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欠陥魔力騎士の無限領域(インフィニティ)  作者: inten
新入生歓迎トーナメント編
17/91

光の限無の放課後デイズ⑥| 光と限無の過去語り③

昨日が誕生日だったので、はなれた時間で連続更新です。

これは五話目です。

欠陥魔力騎士17


光の限無の放課後デイズ⑥| 光と限無の過去語り③


「これは僕が十歳の頃。ちょうど天通流に通い始めた頃の話だ」


 あれは今から約六年前。

 僕が初めて天通流の門を叩いた時の話だ。

 当時の僕は、近所には知らない者がいないレベルの有名人で、とても大事にされていた。


「ほら、ここが今日から通うことになる道場だ」


 そう父に連れてこられた道場は、今までの中で一番大きく、一番すごかった。

 柄にもなく緊張していた僕は、いつもなら中へ駆け出すはずの足が震え、なかなか中へと入れずにいた。


「あなた、入らないの?」


「っ!?」


 なかなか一歩を踏み出せずにいると、突然後ろから声がかけられる。

 凛としていて、それでいてきちんと幼い女の子の声。


「入門希望……なんでしょ? 入らないの?」


「えっ、えっとその、お、俺は……」


 当時の僕は、自分を強く見せるためなどの理由から、一人称を俺にしていた。

 それゆえかはわからないが、話しかけてきてくれる同年代の女の子がほとんどおらず、同世代の女の子と話すというのは、僕にとっては少し苦手な事だった。


────────────────────────


「どうなの? 入らないの?」


「君はここの子なのかな? ならばすまないが、息子の案内を頼めるかな? いつもはもっと堂々としているのだが、君の可愛さと、この道場のすごさで緊張しているようなんだ」


 まったく反応できていない僕をみかねて、父が女の子に声をかけてくれる。


「そう、なんだ。やっぱり見学希望だったのね? 私は天通美龍(あまつみり)よ。よろしくね? 今日は本家からの遣いとして、ここの支部を見に来たところだったから、あなたの案内はついでとして、とてもちょうどいいと思うわ」


「あ、あ、あ、ありが……とう」


 なんとかお礼の言葉を返した俺は、改めて目の前の女の子の姿を見直す。

 歳は多分、俺と同じか少し下。

 髪はとても長く、しかしそれゆえにとても綺麗だ。

 顔は年相応に可愛く、しかしその雰囲気は髪の雰囲気と合わさることで、どこか気高さを感じさせた。


「それじゃ、ついてきて。まずはここの支部長に会わせてあげる。そちらの……お父上は、ついてくるのですか?」


「それはありがとう。私も支部長さんには挨拶をしようと思っていたからね。案内よろしく頼むね」


「わかりました。では着いてきてください」


 そう言うと僕らの先へ行き、入り口の扉を押して開ける。

 すると、彼女には開けられるはずがないような重さを伴った音が響き、彼女のすごさを嫌でも理解させられる。


「どうぞ中へ。案内します」


 そうして彼女の先導で中を案内され、支部長のもとへとたどり着く。


「いらっしゃい。よく来てくれたね? 君の噂は聞いているよ」


 迎えてくれた支部長さんは父と同じくらいの年齢で、大木のようなイメージを受ける。


「そしてようこそお出でくださいました。天通美龍様。天通家直系の……それも次期当主候補の方にお出でいただき、大変嬉しく思います」


「ありがとう、天通陽木(あまつようもく)支部長。今日はこの支部の視察に来たのだけども、何か面白い物を見せていただけるとか?」


「えぇ、恐らくは。すべてはそこの彼次第……ではありますがね?」


 そう言うと支部長さんは俺を見つめ、天通美龍さんはその視線の先の僕を見て、驚いた顔をする。


「私は先程、彼は今日初めてこの道場を訪れた見学者だと聞いています。その彼が、私に面白い物を見せてくれると?」


「彼の噂が真実ならば、ですがね」


 どうやら支部長さんは、俺の才能を知っているらしい。

 しかし逆に美龍さんは知らないらしく、支部長と俺を疑うような目で見つめてくる。


「では道場へと移動しましょう。そしてそこで、君の力を見せてくれるね?」


「わかりました。最善を尽くします」


………………

…………

……


「さてさて、みんな集まっているな? 今日は見学者が一人と、視察のために本家より天通美龍様が来ておられる。見学者は最近この近くを賑わせている天才少年。天通美龍様は本家直系のお嬢様だ。皆、張り切るように。それでは鍛練を始めなさい」


「「「「よろしくお願いしますッ!!」」」」


 全員の大合唱が辺りに響き、それぞれの鍛練が始まる。

 俺はそれを片目で見つつ、もう片目で天通美龍さんと支部長さんの姿をとらえておく。

 どうやらまずは、基礎的な筋トレやストレッチから始まるようで、全員がペアになって動き出す。


「ここまではどこの道場も同じなんだな……」


 やはり技を鍛える前には、必ず事前準備をしっかりと行う。

 そして体をあたためてから、技の型稽古へとうつる。


「さてさて少年よ。君はたしか、数度見ただけで技を覚えられるほどの天才だと聞いている。それは事実なのかね?」


 片目で常にとらえていたからか、支部長さんの声にすぐに反応することができた。


「正確には、模倣に一度、習熟に一度、習得に一度の計三度ですね。一度目で見た相手の技を模倣できるようになり、二度目で自らの体で最適化。三度目で完璧に使えるようになります」


