48話 浩平の義姉
「俺、義理の姉がいるだよねー。」
「いきなりの、告白!?」
昼休み、浩平がそう言ったので、俺は驚いた。
「今何て言った!?」
俺は確認をとる。
「義理の姉がいるって言った。」
浩平は答える。
(義理の姉。義理の妹も同じだが、実の姉妹より仲が良くできる。2次元では、それが相場と決まっている。お前、リアルでそれを!)
「マジで!?それって、美人!?」
俺は動揺を隠せないまま、聞く。
「まぁ、それなりに。」
彼は曖昧に答えるが、その言葉だけで充分だ。
(義理の姉?それなりの美人!?こ、これは...!)
「最っ高じゃねぇか!」
俺は、そう言った。のを、後悔した。
浩平と彼の義姉のエピソードを聞いた瞬間、俺は
「リア充爆破しろぉ...。」
と嫌悪を表明した。美人の彼女がいるにも関わらずだ。
(えっ?彼女がいるんだから、お前もリア充だろって?何その偏見?美味しいの?)
先週末、浩平は義姉の家へ勉強を教えにもらっていったらしい。彼女は、
「で、アンタ、何で来たの?」
と、彼に言ったらしい。
(おぉ!ツンデレ属性の可能性あり!)
「いや、勉強を教えてもらおうと思いまして。」
どうやら、彼女は大学生らしく、高校時代、成績は常に学年トップだったみたいだ。しかも、よりによって、得意科目は数学と英語。みんなが、大嫌いであろう、2教科だ。
「俺、現在完了進行形とか過去完了進行形とか、ましてや、未来過去進行形だとか全く意味わかんないんだ。何となく、書き方はわかってるんだけども...。進行しているのか、完了したのか一体どっちなの?」
浩平は愛想笑いを浮かべた。
「言葉なんかに惑わされないの。こんなの、訳し方で覚えれば良いのよ。」
義姉は紙に「現在完了進行形(今までずっと)」「過去完了進行形(前までずっと)」「未来完了進行形」と書いた。
「これで、意味わかった?」
「I see.」
「良かった。」
「中3の頃、訳し方がどうだとか言ってたこと、今、思い出したわ、うん。」
「今さら?」
彼女は心底呆れたという顔をした。
「で、他にはないわけ?」
義姉が浩平に聞く。
「はい。英語は分かった。あと、数学教えて。」
彼はお願いしする。
「はぁ...アンタって本当にバカなのね。良いわよ!どんっと来なさい!」
彼女は、小さいらしい胸をポンと叩いた。
それから、浩平は義姉に数学を教えてもらったらしいが、数学に関しては、教えられても全くわからなかった。
「もう、教えるだけ無駄ね。」
彼女がそう諦めるぐらい、理解していなかった。
「じゃぁ、またな!」
「またぁ!」
「これからも、宜しくな、ぺったんこ!」
「死ね!」
浩平は、義姉のドロップキックを食らい、ドアまで吹っ飛ばされた。
「ふざけんなよ!こんの、リア充がぁぁぁぁぁ!」
俺はガチギレる。
(みんな、わかってくれるよね?この、気持ちを!)
「まぁ、そう熱くなるなって!」
「暑くなるわ!そんなもん!第一な!お前の親族は充実過ぎるんだよ!良い感じの妹がいるし、それなりに美人な義姉もいるってんだろ!?羨ましいじゃねぇかっ!」
「ていうか、お前、義姉に勉強教えてもらって、少しは賢くなったんだろうな?何様だって感じだけどさ!」
俺は聞く。浩平は、得意気に即答する。
「ハハハ...!賢くなった気がしないな!」
と。その瞬間、俺は言葉を失った。
(義理の姉さんかわいそー!)
心の中では彼の義姉に同情していたが。




