プロローグ:王者ルシファー
『ヴォイド様』
父は立派だった。
国民からの支持も高く、愛されている。
童話に出てくるような王様の鑑。
そう思っていた
使用人はその息子である自分を様付けで呼び慕っていた。
自慢の父を持つものとして胸を張って使用人にも接した。
あの日聞いた陰口を聞くまでは…
物心ついたある日、聞いてしまったあの声を今でも忘れられない。
『ルシファー様の横暴には耐えられません』
『もう逃げ出してしまいたい』
父の実の姿は冷徹だった。
残虐で外道で…。
国民の支持も、力による独裁政治で植え付けた恐怖でかき集めたものだった。
悪のカリスマ。
王者として民衆をまとめる力は必要だ
しかし父は力の使い方を間違ってしまった
強者として、生物として超えてはいけない一線、踏んではいけない道を踏みしめてしまった。
魔の者達の頂点に座す者ルシファー。
だが、まだ俺は心のどこかで父を許していた
帝国の王としての重圧が、彼をそうしてしまったのではないか。
周りの期待、不安の声、そして父としての責任が刃となり、彼の心を刺してしまったのではないか。
そんな淡い期待は、とある事件によって打ち砕かれた。
その時、俺は父を殺すことを決意した