52話 本屋
「よおっし!お前ら~、買いにいくぞぉー!」
俺が圭吾、学と話していると、浩平が後ろから肩を寄せてきた。
「何を買いに行くつもりで?」
俺は2人との話を中断して、そう聞いた。
(百合漫画ゲットのチャンスだぜ!)
俺は内心、変なテンションで興奮しながらも。
そして、浩平は言った。
「察しろ!」
と。
(多分、エロ本だな。今の俺にはそんな物、興味ない。俺が求めているのは百合漫画。浩平みたいに普通の変態よりタチがやるいかもだが。)
俺は彼に言われた通り、察した。見ると、学が興奮し始めていた。
(こいつは、ちょっとベクトル違うからな。ていうか、わかりやすっ!)
俺は目を丸くして、驚いた。
「俺は女をたらしこむための本買うぜ。」
こいつも色々問題がある。圭吾と中学以来ずっと一緒の浩平によると、彼は昔からこんな奴だったらしい。女たらしのクソ野郎だったらしい。やけに簡単に想像出来る。
(イケメンな方なのにこいつがモテないのって、絶対その性格だよな。)
そう、絶対、女たらしって言う性格のせいでこいつはモテない。モテないどころか女子に相手にもされない。当然の報いだと俺は思った。
そして、放課後。最近、鈴本さんと帰ることが多くなった俺だったが、今日は仕方がない。恋人なんかより友達の方が大事だと言うクズっぷりを見せながら、俺はさっき、手を合わせて
「ごめん!今日は帰れない!」
と謝っておいた。彼女は少し怪訝そうな顔をして見せたが、しばらくすると、笑顔で
「うん!また、一緒に帰ろうね!」
と言ってくれた。
(な、何なんだ、その笑顔。ヤバい、可愛すぎる!)
俺はその様子に興奮してしまった。
「行くぞー!」
それから、浩平たちと合流した俺は、圭吾や学と一緒に、
「おー!」
と返事をした。こうして、公平はおそらくエロ本のために、俺は百合漫画のために、圭吾はたらしの本のために、そして、学はおそらくロリ主の本のために、それぞれの目的で図書館へ歩み始めた。
それから、歩くこと約10分。上野公園の横にある「上野中央図書館」に俺たちは入った。この図書館はカテゴリや要素ごとに細かく分けられているので、目当ての本を探しやすい。浩平たち、俺も含めてだが、この高校に入学してからこの図書館は行き付けだった。
浩平はやはりエロ本コーナーへ、俺は百合漫画コーナーへ、圭吾は検索機で目当ての本の場所を探しに、そして、学はやはりロリ漫画コーナーへ行った。
「さてと、初めは緩い物から買っていきますかぁ。」
俺は棚に上に並んでいる「ゆるゆりのすゝめ」を手に取った。試しに俺は開いてみる。
「お、おぉ~!」
たまたま、開いたページはまさにゆるゆりであった。それは、主人公が友達に行った「好き」の言葉で、その友達が赤面すると言うもの。初心者にぴったりな、ちょうど良い、緩さであった。
そして、俺たちはレジ近くに集まった。浩平は俺の持っている漫画を見て、
「お、お前、そういう趣味だったのか!この変態め!」
「どの口が言ってんだ!お前だってエロ本なんか買いやがって!」
「これはエロ本じゃなくて、エキサイト本なんだよなー!」
「どっちも同じじゃ!」
「まぁ、まぁ、醜い喧嘩は止めて、たらし本でも読もうぜ?」
圭吾はそう言ってその本を突き付けてくる。どうやら、仲介をしたいらしいが、逆効果だ。
「お前は黙ってろ!」
2人で声を揃えた。学も仲介しにくる。
「それより、ロリ漫画読もうよ~!」
しかし、それも逆効果であった。
「お前も黙ってろ!このロリコン!」
また、2人の声が揃った。
「まぁ、どっちもどっちてのことで!」
「あぁ!」
色々あったが、すぐに俺たちは握手をした。和解成立である。圭吾や学が、
「俺の頑張りを返してくれ!」
「僕のも返して。」
などと、ほざいているが、無理に仲介しようとしたお前たちが悪い。
俺と浩平は彼らを無視して、レジに並び、それぞれの本を買った。それに、次いで圭吾や学も本を買い、4人仲良く図書館を出た後、俺たちは家に帰っていった。




