21話 初デート(前編)
「ねぇ、井上くん。」
「何?」
「今度、一緒に遊園地行こうよ。」
「うん。」
(よっしゃ!初デート、ゲットだぜ!)
何て思っていると、浩平が寄ってきて
「お~れ~に~も~ま~ぜ~ろ~!」
と言ってきた。俺は
「やだね。」
ときっぱり断った。しかし、彼は聞こうとせず、どんどん迫ってくる。その押しに負け、俺は彼の出席を許してしまった。
「で、いつ行くの?」
俺がそう聞くと、鈴本さんは
「明日に決まってるでしょ?」
と言われた。明日は建校記念日で休みだ。
(それで、明日行くんだな。承知しました。)
俺はそのとき、そう思った。
そして、次の日。俺たちは一度、校門前に集まった。
「揃った?」
鈴本さんが聞くので、俺と浩平は
「アイアイサー!」
と答えた。すると、彼女が
「海賊のまね?だったら、海賊みたいにこき使うけどいいのかな?」
と言ってくる。その瞬間、俺たちは鈴本さんの浅めの心の闇を知った。
さて、バスに乗って、十数分、会話を楽しんでいると、あっという間にたどり着いてしまった。俺たちはバスから降り、遊園地の門で入場料を払って中に入った。
「まず、あれ行こうよ。」
鈴本さんが、どこかを指差しながら言った。その先を見た瞬間、俺は、
「何ぃぃぃ!?」
と叫んでしまった。はたして、井上がそこで目にしたものとは!?
それは、絶叫マシン・スペースドラゴニアだったのだ。
「鈴本さん...それはちょっと...。」
俺が言うと、
「何?怖いの?」
鈴本さんに見下され、浩平にも
「怖いんだろぉ?」
と見下された。俺はさすがに、腹が立ったので
「ナメんな。これぐらい、行けるぞ!」
と言って、心の中にある、”怖い”と言う感情を押しきった。
(覚悟は出来てるぞ!)
俺はそんな思いで列に並んだ。
(それより、叫び声が聞こえるのはやめてほしい。乗るのが怖くなるから。)
そんのようにも、思った。
そして、そのときはやってきた。俺は仕方なくコースターに乗り、安全バーを下げる。すると、すぐに動き出した。
「ギャー!」
「ギャー!」
「ギャー!」
俺たちは叫びまくった。落ちたり上ったり、縦横に回ったり、怖いというより着いていけなかった。そんな状態で、俺たちは叫び続けたのだ。それなのに、鈴本さんはヘラヘラしている。
(正気か?コイツ?)
思わず、そんな失礼な言葉が心に浮かんだ。
「やっと...やっと...終わった。」
「あぁ...。」
出口からでると、俺と浩平はベンチに崩れ落ちた。
「怖いというよりは、ワケワカメだったな。井上くんよ。」
「そんだな。もう、終わったぜ。俺の心臓。まだ、バックンバックンしてるよ。」
「お前の彼女、正気か?」
「それ、俺も思った。正気じゃないと思うぞ。」
2人で愚痴っていると、鈴本さんがやってきたので、俺たちは愚痴をやめた。そして、彼女、次になんと言ったと思う?何と、こう言ったのだ。1・2・3!
「次行こっか。」
と。俺と浩平の2人は、心の中で
(Sだぁぁぁぁぁ!)
と叫んでいた。と、同時に心なしか俺たちの体が真っ白になった気がした。
これからは、恋人同士っぽい展開にしていきたいと思うので、ご期待ください。




