表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ヴァンパイアの魔王異世界奮闘記  作者: Crosis
第三章
46/121

主の常套手段

 何故ブラッドの命令にコレクションでもある死者達が動く気配すら見せないのかブラッドは勿論コンラッドも疑問に思っている中緊張感の欠片もない無い声がその真相を説明する。


「ば、馬鹿な…。何体動かしていたと思っているんだ。軽く千体は超えているんだぞ……?」


 そんな彼女の説明を受けブラッドが誰に言うでもなく静かに呟く。


「それを言うならお前も千体を同時に操っている……ならその全てを同時に操れなくできる魔術やスキルもある……寧ろウィンディーネが使った魔術は一般的な部類……それすら知らないなんて……」


 その呟きに黒髪の少女が答える。そんな簡単な事も理解できないのかと明らかに見下した目線をブラッドに向け。


 しかし、ブラッドが操る屍達は確かに驚異ではあるのだが所詮は人間の屍であり、死者であるためスキルや魔術も使えず意思もないただの人形である。

 そのため個の強さはたかが知れており単に数の暴力で潰されることから回避出来ただけに過ぎない。

 人形と化した屍千体よりもブラッド・デイモンを倒す方が遥かに困難であり驚異なのである。


「あー…もう、イライラするなぁ……僕の邪魔をするなよ小娘ごときがっ!!闇魔術段位五【暗黒連弾】」

「ポチ…殺さない程度に遊んであげて」


 そしてついにブラッドが憤怒の感情を抑える事をやめ自ら強力な魔術を使ってきたのだが先ほど黒髪の少女、ルシファーが召喚した召喚獣であろう巨大な巨躯をした魔狼にブラッドの相手をしろと指示を出す。

 正直コンラッドはたかが召喚獣如きがあのブラッド・デイモンの相手など出来るはずがないと思っていたのだが彼女が召喚した魔獣は見事ブラッドの強力な魔術をその巨躯で受けきり更に反撃をする。


「何でたかが召喚獣如きが僕の魔術を受けきるんだよ!?イライラするイライラするイライラするイライラする!!火魔術段位六【豪炎】」

「……これでクロ様と同じヴァンパイア……はぁ、もういい…ポチ、息の根にして」

「段位三程度の召喚獣如きで!!僕を馬鹿にするなぁぁぁぁああっ!!闇・火混合魔術段位八【黒炎地獄】」

「はいはい凄い凄い」

「な、なんで効かない…?僕の一番強い魔術だぞ……ぐぅ!?」


 ルシファーの召喚獣とブラッドの攻防はまさに有り得ない展開であり、ブラッドのみならずコンラッドまで本来有利な展開に喜ぶはずがその異様な光景に恐怖すら覚えるほどである。

 召喚魔術段位三で召喚された召喚獣は基本その一段下の段位魔術程度のダメージで消滅してしまう存在である。

 だというのに目の前の召喚獣は二段どころか六段の魔術を受けても消滅せず、更に八段という恐ろしい魔術すらものともせずブラッドの右腕を食い千切る。

 まさに化物そのものであろう。


 その異様さに辺りが静まり返った時、件の召喚獣の方から何かが落ちる音が何回か聞こえ始める。

召喚獣の方を見るとその巨躯が崩れ、溶け出し、重力により地面に落ちているのが見える。


「な、なんだ……やっぱりダメージを喰らってるじゃないか」


そう安堵するブラッドとは対照的に異様な姿をしている召喚獣の巨躯が崩れ落ちる度にコンラッドの部下達は恐怖していく。


「……ダメージで崩れてるんじゃない……そもそもこのポチは如何なるダメージも受け付けない……たんに維持コストである『召喚したプレイヤーの体力の12パーセント』を支払っていないだけ……だから……私の体力の12パーセントを支払うと……元に戻る」


ルシファーがそう言うとポチと呼ばれている、肉が削げ落ち所々骨が見え始めている件の召喚獣が濃い紫色した光に包まれたかと思うと次の瞬間には召喚された当初と遜色のない身体をしたポチが姿を現した。

 あの強さなのだ何も無い訳がないとは思ってはいたがやはりデメリットはあったらしい。


「あっはははははは!!なるほど!これは凄いや!僕のオモチャなんかより全然凄いよ!……でも、これじゃ僕を倒せない、絶対にだ」


 そしてその光景を目にしてブラッドは焦るわけでも無く寧ろ勝利を確信したかのように、先程まで不機嫌だったのが嘘のように笑い出す。

 そしてコンラッドもまた、ポチという召喚獣のデメリットを聞きブラッドとは勝てないと悟る。


「僕はそのポチとやらと同じで僕に与えられるあらゆるダメージを軽減し、ゼロにするオートスキルを持っているからね!そのポチを使役し続けている限り君は勝手に体力を失っていくという事だからね!」


 実に嬉しそうに自身のオートスキルの一つを暴露し、ポチにより負傷した箇所が治っていく所をわざわざルシファーに見えるように話すブラッド。

 彼のオートスキルはあらゆる発生源のダメージを軽減しゼロにしてしまうというのは間違いなく、魔術やスキルその他様々なダメージはブラッドには聞かない。


 理解はしていたつもりではあったのだが彼女が召喚した召喚獣なら……という期待が無かった訳ではない。

 やはり彼には勝てる要素は無く、例えこの世界最強の生物エンシェントドラゴンである白竜様でさえ彼を殺す事は出来ないのかもしれない。


「………お前……自分のオートスキルをバラしてしまうなんて……馬鹿なの?……闇魔術段位三【闇の恩恵】エンチャント対象はポチ」

「無駄だよ何をしても。それは数百年生きてきた僕が断言するね。何をしてもどんな威力でも 僕にダメージは与えれない」


「ダメージを与えれないだけで……体力ゲージを減らす事が出来ないという意味ではない……ポチ、遊んであげて」


 強靭な肉体を有し、強大な魔力から高段位魔術を詠唱し、ダメージを軽減して受け付けない。そんな化け物を目の前にしてもルシファーは恐怖に怯えた様子は微塵もなく、ポチと呼ばれている召喚獣をブラッドへ今一度差し向ける。

