メアの勇気◇
あてがわれた部屋に戻り就寝しようと布団へ入ると、布団が無駄に生暖かい事に気づく。布団の中にメアが無駄に入り込んでいたのだ。
布団の中から顔を赤らめ上目遣いで見つめてくるメアは無駄に可愛いのだが、俺からすれば無駄だらけである。
「何をしてるんだ…? いやいい。言わずとも解る」
この世界の女性は夜這いが趣味なのだろうか?そう思い一応ミイアの姿も探してみるがいないみたいである。
「ミイアは葡萄酒をいっぱい飲んだみたいでな、寝室に入るやいなや妹達と一緒に眠ってしまったみたいだ」
「…そうか」
そう言うとクロは布団から出ようとするのだがメアに腕を掴まれ阻止される。その顔は不安で溢れていた。
「私じゃ役不足なのはわかっているつもりだ。女性らしくないのは自分が良くわかっているからな」
そういうとメアは寂しげに笑う。
クロの腕を掴むメアの手は弱々しく、小さく震えていて気が付くと俺はメアの頭を優しく撫でていた。
俺は元の世界に妻子がいるし愛してもいる。今まで育った環境により刷り込まれた常識もある。しかし、今目の前の幼い女性を安心させる事が出来るのは俺しかいないのだと思うとそれらはムダな抵抗でしかなかった。
一人異世界に放り出された現実、一度死んでいるため元の世界に帰れないかもしれない不安、たとえ帰れたとしても生命保険など様々な問題があるため元の世界に帰れても妻子に会う事はできないだろう。
だからたった数日なのだがメアやミイアが今の俺の全てになりつつあり、それら不安や孤独を忘れさせてくれる存在になり二人に依存し始めてきていた。
俺の心は自分が思っているよりも弱っていた事に気づく。
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でいきなりドアをノックされドア越しにミヤコが話かけてくる。
「そういやクロさんはパジャマは必要かね?」
「いえ、大丈夫です」
「そうかい。ではおやすみよ」
「………」
「………」
「…ね、寝ようか」
「そ、そうだな」
多分ミヤコに全て聞かれていたと思うと一気に欲情した気持ちは消え去り背中に冷や汗が流れる。
メアも同じらしく真っ赤な顔をさらに真っ赤にして布団の中に隠れだす。
隠れたい気持ちは痛いほどわかる。親友の家でナニをはじめ、親友の祖母にバレやんわりと止められたのだ。俺なら死にたいと思うだろう。
しかし、少しして顔を出したメアはどこか嬉しげに見えた。
その幸せそうな顔を見て今までの行為を思い出すと、ミヤコに止められなかったらと思うと様々な罪悪感が俺を支配するのであった。
◇◆◆◇
朝起きると隣にメアが幸せそうに眠っていた。裸で。
俺が起きる動作でメアを起こしてしまったらしくメアが眠気眼をこすりながら上半身を起こす。一応胸を隠すようにシーツで覆っているのだが逆にその姿は扇情的で俺の男の部分を刺激する。
このままでは色々とヤバイのでストレージから生前使っていたワイシャツを取り出すとそれをメアに渡す。
「一度見られているとはいえその、恥ずかしいからあまりジロジロ見ないでくれ。……す、少しなら許すが…………」
などと恥じらいながらもそもそと着替え出すメアは初々しくて凄く可愛いらしく、着替え終わったその姿はまんま男のロマン、裸にワイシャツの完成である。
顔を赤らめ恥じらいつつも俺のワイシャツを着るメアの姿を見るとズキリと俺の胸を痛みが走り俺は最低な男だと思い知らされる。
俺はこの少女に妻子がいるのを隠し自らの欲望だけで手を出そうとしたのだ。
「あのだな…クロ。わ、私はお前の事が…す…す………凄いと思うぞ! 見た目に似合わず強い所とかな!」
「お、おう」
小さな声で「はは、何を言ってるんだ私の意気地なしと」と聞こえてくる。どうやら後戻りができない所まで来ているのだと知り頭を抱えたくなった。
そして胸に宿る小さな蕾をなんの蕾か気づかないフリをして偽善というハサミで切り取る。
ミヤコ婆さんが作ってくれた朝食を取りながら今日の活動について話し合う。
ドラニコに決闘で負けた俺は金貨五枚の借金があるのに加え、そろそろ脱マス○さんしたいのでマイホーム購入資金調達しなければならない。ムヌー一体の平均報酬が金貨二十枚なのでこれで借金は払えるのだがマイホームにはまだまだ遠い。