「ッ!?」


 その俺の言葉を聞いて、天通美龍さんが驚きからか立ち上がる。

 更には聞こえていたのか、一部の道場生までもがその手を止めて、こちらをみやる。


「ではもう1つ質問だが、その技を見る相手と言うのは、誰で良いのかな? やはり技術の高い者が見せる方が効率が良かったりはするのかい?」


「それは……わかりません。今まではどの道場でも、一番下から始めさせられましたし、上の人の技を見せてもらえる頃には、その人たちよりも上手く扱えるようになってましたから」


 それゆえに道場を転々とした。

 入ってからわずか一月から数月ほどで、その道場のすべての技を完全に覚えて使いこなしてしまう。

 それも俺のような子供ができてしまうことから、俺は天才ともてはやされつつも、同時に疎まれてもいた。


「では今日はせっかくだ。美龍様の技を見せていただくのはどうだろう? とても良い勉強になると思うのだが。よろしいでしょうか、美龍様?」


 支部長のその言葉で、ようやく驚きから戻ってきたらしい美龍さんは、1つ頷くと俺に声をかけてくる。


「では私が技を見せます。あなたが本当に、技を数度で覚えられると言うことを、私も知りたいですし」


 そして彼女は道場の中央に立つと、門下生が的となる人形などを用意する。


「私は現在、三指までを覚えています。ですが三指は天通流の者でないと感じることができない技です。なので一指と二指を続けて見せます。では、いきますよ?」


 そう言って彼女が構えると、周囲の空気が一変する。


天通流一指(あまつりゅういっし)指旋突(しせんとつ)


 彼女が剣を突き出すと、離れた場所の的が撃ち抜かれる。


天通流二指(あまつりゅうにし)示払(しふつ)



 続いて彼女が剣を横薙ぎにすると、前方に離れて並んだ的がすべて撃ち抜かれる。


「これが天通流の技です。いかがでしたか?」


「貸してください」


 俺は支部長さんに剣を貸してもらえるように頼むと、的を用意し直してもらって、先程の彼女と同じ場所に立つ。


天通流一指(あまつりゅういっし)指旋突(しせんとつ)


 俺が放ったその技は、彼女のように的の中心を撃ち抜くことはできなかったが、的をしっかりと射抜く。


天通流二指(あまつりゅうにし)示払(しふつ)


 続いて放った技は、彼女のようにすべての中心には当たらなかったが、確実に的を射抜いて見せた。


「そ、そんな……」


「これはこれは……」


 これには美龍さんも支部長さんも驚いたようで、二人とも声が裏返っている。


「少年。君のその才能は、正直予想以上だったよ。素晴らしいと思う」


 年の功からか、すぐに顔を引き締めて俺を誉めてくれる支部長さん。


「美龍様。彼は面白い物を見せてくれました。私はこのまま、彼を本家に送りたいと考えています」


「………………」


 支部長声が聞こえていないのか、反応を示さない美龍さん。


「仕方ないか。では少年よ。君はどうしたい? ここで……親の近くでゆっくりと学ぶか、親と離れて本家へ行き、そこで最強を目指すか」


「俺は……」


「あなたッ! 私の家へ来なさいッ!! 共に魔力騎士の頂点を目指しましょうッ!!」


 俺を誘う支部長の言葉に戸惑う俺を、美龍さんが目を輝かせて誘ってくる。


「どうだろう? 考えてみてくれないかい?」


「あなたとなら私、一緒にもっと上を目指せると思うのッ!! お願い。私と一緒に来てッ!!」


 二人の真剣な目を見た俺は、少し考えてから結論を出す。


「よろしくお願いします。両親の説得を手伝ってくれるなら……ですが」


「もちろんだよ。一緒に挨拶へと伺おう」


「それくらいなら何でもないです。今からでもいきましょう」


 こうして俺はこの日、正式に天通流の門下生となった。

 この後支部長さんと美龍さんと三人で両親に話をして、天通流の本家へと内弟子として迎え入れられたのだ。


「これからよろしくね? お兄さま」


「えっ、と。こちらこそ、よろしく頼むよ」


────────────────────────


「こうして僕は無事、天通流の一員となった。そしてこの一年後に婚約して天通限無の名前をもらった」


「そうだったのね」


 僕が話し終わる頃には、夕飯の時刻になっていた。


「それじゃ、また明日」


「えぇ。また明日ね」


 僕は彼女と挨拶をかわすと、部屋を出て自室へと向かった。


「今ごろどうしてるだろうか?」


 今日大和さんに話したからか、ふと美龍の事が気になった。


「今更……だよね」


 今の僕では、まだ天通家には戻れない。

 それに今は、大和さんがいてくれる。


「頑張らないとな」


 今年こそは、トーナメント本戦に残る。

 そうしてできることならば。


「大和さんと決勝で戦いたいな」


 意識と決意を新たにして、僕は帰り道を走って帰った。




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