33話 スマホの隠し場所
立花さんの転校してきた日から数日がたった。俺は、鈴本さん経由で彼女に接近することに成功した。
同日の昼休み、ふと立花さんを見かけ、
「教室に戻ってスマホアドレス交換しよう。」
と言った。すると、彼女は
「良いですわね。でも、必要はなくってよ?」
と言いながら、胸から、スマホを取り出した。
(何て所からスマホを!?)
と思ったが、それは校則違反だ。俺は、彼女に
「東隅野ではどうだったか知らないけど、スマホの持ち歩きは禁止だよ?持ち込み自由だけど...。先生に預けなきゃ。それで、使うときに先生にお願いするんだよ?」
と教えてあげた。
「あら、それぐらい知っていますわよ?舐めてもらっては困りますわ。」
「じゃあ、何で?」
「わたくし、スマホを谷間に挟んでいるのですわよ?これを取ろうとする奴は絶対、いませんわ。いても、通報するだけですわ。バレなきゃ、違反じゃありませんのよ?」
「マジかよ...。」
立花さんの完全犯罪並みの隠し方に、少し驚きながら、俺は彼女にアドレスを教え、その場で登録を済まさせた。一方の俺は、とりあえずアドレスを聞いておいて彼女のアドレスを登録することにした。
続いて、栞もスマホを持ってやってきて、立花さんとアドレス交換をした。その後、彼女は一度、自らの胸を見て、
「あっ...。」
という声を漏らした。さらに、そこにスマホを挟もうとした。が、それは巨乳の特権だ。いっちゃ悪いけど、貧乳の栞がそんなこと出来るわけがなお。そのスマホは、服をスッと通り抜けて、地面に落ちた。
カタン!カタン!カタン!カタン!カタン!
何度やっても通り抜けてしまう。栞はそうなるごとにマジの顔になる。そして、何回目だろうか、?一瞬、胸に挟まった時が訪れた。それを見た彼女は安堵のため息をついた。しかし、あくまでも一瞬だ。それはすぐに落ちてしまった。
カラン!
「うぅぅぅぅぅ...。」
さすがに、傷ついたようだ。その音とともに、栞は泣き出した。やがて、その泣き声は大きなものとなり、たくさんの生徒が集まりだした。
(ヤバい!この状況はマジでヤバい!)
俺は暗い顔をしながら、頭を抱える。
「あいつって、井上正一だよね?栞ちゃんに何したんだろ?」
「それに、彼、栞ちゃんの幼馴染みらしいよ?」
「え~!?さいってーじゃん!」
「それに、僕が聞いた話だと、あいつ、鈴本さんの彼氏らしいぞ?」
「鈴本さんって、成績優秀な、あの子だよね?絶対、別れた方が良くない?」
こういう時に限って、良く聞こえてしまうのは何なんだろうか?
(っていうか、俺の周りでは修羅場しか起こらんのか!?しかも、どんどんエスカレートしてるし!)
半分、キレそうになりながら、俺はそこから逃げ出した。心の中で
(退避っ!退避っ~!)
と叫びながら。




