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ヴァンパイアの魔王異世界奮闘記  作者: Crosis
第五章
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害虫



「フム……この私が知らない魔術がまだこの世に存在するとは……いやはや長生きはしてみるものですね。 マドモアゼル」

「それはどうも。 ですが人間の皮を被った化け物は本日を持ちまして討伐させて頂きます。 世界は姿を変え 時さえ止めんとする極寒の世界を【フィードバック・ワールド】」

「ほう……炎魔術だけではなく氷魔術まで初めてみる魔術……この老骨久々に楽しめそうで何よりです。 炎魔術段位二【炎風】」

「援護しますミズキ!土と水の混合魔術段位三【泥の壁】」


 始めにミズキは氷魔術で世界を極寒かつ白銀の世界に変える魔術を発動し、それに抵抗すべくセバスチャンは文字通り炎の風を繰り出しミズキの魔術を相殺するだけではなくそのまま炎に飲み込むかに思われた。

 しかしその炎の風はメアリーの土と水の混合魔術により阻止する事に成功すると共に泥の壁は崩れ、そのままセバスチャンへなだれ込む。


「今の内に体制を整えますよ!」


 そしてセバスチャンが泥水に飲み込まれた姿を見たガーネットがすぐさま二人に指示を飛ばし追撃では無くセバスチャンの初撃で乱れてしまった体制を整えるように指示を飛ばす。

 そして体制を整えた三人は各々に付与魔術によりバフやダメージカットなどを誰に言われるでも無く互いに付与していく。

 その一連の流れは今まで幾度となく潜り抜けた死線の数を連想させる程、三人は呼吸の合った動きをしていた。


「水魔術段位三【正常化】」


しかし三人がかけた様々な付与はセバスチャンによるたった一つの魔術により全て剥がされてしまう。


「拳闘士スキル【鉄の一撃】」

「なっ…グフッ!」

「速い!! キャッ!?」

「カハッ!! なんと重い……一撃……」


 そして様々な付与を一気に剥がされ一瞬混乱してしまったミズキ達の隙を見逃す程の余裕は今のセバスチャンには無い。

 メアリー、ミズキ、ガーネットの順に腹を撃ち抜かれた三人は想像を超える衝撃とダメージに膝から崩れ落ちてしまう。

 そしてさらにその状態からセバスチャンの蹴り技が三人を捉え、吹き飛ばす。


「つ、強いです……。 まさかここまでとは思いませんでした」

「ちょっと油断し過ぎてしまいましたね。 しかし本気を出した私達に勝てる者などいませんよ」

「まさかこの私にダメージを与えれる相手がいるとは……」


「そのまま回れ右をして帰って頂ければありがたいのですが……どうやら帰る気は無いみたいですね」


 そして腹を穿ち蹴り飛ばしたミズキ達にそのまま自国に帰るようセバスチャンは言うのだが、彼女達の目は未だ闘志を宿し腹を抱えながらも立ち上がると戦闘体制を取る姿を見たセバスチャンはどこか悲しげな表情を見せる。


「当たり前でしょ? 有り得ない事ですが例え貴方が私達より強いとしても……私達はこの命尽きるまで人類の敵である魔族と闘うわね。 生半可な気持ちで勇者やってんじゃないんですよ」

「……魔族には、平和に暮らす事が許されないのですか? 貴方は抵抗しない魔族を、ましてや魔族の女子どもだとしても殺しても良いと?」


 ミズキとセバスチャンが会話をしている間、ミズキ達は回復魔法などで先程セバスチャンから受けたダメージを回復させていく。

しかしセバスチャンはそれに気づいた上でそれでもミズキ達の魔族に対する考え方を聞かなければならない気がした為、ミズキ達を回復させてまでその事を聞き出そうと問いかけてくる。


