女児の言葉を決定打に彼は被告人へと進化を遂げた。

 「あの、お兄さんです!」

「やっぱりか...。」

「ったく...何してるんだ、アイツ。」

俺たちは顔を手で覆い、心底呆れたとため息をもらした。

「さぁて、あいつねぇ。たっ~ぷり、いたぶって上げるわぁ。」

五十嵐さんがまた、薄ら笑いを浮かべる。

 「もちろん、手伝って...くれるわよね?」

それから、五十嵐さんは俺たちの方に振り向いてから、作り笑いを浮かべた。それに、最後の「くれるわよね?」がとても冷たい声であった。

「は、はいっ!」

俺たちは頷くしかなかった。

(五十嵐さん、誘導尋問上手すぎ!本当に怖い!)

俺はまた彼女を見て、身震いしてしまう。

 それから、俺たちは彼女の考えた、学を懲らしめる作戦に嫌々取り掛かった。もちろん、嫌々と言うから、気が進まないことだったのである。なせなら、騙すと言う、友情を無視したやり方だったからだ。

 それでも、

「や・る・の・よ?」

と怖い顔と声色で言った五十嵐さんに逆らうことなど出来はずも無く、協力するしか無かったのである。

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