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ヴァンパイアの魔王異世界奮闘記  作者: Crosis
第四章
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婚約者との再会

「メアさん……一応クロさんは私達の彼氏であり、メアさん達は一度はクロを見捨てたという事をお忘れではないですか?」


 そしてメアのその姿を見て珍しくもターニャが厳しく指摘する。

 ターニャとてメアとミイアの行いとそれでもクロに対する態度に対し良く思っていない為我慢出来ず自分らしくもない行動をしてしまう。

 それもこれも全てはクロを想っているからこそなのだが、だからこそ盲目でもあるのは致し方無い事である。


「そもそも本来なら私もあなた達の様にクロさんと肌を密着させてイチャイチャしたいのに……は、恥ずかしくて今までどれほど我慢して来たと思っているんですかっ!ど、どいて下さい!」


 そう言うとターニャは持ち前の、牛の獣人としてのパワーをここぞとばかり使いメアとミイアをクロからひっぺがすとミイアがいた場所、クロの膝の上を陣取るとミイアがそうしていたように正面からクロに抱きつく。

 ただミイアと唯一違う点はターニャが膝立ちであるという事である。

 それによりクロはメアとまた違った柔らかさを頭全体使い感じ取ってしまう。

 その際自然とクロの口元が緩んでしまうのは太陽が東から昇り西に沈むのと同じくらい覆せない事であるとクロは思う。


 だからこそ、抗えないからこそ、先程から感じる殺気が更に膨れ上がる。

 しかしその殺気もクロの「お前の慎ましやかな胸もそれをコンプレックスとしているお前も俺は好きだ」という妙に力が入った口パクを読み取ると急に萎み始め今度はピンク色のオーラを撒き散らし始める。


「お、お前達はクロが魔族と聞いてビビらないという事は、既にクロが魔族であると知っていてクロと付き合っているんだな」

「ええ。そしてあの大魔王だと言う事も皆んな理解して付き合っています」


 そんなターニャ達を見てメアが羨ましそうに、もう手に入らない大切な何かを思い出す様に呟くと、誰にも聞かせるつもりが無いその小さな呟きにサラがどこか誇らしげに答えてくれる。


「クロだから好きになったんです」


 あの時自分もサラの様に胸を張ってそう言い返せれたらと、あの日から尽きぬ後悔が今日は一段と強くメアを襲う。

 それはミイアとて同じ事でありやはりメア同様に胸をしめ付けられるようである。


「クロさん……あぁクロさん……あんっ、クロさんの息がっ」

「ちょ、ちょっとターニャ変わりなさいよ!うらやまけしからん!」

「あと一週間待って下さいキンバリー……あぁ、クロさんの匂い…クロさんの息づかい……んっ」

「ちょっ!?一週間って、馬鹿なこととを言ってないで変わりなさいって!」

「クロさんクロさんクロさんクロさんクロさん…………すぅー……………はぁー……っクロさんの頭の匂い……たまらないです」


 ターニャの行き過ぎたスキンスップが羨ましく思うキンバリーがその立場を変わって欲しいと半ば強引に引き剥がしにかかるのだがそうすればする程ターニャは引き剥がされまいとクロに抱きつき、その際鼻をクロの頭髪に埋め深呼吸までしだしターニャの顔はとろけ緩みだらし無い表情を浮かべる。


「ターニャ……キンンバリーもそう言いてる事ですし何よりみんなのクロです。クロの頭の匂いを嗅ぐなんてうらやまけしからん……じゃなくてっ、独り占めは良くないと思いますのでわ、た、し、と、っ…変わりなさいっ!」


 そしてそんなターニャの行き過ぎたスキンスップによりサラまでもがキンバリーと一緒にターニャを引き剥がしにかかる。


 あぁ…前後左右に違った柔らかさを持ちながらどれも甲乙付けがたい魅力的な感触が今俺を包んでくれている。

 これがかの三蔵法師が探し求めた天竺ではないのだろうか?きっとそうなのだろう。


「私もお兄ちゃんの頭の匂いを嗅ぎたいから早く変わって下さいね!」


 その瞬間空気と時間が確かに凍った気がした。

 前後左右からあの幸せな感触があるという事は四人分のお胸様があるわけで、今いるメンバーでこれ程の質量を持つお胸様をお持ちのお方は大人の姿になったルルか楓ぐらい……しかしルルは今居るものの残念ながら少女の姿。

 ならばさっきの声の主は楓か……楓であれ…楓であって下さい何でもするから。


「ん?今お兄ちゃん「何でもする」って言ったよね?」

「アーシェ・ヘルミオネ…今貴女からただならぬ雰囲気を…感じとりました。マスターから直ちに離れて下さい……」

「……人の思考を勝手に読まないでくれ……あとお前には言ってない…断じて!」


 しかしクロの願いは無残にも打ち砕かれ、既にほぼその人物もといストーカーであると確信めいたものがあったのだが楓によりその人物がアーシェであると確定してしまう。


「えー……ちょっとくらい大人のスポーツをするぐらい良いじゃない、お兄ちゃん。大丈夫、私未経験だから!」


 そしてそのアーシェはクロを先ほどよりも少し強く後ろから抱き締めるとほぼ隠しきれていないド直球を放り投げて来る。

 未経験だからなんだと言うのだ。問題なのは、それがアーシェかアーシェじゃないかなのだから。


「お兄ちゃん、彼女と婚約者と奴隷と家臣と保護してる合法ロリ……一体何人の女性を囲えば気が済むのかな?私は何人囲おうと一向に構わないんだけどお兄ちゃん的にどうなのかな?」