「は? 魔族は殺して当然でしょ。 セバスチャンさんは害虫を駆除する時成虫幼虫雄雌選り分けて駆除するの?」


 しかしその質問自体が間違っていると言えよう。

 魔族とは根絶させなければならない存在だと言うのに女性や子どもだからと言って生かす意味が無いのだから。

 それはガーネットもメアリーも同じらしく私の言葉に肯定する。


「そうですか……」

「どうせお前も悲しげな表情の下に醜い魔族の顔を隠しているんだろ? スキル【鉄壁】」

「水の魔術段位三【水の癒し】」


 そして受けたダメージを全回復させたガーネットが自身の防御力を急上昇させるスキルを施すとセバスチャンへと駆けて行く。

 それに遅れまいとメアリーも自動的に一定間隔で受けたダメージを回復させる魔術をガーネットに施しサポートに回って援護しだす。


「我が力は赤……世界は赤に染まり、赤に狂う破壊と暴力の渦巻く強大な力に呑み込まれん【ラース】」


 そして私も禁忌の魔術、その中でも比較的ポピュラーかつ最も攻撃に適した七つの大罪の一つ憤怒を発動させセバスチャンへ挑む。

 それにより急激なステータスの上昇に私の身体は軋み悲鳴を上げているのが分かるが、例え四肢が捥げようとも当然引くつもりなど毛頭無い。

 だと言うのにセバスチャンは私達三人相手にまだ余裕がある様である。


「化け物め」


 赤いオーラを纏いミズキが縦横無尽に戦場を駆け巡りセバスチャンを跳ね上がったその速さで翻弄し、攻撃して行く。

 その周りはミズキが駆け巡る度に姿形を変えながら戦闘を繰り広げる。

 そんなミズキの猛攻をセバスチャンは難なく避け、更に魔術により反撃までしてくる。

 それは最早人間だろうと例え魔族だろうと有り得ない強さである。

 まさに化け物と言っても過言ではないだろう。


 その間もセバスチャンはミズキによる猛攻の隙見つけ出し攻撃、それをガーネットが防ぐとメアリーが回復を施す。

 最早認めるしかない。このセバスチャンという男性は私よりも強いと。

 であるならば強者としての奢りは邪魔でしかなくいつまでも持っていては間違いなく負けるだろう。

 そして私は覚悟を決める。


「我青は常に欲する。どんなに満たそうとも満ちる事なき底なしの欲望【グリード】」


 七つの大罪を更に発動し強欲を自分にかける。


「我がミズキが命じる。その鍵を開き門を開けたまえ【魔力増殖炉】」


 七つの大罪の一つ【グリード】を使い自身の魔力値を大幅に増やす。

 そして発動前の魔力値では発動できなかった魔術【魔力増殖炉】を発動させ無尽蔵に魔力を回復させる魔術を自らに施す事に成功する。


 しかし身体は力を得るのとは対象的に悲鳴を上げ軋み目からは血が流れ落ちる。


「光の旋律は最早意味を成さず、あるのは崩れかけた虹の橋【蜃気楼】」


 さらにミズキは魔術【蜃気楼】を発動させ相手の攻撃を三分の一の確率で無効化させる施をさらに付与する。

 そしてミズキはこれらの魔術を発動するとともにさらに平行して魔法陣を複数展開させていた。

 それら魔法陣は全て自身の速度を上げる物である。


「ガーネット、ありがと! 良く耐えてくれました!」

「遅いよバカ。 しかし、あとは任せたよ……」


 その魔術及び魔法陣を行使する時間稼ぎをガーネットが稼いでくれていたみたいなのだが、最早限界だったのだろう。

 ミズキが前線に戻ると同時にガーネットは力尽き地面に倒れ伏す。


「ゴフッ………お見事」

「はあはあ………この化け物……やっと届いたぞ。 さあ早くその人の皮を剥ぎ本来の姿に戻ったらどうだ?」


そしてガーネットが地面に倒れ伏すその間にミズキは光の速さで手刀の突き技を放ちセバスチャンの胴に風穴を開けていた。


「いえ、初めに申した通り私は人間で有ります。 そして私は回復手段を持ちません 。胴に風穴を開けられては致命的でしょう。 それに魔族のみに見られるコアは……ないでしょう?」



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