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欠陥魔力騎士の無限領域(インフィニティ)  作者: inten
新入生歓迎トーナメント編
8/91

契約 | 光と限無

欠陥魔力騎士8


契約 | 光と限無


「お昼までまだ時間があるし、少し走っておくかな?」


 あの二人の戦いの後、僕は先生の作業を手伝わされた。

 理由はもちろん、あの中で僕だけがダブリだからだ。

 一応一年生の最後の方では、少し技術的な事にも触れていく。

 これはこの学園を出た後、技術者の道に進むものが出てくるかもしれないからだ。

 理由は単純、良くも悪くもトップレベルであるこの学園では、上と下の差がとても大きい。

 自分の才能に見切りをつけた生徒用に、二年からは技術者向けの補助授業があるくらいだ。

 けれどそれは、技術者をないがしろにしているわけではなく、むしろ逆だ。

 技術者に転向した生徒には、授業費半額などの特典もある。

 これは、選手の事を理解している技術者を育てるためであり、実はこの学園の卒業生には、学園内でパートナーとなり、選手と技術者両方が学園の同期という選手も多い。

 実際この学園の卒業生でトップレベルの数人は、学園内で組んだパートナーとプロとして戦い、しっかりとした記録を残していたりする。


「はっ、はっ、はっ、はっ」


 ランニングは適度な速度で、常に速度を変えないことを意識して走る。

 これは僕の日課の1つであり、走りながら自らの内側を完全にコントロールするための修行でもある。

 これはそのまま、戦闘時のエネルギーコントロール力に繋がるもので、現状魔力が使えない僕であっても、衰えさせないために続けている。

 もしかしたら、これを止めることで気力と魔力が衰え、再び普通に魔力を使って戦えるようになるかもしれない。

 けれどそれは……僕には負けな気がした。

 現状に満足しているわけではないが、だからといって楽な方に流れてしまえば、それこそ天通限無という名を名乗れなくなる。


「やっぱりすごいのね。それだけ走ってて、息一つ乱れてない」


「大和、さん」


 僕がそろそろ終わりにしようかと思っていた所に、大和さんが声をかけてくる。

 僕が今走っているのは、ランニング用に作られている専用路なので、大和さんがいてもおかしくない。


「えっと……何の用かな?」


 けれど僕には、大和さんが声をかけてくる理由がわからなかった。

 先程の戦いを見た後で、今の僕と大和さんとの差は歴然だ。

 先日僕の事を話したことをかんがみても、再び声をかけてくるとは思わないんだけど……?


「この間は逃げられちゃったから、改めて言うわよ? 貴方、私の実験に付き合いなさい(ものになりなさい)ッ!!」


「…………えっ?」


 僕は一瞬、彼女の言っている事がわからなかった。

 こんな僕に再び声をかけてくれるなんて、夢にも思わなかったからだ。

 たしかに僕としても、あの新しいシステム……カートリッジには興味がある。

 あれを使えばもしかすると、僕も再び魔力で戦えるようになるかもしれないからだ。


「えっ、と……。どうしてまだ僕の事を? 昨日の戦いは見てた、よね? 今の僕は、大和さんが声をかけてくれるようなたいした人間じゃないんだよ?」


 言ってて悲しくなるが、これは事実だ。

 今の僕は欠陥魔力騎士であり、大和さんのような輝いている存在ではない。


「貴方の去年の入試成績を見たわ」


「ッ!?」


 これには本当に驚いた。

 たしかに今、僕の事を疑う生徒には、先生たちから説明がされていることは聞いていた。

 けれどそれはうわべを取り繕うものであり、中身までは知らされないはずだ。


「学園長に直接聞いたのよ。私が貴方を、私の実験に付き合わせたい(ものにしたい)ってね?」


「そう、なん……だ」


 そこまで僕の事をかってくれていたのか。

 正直少し泣きそうだった。

 かつての……神童と呼ばれた頃の僕ならいざ知らず、|今の欠陥魔力騎士である僕を見てもそう言ってくれる。

 僕は彼女の実験に付き合う(ものになる)事を決意した。


「決めたよ。僕は君の実験に付き合う(ものになる)。だから大和さん……僕を再び戦えるようにしてくれないか?」


「もちろんよッ!! 私が貴方を……天通限無と言う男を、再び輝かせてあげるッ!!」


 こうしてここに契約は成立し、僕は彼女のものになった。

 これからトーナメントまでの約一ヶ月。

 去年よりも楽しくなりそうだ。




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