23話 壊された裸体像
鈴本さんとの初デートから約半年。この半年間、彼女とはなんの進展も無い。しかし、今日、ついにチャンスが到来した。
俺は今、究極の選択を目の前にしている。
「さぁて、何をしてもらおうかなぁ?」
俺はニタニタしながら、鈴本さんに忍び寄る。
「ねぇ、井上くん、公衆の面前って知ってる?」
彼女は怯えながら、そう言う。
(公衆の面前?知らんな。)
俺はその言葉を無視し、さらに彼女に迫る。え?どうしてこうなったかって?それは、今日の昼休みにさかのぼる。
「オーマイガットトゥギャ...」
「やめろ、消されるぞ!」
「俺の粘土作品が壊れてるという...」
「だから、消されるって!」
昼休み開始から約5分、俺たちはそんな会話をする。しかし、それどころではない。会話の内容からもわかると思うが、俺が作った粘土作品が壊れてしまったのだ。いや、しょうもないものを作ったから、みんなにはザマミロと思われるのだろうが、こっちはめっちや傷ついているんだ。
(俺が丹精込めて作った『ビューティフル裸体像』が~...!美術家の先生には「そんなものに丹精を込めるな!」としごかれたが、人の作品にいちゃもんをつけるなど間違っている!)
俺は、心の中で言いたい放題。ついでに、
「こんちきしょー!誰だ、壊したのは~!?」
と叫んでおく。
すると、どうだろう。1人の手が上がったのだ。そこにいたのは、なんと鈴本さん。
(おいおい、嘘だろ?)
俺はそう思って、
「マジすか?」
と聞く。すると、彼女は
「マジです。」
と答える。
「嘘だよね?」
「嘘じゃないよ?」
「嘘だー!」
「だから、嘘じゃないって!」
「誰かをかばってるんじゃ?」
「かばってません。」
「待って。」
「待ちません。」
「嘘つかれると困るよ、鈴本さん。」
「困りません。それに、嘘ついてないし!」
「だから...って、ごふぅぅぅ!?」
鈴本さんと話していると、俺は頬に拳骨をくらう。
「だ、誰だっ~!?」
思わず叫ぶ。すると、
「私よ。」
と、開けれたような声が聞こえる。その主は、田中栞。
「嘘じゃないって言ってんだから信じてあげなさいよ。」
彼女はあきれ顔でそう言う。
「嫌だ...。俺は認めないぞ、絶対に認めない!何があっても認めはしない。」
俺は必死で抗議する。しかし、栞は諦めが悪い。彼女は釘バットを手にして、
「そう。じゃぁ、これで殴っても同じことがいえるか、試してみる?」
と言う。俺は
「ひえっー!認めます、認めます、認めます認めます、認めます~!」
と悲鳴をあげながら、俺はそれを認めた。と、言うわけでぇ~...!
「ぬわぁにしてくれとんじゃ~!」
俺は鈴本さんの両手に、自分の両手を合わせ、取っ組み合いに姿勢に入る。
「井上くん、本当にごめん!」
彼女は、俺の力にたえながら謝ってくる。
「謝っても無駄だ!たとえ、鈴本さんだろうと許さんぞ!」
俺は怒り心頭でそう言う。すると、彼女は少し泣きそうになりながら、
「わ...わかった。お詫びにな...何でもするから!この手を離して!」
と言われる。
「ん?今何て言った?」
「だから、この手を離してって。」
「違う。その前だ。」
「その前?何でもするって言ったこと?」
「そうそれ!マジで言ってる?」
「えぇ、1つだけなら...。」
「ふん。それなら交渉成立...って、うわっ!」
俺が油断したスキに、彼女は手を振りほどき張り手をくらわしてきて。俺は勢いよく尻もちをつき、
「痛!」
と悲鳴をあげた。
と、いうわけでこの状況に陥ったのだ。
(フハハハ...さぁて、何をしてもらおうかなぁ?)
俺は心の中でニタニタと笑う。その笑みを、少し表に出してしまったが問題ない!さぁ、ご褒美タイムの始まりだぁ~!