 クロの耳元でアーシェがクロにだけ聞こえる声で話しかけてくる。

 その行為を見て他の女性陣は羨ましそうに、もしくは怒りの籠った目で二人を眺めているのだがクロからしてみれば見るだけではなく素直にこの状況から助けてほしい限りである。

 アーシェが放った言葉はもはや脅しでありクロの貞操を奪うための恐喝である。

 なのでこの危機的状況を作り出したのはクロではなくアーシェ・ヘルミオネであり決して四人の女性と交際し、二人の女性と婚約し、女性奴隷を一人栫、合法ロリの保護者であるからでは断じてないと先に言っておこう。


 そう、悪いのは俺じゃない。


「奥さんと娘……特に奥さんに今のクロの現状を明確に分りやすく伝える魔術ってないのかな?お兄ちゃん」


 そしてなおもアーシェはクロの耳元で、脊髄に響き脳の奥が震えるような妖艶さで話しかけてくる。

 中身がアーシェでなければ一瞬でクロの理性はなくなっていただろう。


「……」

「この武術大会が終わったら待ってるからね。これ以上は私待てないから何しでかすか分らないから」

「……分った」


 その瞬間のアーシェの表情は一生忘れることができないくらい美しかった。



◇◆◆◇



 エシリアは考えていた。

 大会で一勝できたとはいえ所詮たかが一勝である。

 私たちからすれば大きい事なのだか周りからすれば小さなことであることは分っているし理解もしていた。

 しかし師匠であるクロ・フリートからもう少し何かあってもよかたのではないか?

 私たちの今までの苦労を口頭によるものではあるが知っているのである。

 であるならばもっと大々的に祝ってくれてもよかったのではないのかと、思ってしまう。

 もちろん翌日も試合があるため武術大会が終わってからというのもわかるのだがそう思わずにはいられない自分がいることにエシリアは気付いてしまう。

 そしてその感情がどこから来るものなのかを。

 今までその感情がどこから来るものなのかいまいち分らなかったのだが分ってしまえば今まで自分らしくもない感情や行動も納得がいく。

 しかし遠くからお師匠様を盗み見る度にこの愛おしい気持ちが膨れ上がってくるのだ。

 この気持ちの正体が分かってからは押し殺さなければと日々気付かないフリをしていたのだがそれももう限界に近いところまで来ている。


「だからと言って一歩踏み出す勇気も無いのですが……」


 それが出来ているのならば今更こんな事で悩んでは居ないだろう。

 それでもこれ程までに悩まなければならないほど想いを日々募らせて行っているのだから余計にタチが悪い。


「どうしたのですか?エシリア。気分でも悪いの?」

「いえ、麻疹みたいなものだと伺っていますし気分が悪いわけでも病気でもなくわたし個人の問題ですので……」


 そんな初恋による恋心を持て余していた自分を気づかいレニアが声をかけて来てくれる。

 彼女は彼女で私と同じ気持ちをお師匠様に抱いているはずなのにその優しさが嬉しくも思う。

 しかし彼女自身その気持ちに気付いているかどうかは微妙なところではあるのだが。


「単に自分の初恋という気持ちを持て余しているだけですのよ。ほっとけば気持ちも落ち着くでしょうからほっときなさいな」

「なっぁ……なっ、なっ、……っ!?」

「自分の気持ちに気付けているのがあなただけだと思っているのでしたらそれは間違いですわよ?」

「なんだ、エシリアもお師匠様に恋してたんですね!」


 前言撤回、どうやらレニアも、そしてユーコも自分の気持ちに気付けていたみたいである。そしてその気持ちとの付き合い方も。

 しかしそれはそれこれはこれである。幾ら何でもユーコの発言は酷すぎる気がする。


「しっ……知っていたっ、わかって、あぅ……あぁもうっ!気付いていたのでしたらわざわざその様な言い方をしなくてもいいじゃないですかユーコ!」


 ユーコに対して叱責しようとするのだがなぜか想像以上にテンパってしまいもうグダグダであるも言いたい内容は何とか強引に言う事は出来た。


「わかりましたから。先ほどの件は謝りますから落ち着きなさいな。図星突かれてテンパるってどれほどの初心だと言うのですか……」

「うぅ……だって」


 だって初めての恋なのだからどうこの気持ちと付き合えば良いのか分からないのは仕方ないじゃないですか。


 そんな言葉を誰にも聞こえない声でつぶやく。


「逆にレニアやユーコはこの気持ちをどう制御しているのですか?」


 レニアもユーコも過去に付き合った殿方どころか好きになった殿方も居ないと言っていたので私と同じく初恋だと言うのに私だけ取り乱しているこの現状に納得出来ないのは仕方のない事であろう。


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