41話 あの日の約束
次の日の放課後、俺は栞に呼び出された。俺は、
(なんだ?)
と思いながら、待ち合わせ場所の喫茶店へ1人で行った。
そして、2人で喫茶店に入った。俺は、モカとパンケーキを、栞はカヘェラテとフレンチトーストを頼んだ。
「ねぇ、正一。正一はさ、小さい頃の約束って覚えてる?」
栞はそう聞いてきた。しかし、急には思い出せない。俺は、
「ちょっと、タンマ。」
と言って、回想する。
散歩の帰り道、俺たちは2人で横断歩道を渡っていた。
「ねぇ、正一。」
栞がそう言ったので、俺は
「何?」
と聞いた。
「約束しよ。」
彼女はそう語りかけてきた。
「何を?」
再び、俺は栞に聞く。すると、彼女は
「ずっと、一緒にいようね。」
と笑いながら言った。俺は、
「当たり前だろ?」
と言い、小指を出した。すると、彼女も小指を出してくれた。
俺たちはお互いの小指を引っ掛けて、2人でこう歌った。
「ゆーびきーりげーんまーんうーそついたーらはりせんぼんのーますっ!ゆーびきったっ!」
「あぁ、『ずっと一緒にいよう』って奴?」
俺はそう聞く。すると、栞は
「それも、大事だけど、もう1つの方っ!」
と答えたので、俺は再び、思い出す。
しかし、いくら思い出しても、その約束以外に思いあたるものは何もない。そこで、俺は、
「どんな約束?」
と首を傾げて見せる。すると、彼女は膨れながらこう言った。
「『大きくなったら付き合おう』って約束よ!」
「へ?」
俺は思わず、そう言った。
それから、俺は今一度、回想してみる。すると、何となくそんな約束をしていたような気がしてきた。確かに、俺はそんな約束にOKを出した覚えがある。しかし、それは小さい子供によくある、ほんの冗談という物のはずだ。
俺は、思ったことをそのまま、栞に伝えた。すると、彼女は
「わ、私は本気だったんだから!」
と赤面しながら、そう言った。
(えぇ!?マジか!あれって本気だったのか!)
俺は心の中でそう驚いた。しかし、それが顔に出ていたようで、彼女に頭をぶたれた。
「何であれを冗談だと思ったのー!?このバカ、バカ、バカっー!バカのくせにっー!バカが私との約束を破るなんて絶対、ダメェー!」
「え~?」
バカみたにバカを連呼する栞に、俺は上手く言葉が出なかった。
(でも、最低だな、俺。栞の気持ちも考えないで...。)
俺は反省する。
しかし、俺が異性として好きなのは鈴本さんだけだ。俺だって栞が嫌いなわけではない。正直、好きだ。でも、それは異性としてではなく幼馴染みとして、だ。これは、伊能にも言える。さすがに、彼女を異性として好きになることは出来ないが、後輩としてなら好きになることが出来る。
「ゴメン、栞!俺が好きなのは鈴本さんだけなんだ。別に、栞のことが嫌いなんじゃない!好きだ!でも、付き合うことは出来ない!もちろん、ずっと一緒にいようと思っているし、幼馴染みをやめる気も全く無い!まぁ、鈴本さんも入ってくれけど。だから、このままの関係でいたいんだ!」
俺は謝罪とお願いを兼ねてそう言った。すると、彼女は
「そんなに、沙耶香ちゃんが好きなんだね。じゃぁ、邪魔をする気はないわ。でも、沙耶香ちゃんが好きだからって、私から離れたな容赦はしないからね。わかった?」
と許してくれ、さらに、念押した。俺は、
「当たり前だろ?」
と言って、小指を出した。すると、彼女は嬉しくて半泣きになりながら、小指を出してくれた。
それから、俺たちはその子供っぽさに赤面をしながらも、小指を引っ掛けて、「指切りげんまん」を歌った。
そして、店員さんが頼んだ物を持ってきた。
「モカとパンケーキのお客さまー?」
俺は手を上げる。
「カヘェラテとフレンチトーストのお客さまー?」
続いて、栞も手を上げた。
その日は、2人で楽しく会話をしながら食べて、飲んでした後、すぐに別れた。
「これって、今まで三角関係だったってことだよな。てっきり、俺には無縁なことなのかと思っていた。」
俺は帰路の途中、そう呟いた。




