20話 みんなで心理戦
ゲームが始まると、浩一が俺以外のみんなに「偽の絵画」、「真の絵画」と思われるカードを配った。
「2017年下半期、とある美術館に予告状が出された。」
続いて、浩一はそう言う。そして、予告状カードらしきものを手渡してきた。そこには、『今夜12時頃、ここで一番の宝物をいただきに参上する 怪盗ショーイチ』と書かれていた。
「これを読め!」
彼は言う。
(そこまでこだわるか!?)
俺はそう思ったが、取りあえずそれっぽく
「今夜12時頃、ここで一番の宝物をいただきに参上する 怪盗ショーイチ。」
と言っておいた。
それから、俺は
「鈴本さんにする。」
と、鈴本さんを指名する。すると、彼女はニヤニヤし始めた。
(えっ!?やらかしたか!?)
俺は恐る恐る彼女のカードを裏返す。すると、そこにあったのは真の絵画の文字だった。
「やめてよ。ヒヤヒヤしたじゃんか。」
「フフフ...ごめん、ごめん。」
「俺たちの前でいちゃラブするなっー!」
彼女との楽しい会話は浩一のその言葉で遮れた。
(何だよ...。)
俺は少し腹が立ったが、取りあえず1点獲得だ。
「てか、聞いてなかったけどこれって何点先取で勝ちなんだ?」
俺はふと疑問に思ったことを聞く。すると、浩一から
「よくぞ聞いてくれた。正一くんよ!このゲームはズバリ...!」
という答えが返ってきた。
「ズバリ...?」
俺は息を飲む。そして、彼はこう言ったのだ。
「何点先取かは決められていないのだー!そこで、今回は30点先取としよう。あっ、ちなみに点数が0以下になることはないからな。」
と。俺は大阪の某お笑い番組みたいにずっこけそうになる。しかし、何とかこらえた。
再びカードが配られる。俺の手には美術館カードがわたってきた。ルーヴル美術館と書かれている。俺はそれを前に出す。怪盗は鈴本さんだった。
(これって仕返しされるんじゃね?)
そう思った俺は「偽の絵画」カードを伏せた。しかし、鈴本さんが指名したのは俺ではなく圭吾だった。しかも、圭吾は「真の絵画」カードを伏せていて、鈴本さんに得点がいった。
(あぁっー!またやらかしたぁ!もったいねぇ!)
俺は頭を抱えて崩れる。
その後も、何回も何回も心理戦を続けた。
(うわ、「真の絵画」で襲われた。)
正一は1点を失った。
(よし、伊能さんに「偽の絵画」で襲われたぞ!)
七奈美は1点を失った。正一は1点を獲得した。
(「偽の絵画」にしたのに襲われなかった。もったいな。)
しかし、何も起こらなかった。
(「真の絵画」で襲われなかったぞ!やったぜ!)
正一は1点を獲得した。
そんな攻防?の後、この心理戦は幕を閉じた。勝ったのは鈴本さん。美人過ぎる笑顔で素直に喜んでいる。
「くそ!もう1回だ!」
俺は悔しくて再戦を申し込んだ。すると、浩一は承諾してくれた。しかし、また負けてしまった。
その後も、何度も何度も再戦を申し込んでは負け、申し込んでは負けし、気づけば門限の6時が来てしまっていた。
(くそっー!結局、1回も勝てなかった!)
俺はそんな悔しい気持ちで頭にいっぱいになる中、浩一の家を離れた。




