表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ヴァンパイアの魔王異世界奮闘記  作者: Crosis
第一章
9/121

門◇

「…………」

「ああ、そうだったな。そろそろ先ほどお前達の身体が動かなくなった答え合わせと行こうか?」


 キュートスがクロを赤い顔で睨んでいるのが見えたので先ほどのネタバラシをすることにする。

キュートスからすれば胸を揉まれた事と病を治してもらった事とで怒れば良いのかお礼を言えば良いのか迷っていただけなのだが、クロの問いかけにより彼が敵だという事実を思い出す。


「っ、あ……あぁ……そういえばそうでしたね。先ほどのような能力、見たことも聞いたこともない上に、本来闇と光の呪文は互いに相殺しあい魔術は消えてしまうはずです」

「そうだな、本来なら互いに干渉しあい相殺されるのだが闇属性の影縫いを使った直後から2フレームまでの間に光属性の影消しを使えばまず影縫いの効果が現れ相手の動きを止めたあとに影消しの効果が現れ、影縫いの効果を残したまま影が消える。本来影縫いの効果持続時間は二秒ほどなのだが、魔術をかけた影を消されることによりその状態が固定されたまま消され、影縫いの効果が消えなくなるんだよ」

「そんな事が………」


 キュートスが信じられないと言いたげな表情を見てクロは満足する。

 なんせクロもまたギルティ・ブラッドでキュートスと同じ思いをしたのだ。


 ネット内での知り合いとは共有できた発見と驚きなのだが、現実では、クロの周りにギルティ・ブラッドをプレイしている友人はおらず、自分が発見したコンボをこのように話し説明するのがクロの夢の一つでもあった。

 このコンボはクロが魔王の称号をかけた大会で猛威を振るったコンボでもある。もちろん後半では対策されたのだが、相手の選択肢にこのコンボの対策が入ってしまうためこちらのペースでゲーム展開できたのも事実である。


 そしてこのコンボは初代サポートキャラクターガチャに入っていたキャラのセラと当時最新の限定ガチャで登場したルシファーがいないと使えないため古参かつレアリティーが高いセラとルシファーを持っている魔族プレイヤー、さらに十年以上前に産廃キャラになっていた初代セラを所持している者はごく少数であったため、この大会では俺しかこのコンボを使用できなかったほどである。