そんなこんなで今日はノクタスの森で魔獣討伐するつもりである。
一応この集落にも小さいながらギルドがあり、討伐リストに載っている魔獣を討伐すればそれに見合った金貨引換券がもらえ、街中にあるギルドまで行くとたいていの場合換金所があり金貨に変えてくれる。
ミイア曰く町外れの集落などに金貨の総数が少なく、せっかく討伐したのに報酬がもらえないなんていう事が起きないようにする処置なんだそうだ。
そしてメアはというとたまに会話には入って来るものの基本俺の方を向いて熱がこもった視線を向けてくる。
さらにいつもよりも気持ち俺寄りになっているメアと若干メアを意識してしまっている俺にミイアが気づいているのか、凄く聞きたそうにしていたらメアが吐いた。それも嬉しそうに。
その途端ミイアが「次は私ですよね?」と迫ってくるのであた。
◇◆メア視点◆◇
ノクタスの森の中、まるで眠っているかのように彼は倒れていた。
私も初めは眠っているものだと思っていたのだが、この森では魔獣などがたまに出没するため眠っているところ悪いのだが起こそうと声をかけるも一向に反応がないため彼が気絶している事に気付いたぐらいだ。
目覚めた彼はクロ・フリートと名乗り、男なのに体力は無く少し歩いただけで弱音を吐くような男性だった。
こんな弱そうな男性は好みではないし、見た目も彼は中性的でこれまた好みではない。ミイア辺りが好みそうな異性だなと思うも弱いんじゃミイアの長年の悩みも解消しないだろう。
初めはそんな風に思っていたのだが話せば悪い人間じゃない事が見受けられる。むしろこの世界では致命的なほどの警戒心の無さである。
だというのに彼に隙が見受けられない。彼と戦う姿を想像しても勝てるイメージが浮かばないのである。
そこで彼の服装を注意深く見てみると、マジックアイテムである事が見受けられる。
彼は魔法使いなのだろうか?
だがいくら魔法使いだからと行って体力が無さすぎる。
そう思っていたら彼がいきなり倒れてびっくりした。
はっきりいって不思議な男性だった。初夜は断られるし、この世界の常識もかけている。
そして何より彼は負けはしたもののあのドラニコを相手に大人が子供に手加減するかのように簡単にあしらったのである。
はっきりいって気にならないわけがない。気になりだすと自然と目で彼を追っていた。多分私は彼にいつの間にか恋したのだと気付き、母が私にいつも言っていた事を思い出した。
「きっかけなんか無くても気が付いた時にはたまらなく好きになっていた」
私は出会ったその日にもう恋の灯火は小さく灯っていたのかもしれないと思うと自然と顔が熱くなった。
そしてやはりミイアに発情期が来た。それはとても嬉しかったのだが、あのミイアがまさかあこまで激しくクロに対して攻めるとは思わなかった。
薬を飲めば発情期からくる性欲などは自分の意思で押さえられるほど軽いものになり少し身体が火照る程度までに落ち着くと聞く。
2日連続クロの寝ている隙にクロの布団に潜り込むミイアは、気持ちを聞かなくても彼女の気持ちが手に取るように分かる。
私もクロの事が気になって仕方がないのだがミイアと違って一歩踏み込む勇気を持てず、ぐずぐずしているうちにミイアに先を越される毎日をこれから過ごすのだろう。
冒険者として得た勇気は何故かこんな時に役にたたないのだから情けない。
そんな事を思いながらミイアの祖母の家につき、ミイアの妹達がいつもようにじゃれついて来てくれる。彼女達は人見知りなためクロを見ると警戒心丸出しだったのだが、すぐに慣れたらしくご飯の時間までクロとも遊んでいた。
その姿を眺めると胸が締め付けられるのだが、嫌な感じはしない。むしろ逆にずっと感じていたいとも思うのだがその締め付けは徐々にきつくなってきている気がする。
その晩ミイアは葡萄酒をまるで水のようにのんでいた。発情期が来ないという不安とそのせいで祖母に心配させてるという後ろめたさなどがなくなり、祖母の家に来た事がきっかけで改めて肩の荷が降りた事を再認識したのだろう。
「ふー…っ」
泥酔したミイアとミイアの妹たちを寝かした部屋で一人ため息をつく。
今ミイアが泥酔の末眠っているとい事は今日はチャンスなんじゃないのだろうか?