そしていくらポチという召喚獣が強く、ポチの攻撃があたりブラッドの腹を切り裂こうが足の骨を折ろうが次の瞬間にはブラッドの身体は元通りに治っている。


 しかしブラッドもただやられているわけでは無くその強靭な肉体や強大な魔力を使い反撃し召喚獣であるポチと互角の戦いを繰り広げている。

 その間何度か自身の体力を召喚獣維持費として捧げたのかルシファーは戦闘が長引くにつれ息苦しそうにし始める。


 受けたダメージを軽減しゼロにするブラッドに対して維持コストに自身の体力を支払わなければならい召喚獣を使役するルシファーの戦いは、戦闘が長引けば長引く程ブラッド優勢である事がルシファーの表情から見ても明らかである。

 だというのに彼女の仲間であるはずのセラとウィンディーネは口喧嘩を終えるとルシファーの助太刀として参戦する事もなくレイチェルとミセルも加わり四人で談笑し始める。

 しかし従者であろうレイチェルとミセルはさすがに様子が気になるのか時折ルシファーの方に目線を向けている。


「ポチに闇魔術段位三【闇の恩恵】をダークネスドックにエンチャントして順調に攻撃を与えているのですから問題ないです。それに、ルシファーの体力ゲージが半分を切ったら私かウィンディーネが回復させます」


 そんな従者の二人に見兼ねてかセラが心配する必要は何も無いと、まるでルシファーがブラッドに負ける事など有り得ないとでも言うように諭すセラ。


「巫山戯るな!!この僕がっ!この小娘にっ!負ける訳が無いだろうっ!」


 そのやり取りを聞いたブラッドが激高し、セラに向けて叫ぶのだがその間もポチの猛攻は止まずブラッドを襲い続けている。


「ん……そろそろ終わりにする」


 そんな中ルシファーの呟きが戦闘音を掻い潜りコンラッドの耳に入るも、その内容に聞き間違いではないかと思わずにはいられない。

 ブラッドは受けるダメージを軽減しており未だ無傷である。そもそもダメージを軽減してしまう相手をどうやって倒すのかコンラッドにはいくら考えても見当もつかない。


「やっとこの僕を倒す事を諦めてくれたのかな?無駄な抵抗を辞め素直に殺される事を受け入れる君に免じて拷問は無しで苦しみのない殺し方をえらばしてあげるよ」


「……殺しはしないから……安心して」

「せいぜい無駄な足掻きをして僕に噛み付いたのを後悔するんだな」


 ブラッドの挑発とも取れる言葉に余裕めいた表情で返すルシファー。

 対してブラッドもまたその表情からは揺るぎ無い勝利を確信した様な態度と言動なのだがルシファーの言葉に苛立っているようにも見受けられる。


「……エンチャント型闇魔術段位二【月の加護】エンチャント対象……ブラッド」


 そんな中ルシファーはブラッドの苛立ちを知ってか知らずか未だマイペースさを崩さずエンチャント型魔術を詠唱しブラッドにエンチャントするとブラッドの身体が仄かに数秒間淡い光を放ち始め緩やかに収まる。

 エンチャントされたブラッドはこの現象に嫌悪感を露わにするも謎の現象が収まった後になっても自身の身体に何ら異常は見当たらない為ルシファーに向けて「何をした」と目線を投げかける。


「……この魔術はエンチャントされた対象者の体力がゼロになった時に……一度だけその体力を1にするだけ……」

「まさかお前、本気で俺を殺せると思っているのか?不愉快極まりない言動ではあるがだからこそ余計に滑稽に見えるよ」


 そしてルシファーはブラッドの疑問に答え、その答えを聞きブラッドはルシファーを見下す様にせせら笑う。


「……ポチ、貯まった蓄積カウンターを5個取り除くから……おいで。対象はあのバカ」

「そのポチを引っ込めてしまって良いのかな?これで貴様を殺しに行ける………ぐぅぅぅっ!?何だこれは……身体から生気が抜けて行く様だ……貴様ぁ、一体何を……がぁあっ!!このままでは、死んでしまう……この俺様が!?有り得ないぃぃい!!そんな事が有ってはならないんだよっ!!」


 ブラッドと互角に渡り合っていた召喚獣をルシファーが何故か下がらせたのだが、これを千載一遇のチャンスと捉えたブラッドは一気にルシファーの方に距離を詰め寄ろうとするのだが、その途中ブラッドのは経験した事のない虚脱感を感じ自身の身体から生気が無くなって行っている事に絵も知れぬ恐怖を抱く。


「……ポチにエンチャントしていた闇魔術段位三【闇の恩恵】はエンチャントされた者が相手にダメージを与えるたびに蓄積カウンターを一つ蓄積して行く……そしてその蓄積カウンターを一つ取り除く事で相手の体力の最大数値から見た一割の数値を失うことが出来る……お前の能力は一度ダメージを受けてからそのダメージを軽減している事、そして【闇の恩恵】の能力はダメージではない為軽減され無い……クロ様がよく使う……ダメージ軽減系の相手に対す常套手段の一つ……そういう訳でもう五つカウンターをポチから取り除く」


 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