 そしてこのコンボと重課金装備を施しなんとかガチ勢と並ぶ事ができたのでこの魔王という称号は俺のキャラ愛の称号でもあるのだ。


 そして俺はこの世界でも同じようにギルティー・ブラッドで使えたコンボが成功する確信があった。

 その理由の一つに、この世界で俺が使った武器やスキルはゲームのモーションかつ威力や効果を忠実し再現していたためである。

 そしてその考えは正しかったらしく想像どうり目の前の魔族軍は身動きできなくなったのだが、まさかここまでの規模とは思わなかったため嬉しい誤算でもある。


「さて、この軍を止めたくらいじゃあの魔王様とやらがまたここに軍を使って攻め込ませる可能性は消えないわけだから根源を潰しに行きますか」

「ま、魔王様を殺すのか?」


 キュートスの問いかけで辺りが静まり返り、魔族たちがクロの返事を固唾を飲んで待っているのが分かる。

 彼らの表情から彼らの魔王が慕われている事が伺える。


「そんな訳ないだろ?ただ……」

「ただ……?」


 そんな魔王を殺すとか俺には無理なので殺しはしないのだが、腹が立っているのも確かである。


「売られた喧嘩は買う。さらに自分は高みの見物ってのも気に食わない。だから一発殴らせてもらうだけだ」

「無理だ。お前は魔王様を舐めすぎている。それにどうやって魔王様がいる所まで行くってんだよ」


 ギルアが横から入ってくる。

 彼からは武器を仕舞い戦う意志がない事が伺える。

 後ろから「我が魔王様を舐めすぎているのは貴様等のほうである!」と聞こえてくるがとりあえず半年間ロムる事を進めたい。


「最後の警告は親切心からか?」

「一応、妹の病を治して貰ったからな……それだけだ」

「いや、助かる。俺の強さを知った上で舐めすぎたら痛い目を見るかもしれない実力なんだろ? 肝に命じておく」


 そう言うとギルアは「フンッ」と鼻を鳴らしてそっぽを向く。どうやら照れてるみたいだ。


「それから魔王様とやらがやったように俺も門を出して向こう側に行くんだが?」


 そう言いながらクロは指をならし闇魔術段位四【デモンズゲート】を出現させる。

 するといきなり目の前に豪華な装飾が施された巨大かつ禍々しい門が現れた。


 その豪華さは最初に現れた門と違い明らかに豪華さが増しているのが見るだけで分かるほどである。

 その門を見て周りからどよめきが起きる。


 そしてその門は鈍い金属音を周りに響かせながらゆっくりと開きはじめ、門の先には武装し戦闘体制の魔族軍と、数多の魔族軍兵の奥に豪華な洋風の城が見えて来る。

 この魔術デモンズゲートはテレポートと違い会った事があるプレーヤーの場所にゲートを繋げる事ができ、テレポートは一度行ったことある場所移動できる仕様になっており、この二つを使用できればかなり楽にマップ移動ができるようになる必須能力でもあった。


 そしてこの門の特徴に自分の魔力総量により門の大きさや形が変わり、魔力が多ければ多いほど大きく、そして豪華になる特徴がありその変化は十段階まである。

 さらに双方デメリットがありテレポートは自分自身しか移動できず、デモンズゲートは何人でも向こう側に送る事ができるが魔力を消費しなければならず、さらに自分の魔力以上のプレーヤーを送る事が出来ないのである。

 すなわち、クロが出した門がこの世界の魔王よりも魔力総量が高いことを物語っている。

 その事実が門の向こう側にいる魔族たちをも驚愕させ、その門から現れるであろう者を固唾を飲んで待ち受けていた。


 さて、門を出したは良いがここに残るサポートキャラクター達をどうするか悩むのだが、しかしクロはサポートキャラクターにいるであろうキャラクターを思い出す。


「セバスチャン、いるか?」

「お呼びでしょうか?クロ・フリート魔王様」


 クロが呼ぶと高そうなスーツを着こなした初老の執事のような姿のキャラクターが現れ、頭を少し傾げる。

 このセバスチャンというキャラクターは今出ているクエストやバトル用の補助キャラクターではなく文字通りサポートキャラクターでゲーム登録と同時にゲームで分からない事などを分かりやすく教えてくれるキャラクターとして最初から存在しているキャラクターである。


「回復サポートキャラクターをここに置いていく。その間ここをお前に任せても大丈夫か?」

「かしこまりました。ここは私めにお任せください」


 ここはセバスチャンに任せても大丈夫だろう。

 そう思わせてくれる立ち振舞いに満足する。ゲームの時と同様にいざというときに頼りがいのあるキャラクターである事を雄弁に物語っていた。


「よろしく、セバスチャン」


 そしてクロは門を通して敵陣に攻め込もうとするのだが、その後ろを振り向けば数多のキャラクター達がクロと一緒に戦う意志を見せながらついてきていた。


 その光景を見てクロは彼らの事を『キャラクター』として考えるのを辞め『意志ある者』として接しようと心の中で誓う。


「我が軍に告げる! 回復サポートにまわってる者と強さランク星五以下はここで待機し、そのまま怪我人の回復とその護衛を頼む!また向こう側に行くか行かないかは個々の自由とし、行かないからといい責めはしないので個人の判断に任せる! そして向こう側に行く者もあまり深入りはせず怪我をしたらすぐさま戻れ。この俺が命令することは無闇な殺生と、勝敗に関係なく全員生きてこの戦いを終える事である!」


 そこまで一気に告げると辺りから空が割れるかのような雄叫びが響く。

 俺の忠告を本当に聞いているのか怪しいぐらいみんなやる気満々である。


「さぁ、鬼の城まで百鬼夜行と行きますか」


 そしてクロ達は相手の本拠地ど真ん中へ行くのであった。



◇◆◆◇



 最初のほうこそ敵陣に入るないなや反撃と共にクロを馬鹿にしたような言葉が飛び交うのだがその度にバハムート、ルシファー、セラだけでなく他の者までもが今まで溜まった鬱憤を晴らすかの如く敵を叩き潰し、クロは何の苦労もなく進行することができた。

