35話 心肺蘇生
今日は高校の体育館で講習が行われる。心肺蘇生の講習である。何だか、嫌な予感をすると思いながらも僕は、浩平、圭吾、学とともに参加した。
そして、その予感は見事、的中した。AEDの使い方や、人工呼吸は無理してする必要がないこと、人形を使った実習など一通り講習が終わった後の質問タイムにて、浩平が急に、
「AEDってバイブの機械じゃないんですか?かっこ意味深!」
と言い始めた。
(しかもわ自分で意味深って言っちゃってるし。絶対、下ネタじゃん。)
俺は、心の中では、講師がどう答えるか気になる。それは、周りの男子と同じだった。だか、1つだけ違うことがある。それは、俺が卑猥な発言をした彼のグループであること。たくさんの女子に俺たちのグループを知っている栞や、鈴本さんには特に、引いていた。と、講師が、
「ここで下ネタを入れてくる人は始めてですよ。」
と言いながら、笑って流した。
続いて、圭吾が、
「さっき、胸骨圧迫のことを話していましたが、それを理由に女性の胸を揉んでも、セクハラにならないんでしょうか?」
と、さらに過激な質問した。また、男子の視線が講師に集まる。女子はドン引きする。と、講師が
「いや、相手の心の問題だと思いますよ?訴えられない限りは、セクハラと認められないので。」
と、答えた。その話を聞いて、学が目を輝かせた。
「どっかに倒れた小学生いないかなー?見つけたら、僕が胸骨圧迫と人工呼吸で蘇生しるのになー。」
「いや、お前だけベクトル違い過ぎだろ。何で、急にロリに目覚めたんだ?」
彼の発言に俺がそう突っ込むと、
「元々だよ、井上くん。」
と言われたので、
「あぁ、そう。」
と、適当に流しておいた。
それからは、無法状態だった。
「俺は、塾女好きなので、相手が知らないお婆ちゃんでも良い。」
と言われれば、講師は
「お前の好みはどうでも良い。」
と突っ込んでみせ、
「人工呼吸って、気道を広げてからするんですよね。だったら、自分の舌で無理矢理、広げても良いんじゃないんですか?」
と聞かれれば、講師は
「それで気道が広げれれるなら効果はありますが、絶対に、やめてくださいね。」
と、注意した。卑猥な質問がされるごとに、男子と女子の距離が広がっていった。
そんな状態がしばらく続いた末、
「卑猥な茶番はよしなさい!」
そう言って、立ち上がったのは、なんとあの変態後輩・伊能さん。
(いや、どの口が言ってるよ...。)
と、俺は思ったが驚くことに、みんなの卑猥な質問がやみ、真面目な質問に変わった。そして、その後、思い出す。
(そうか、伊能さん、生徒会役員だったな。)
と。それでも、どの口が言ってるのかという思想は変わらなかった。
結局、この日は、男子に近づく女子ほいなかった。もちろん、鈴本さんもだ。いつも、彼女と学校で色づいている男子たちも今日は1人だけで歩いている。目は完全に死んでいた。それを見た俺は、
(今ならその気持ち、わかるわ~...。)
と彼らに同情した。
まぁ、寂しいからなのか、栞が辺りをはばかるようになってまで着いてきてくれたので、他のみんなよりは楽しく帰宅できたのだが。しかし、当然のごとく、会話が長く続かなかった。