そう思うと自然と心臓が高鳴りだし緊張のためかため息が出てしまう。
ミイアの今までの苦労を知っている為たとえ夜這いする勇気があったとしても彼女に遠慮してしまい私は譲ってしまうのだろう。
だというのにこの身体は今がチャンスだというのに緊張ですくんでしまいまっすぐ歩く事もできないだろう。立っているだけでも辛い。
「すー…はー…」
それでも、なけなしの勇気を振り絞ってクロの部屋へと歩き出す。
夜這いは恥ずかしすぎるのだが、クロがいないうちにクロの布団へ潜り込むぐらいはなんとかできそうだ。
緊張と恥ずかしさでいうことを聞かない身体をなんとか動かしクロにあてがわれた部屋へ入り、その部屋の布団へと潜り込み息を潜める。
心臓が壊れたみたいに鼓動する。
部屋の外まで私の心臓の音が聞こえているかもしれない。
そう思うとさらに緊張感と恥ずかしさでさらに心臓の鼓動が激しくなる。
そもそも今私がやっている事は男性であるクロのやるべき事なのではないのか?とも思うがクロの生まれ育った国では両思いでなければそういう事をしてはいけないのだという。
そのため私とミイアは婚約止まりなのだが、彼曰くもし間違いがあった場合男性はその責任を取らないといけないらしい。
ならこちらからその間違いを犯す為に今こうしているのだ。
クロの気持ちは結婚してから徐々に私に惚れさせればいいだろう。
むしろこれが私が生まれ育った男女の関係であり常識なのだ。
しかし、もしここまでして断られたら、クロに軽蔑されたらと思うと今この場所から逃げ出したくなる。
そうだ。こんなことはやめよう。わざわざクロに嫌われるような事をしてなんになるのだ。
クロに嫌われるかもしれないと思い、それが怖くてたまらなくなったメアは今すぐこの場から退散しようとしたら誰かが布団の中に入って来ようとし、しかし途中で布団に入るのをやめると中を確認するために布団を剥ぎ取る。
「何をしてるんだ…? いやいい。言わずとも解る」
布団を剥ぎ取った人物はやはりクロであった。
彼が私を見る目は冷たく思え、口からでる言葉は諦めや落胆という感情を感じる。
嫌われた。
そう思った。
そして私からゆっくりと遠ざかろうとするクロの腕を咄嗟につかむ。行かないで、嫌いにならないで、と想いを込めて。
するとクロが優しく頭を撫でてくれる。それだけで私は幸せに包まれ今までの不安が嘘のように消えていき、代わりに温かな思いが溢れてくる。
そこからはもう幸せすぎて、気持ち良すぎて、好きすぎて、幸福すぎる時間だった。
途中ミヤコ婆さんに邪魔されたのだが、クロが私とそういう行為をしてくれる。それを思うと嬉しさがこみ上げてくる。
だってそれはクロも私の事が好きなんだという表れだから。
次こそは最後まで行きたい。その次を知りたい。今以上にクロを知りたい。
勇気を出して良かった。
フー…フー…※初めての快感に軽くイッてもなお羞恥心が勝りシーツを加えて声を抑えようとする息遣いの音