 死者が出てもおかしくないようなバハムート達の攻撃を見て不安になり「大丈夫なのか?」と聞くと「こんなんで死ぬようなら軍には入れないぜ」と何故かボストンが答えてくれた。


 ここに本来いないはずの人物の登場によりビックリしているクロの顔を見て悪戯が成功して満足げな顔をするボストン。


「何でここにいるんですか?」

「お前さんが俺の理想郷を作り上げてくれる魔王だというのなら俺は悪魔にも手を貸すさ」

「そうですか…帰れとは言いませんが、せめて味方の攻撃の巻き添えで怪我とかしないで下さいよ」


 ついでにセラに鎮圧しながらもボストンを守るように指示する。

 ボストンの理想がなんなのか分からないし見当もつかないのだが無理やり返すよりここにいたほうがまだ安全と言えるだろう。

 少し奥の方ではドラニコ達も見えた気がしたのだが気のせいだと思いたい。


 そしてクロは城の前まで来ると立ち止まり、【開呪】を城へと放つ。するとガラスが割れたような音が響き城全体を覆っていた魔術でできた膜が壊れ始める。


「やはりか」


【デモンズゲート】が相手の居るであろう城の中ではなく、城の外に出現した時点でこの城に魔術を無効化する何かしらのエンチャントが施されているのは間違いなく、さらに何か施されてているとふんでいたが、その考えは正しく闇魔術段位二【迷宮】が施されていたみたいだ。


「では、俺は城の中に入るがお前たちはそのままここで待機し、攻撃の意思がある者のみそのまま鎮圧をしていてくれ」

「わ、私もついて行くっ!」

「こらルシファー! 我が儘を言っては行けません! 嫌われますよ?」

「…むう……わ、わかった」


 クロの命令に納得いかないのかルシファーがクロについて行こうとするのだがそれをセラがたしなめる光景を見て微笑ましく思う。

 そのクロの表情を見てセラとルシファーが顔を赤らめクロに見とれているのだがそのことにクロは気づかないでいた。


「気持ちは嬉しいんだが、ここからは危険だから俺一人で行かせてくれないかな?」

「だったら尚更ついて行きます!」

「ルシファー、クロ様は私たちの身を案じておいでなのです。我慢しなさい。それに私たちを同行させないという事はクロ様にとってその程度でしかない敵なのでしょう。私たちが行けば足でまといになるのかもしれません」

「そういうことだ。それにもし無事に帰って来れたら俺が出来る範囲で望みを一つ叶えてや「待ってます!」…るさ」


 ただ向こうの魔王と一体一で話がしたいだけなのだが話をややこしくしたくないためセラに同意するのだがクロが言い終える前にルシファーがクロにくい気味で答え若干のけぞるクロ。そのルシファーの目には結婚という二文字が浮かんでいる気がするのだが見なかったことにしよう。


「そ、それは私の望みも…その…」

「ああ、もちろん叶えてやる。特に側近であるお前たち四人は今まで世話になったからな」


 ルシファーはまだ周りと比べれば新入りなのだが使用頻度が高いキャラであった事には変わりなく、共に攻略したクエストなどを懐かしく思う。

 今思うと本当に色々あった。その出来事一つ一つが走馬灯のように脳裏に浮かんでくる。


「なるべく早く帰って来てくださいねクロ様」

「ああ、善処するよ」


 そしてそう問いかけて来るセラの目にはピンクのモザイクが見えるのだが気のせいだろう。意外とむっつりスケベだったとは。意外である。

 そしてバハムートからも期待の眼差しを向けられ、アイコンに浮かんできたメッセージを開けば『話は聞きました。ウィンディーネ』とウィンディーネからメッセージが来ていた。なにこれ?怖い。

 まあここまでは分かるのだが、何故かボストンまで期待の眼差しをこちらに向け、その目には酒と書かれていた。

セバスチャン※執事とはセバスチャン、セバスチャンとは執事

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