39話 練習試合
ピー!
練習試合開始のホイッスルが鳴る。キャプテンに
「上がれ!」
と言われたので、俺たちは前に出た。
と、突然ボールが飛んできた。俺はそれをトラップで勢いを止め、落ちてきたボールを浩平にパスしようとする。しかし、マークされていたので、空いている圭吾に向かってパスをした。すると、彼はそれを受け取り、思いっきり蹴った。
(なんか、嫌な予感が...。)
案の定、その予感は的中し、ボールはゴールの上を抜けていった。しかも、
「フンッ!」
と、無駄にかっこいいドヤ顔をしている。俺は、
「お前、イキんなよ!」
と怒った。
「フ...フンッ!」
しかし、彼は聞いてくれなかった。
そして、ゲームは相手のゴールキックから始まり、かなり攻められてしまう。だから、俺たちは守りに専念し、相手のルートを外しては外し、チャンスがあれば前にいる味方にパスをして、攻撃に戻った。
そして、俺たちのチームが2点を先取することが出来た。しかし、それは塗り替えされてしまい、さらには、5点もリードされてしまった。
残り時間は約1分。まだ、差は3点までしか縮められていない。俺たちのチームは、タイムを出して、イキりまくって失敗しまくった、そのせいで差をつけられたと言っても過言ではない圭吾と、ベンチにいた学を交替させた。
(さぁ、ショータイムの始まりだ!)
俺は心の中で、そう言い、勝利を確信した。
ついに、俺にボールが回ってきた。そこで、俺は、コースを計算した上で、出来るだけ相手が少ない所にボールを蹴り、
「あっ!あそこに可愛い小学生がー!」
と叫んだ。何事かと敵はきょとんとする。
(しかぁし、そうなったが最後、お前たちは終わりだ!)
ピー!
「ゴーーール!」
俺たちは、1点を取り返した。やはり、その後も敵はきょとんしていた。
どうだ?参ったか?これぞ、ロリコン誘導大作戦。それは、ロリコンの学を試合に入れ、シュート出来る位置にボールを蹴り、「可愛い小学生がいる」と嘘をつく。すると、学はそこへ向かうので、その途中、ボールに足が当たり、ゴールへぶっ飛ぶ。あまりの勢いに、ゴールキーパーは止める暇もない。
(学が入った時点でお前たちの負けなんだよ!)
俺は得意気な顔をした。
「調子にのらないでください!先輩!」
1人の後輩が、俺のボールを奪った。それを見た浩平は、スライディングで奪い返してくれ、しかも、そのボールは相手が相手がいないところに飛んでいった。
(ナイスコントロール!)
俺は心の中でそう言ってから、
「あそこに、小学生が!」
「ハヒ!フヒ!ハヒ!フヒ!どこぉ?どこぉ?」
「あっ、ごめん。見間違いだったわ。」
ピー!
「ゴーーール!」
「ハァ...ハァ...。」
「また、小学生がいる!」
「ハヒ!フヒ!ハヒ!フヒ!ハヒィッ!どこ、どこ、どこぉ!?」
「ごめん。見間違い。」
ピー!
「ゴーーール!」
「ハァ...ハァ...ハァ...。」
こうして、あっという間に、4点を取り、1点差で俺たちは逆転勝利。
「先輩!あんなやり方、私は認めませんよ!」
すると、相手のキャプテン、もとい伊能が怒ってきた。
「あれが俺たちのやり方なんだよ!ていうか!何で「や」を強調した!?」
と俺は言う。すると、
「えへへ...。」
と照れられる。
(「えへへ」じゃねえよ。)
俺はそう思った。
「頑張ってるわね。正一のそう言うところ...。」
その様子を見ていた栞はそう言いながら、赤面した。




