27話 問題だらけの2人きり
あんなことがあったのに、鈴本さんは普通に接してくれている。さらに、放課後、映画館デートまで申し込まれた。そんな彼女が、僕には女神に見えてきた。
そして、そのときはやって来た。俺は鈴本さんと初めて手を繋ぎながら映画館へ向かっている。
(くそ!恥ずかしい!しっかりしろ、俺!)
俺は内心照れながら、自分に言い聞かせる。彼女に「童貞なの?」とイジられた。
(だが、気にしない。俺は以前のようなクソ童貞ではない。ただの童貞ではない。今では、彼女もできて、童貞卒業のためだけに付き合っているのではない。一番の理由は彼女が好きなことなのだ。女を童貞卒業のための存在だと思っていた俺とは違う!って、そんなこと思ってたか?)
俺は自分にそう言い聞かせながら、
「ハハッ!ハハハハハッ!」
と笑ってごまかした。結果、ドン引きされてしまい、唯一の安心であった繋がれた手が離されてしまった。その瞬間、俺は不安になってくる。
(もう、クソ童貞じゃないとか言ってたけど、本当にそうか?鈴本さんのことをsexの道具として見てないか?)
と自分を疑ってしまう。
こんな状態で、俺は鈴本さんを追い、映画館につくと、男には見るのが辛すぎる女を2本も見せられ、3本目は俺の見たいものを見て良いと言われたが、俺お好みの映画は全券売り切れ。結局、女向けアニメを見せられた。
「くっそー!素直に楽しめねぇ!」
帰路、俺は嘆く。
(映画館デート?何それ、おいしいの?)
心の中では半泣き状態。
(もう嫌だ!)
人生放棄もしたくなって来た。
今日初めて鈴本さんと2人きりの(奴がもしゃばって来ない)デートが出来て嬉しかった。しかし、色々な問題があった。男と女で趣味の合う映画なんて少ないし、ドン引きされて初めて繋いだ手は離されるし...。まぁ、そんなこんなで今日は不安しか生まれなかった。
「くっそ!本当にもう嫌だ!」
鈴本さんと別かれた後、俺はそう叫ばすにはいられなかった。




