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ヴァンパイアの魔王異世界奮闘記  作者: Crosis
第三章
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匂い

大会まで一ヶ月を切りここベルホルンはにわかに活気付き始めている。

そんな中クロは学園の練習場であるグラウンドに生徒であるレニア、ユーコ、エシリアを呼び寄せ今日の授業の説明をしだす。


「今日は向こう側にいるチームと模擬戦をしてもらう」

「……へ?」

「い、今何と…?」

「聞き間違いかしら?今あちらの方達と模擬戦をすると聞こえたのですけれどもそ…そそ…そんな訳ないですわよね?」


そしてクロの短い練習内容と説明にレニア達は冗談であって欲しいとクロに今一度説明を求める。


「聞き間違いじゃない。模擬戦だ。いきなり本番を迎え緊張で本来の力を発揮出来ず負けるなんて嫌だろ?」


クロがそう言うと三人は首を縦にふり、クロの次の言葉を真剣な面持ちで待ち構える。


「その為に今から一ヶ月はみっちりと模擬戦を組ん出来た。試合本番とまでは行かないまでも試合の空気に慣れる事が今後の目標で課題だ」


本番で緊張してしまうのは仕方ないとは思うが、それが適度な緊張感なら良いのだが度がすぎると本来の力を発揮出来ず負けてしまうのは今まで必死に練習してきたレニア達を間近で見てきたクロからすれば回避させてあげたい課題である。


負けるのなら全力を出させてあげて負けさせてやりたい。


もちろん勝たせてやりたいと当然思っているのだが今回の大会で悔いだけは残して欲しくないと思う。


そこでぶっつけ本番で久しぶりの試合による緊張と本番という緊張、自分の力が本当に学生達に通用するのかという緊張から、試合に慣れさせ自分達の力量を把握させて学生達にも通用するという自信を持たせる事で上の三つの緊張する原因のうち二つを取り除いてやるのが模擬戦をする理由である。


「し、しかしお師匠様…?」

「何だレニア?」

「あそこに見えるお方達は……わたしの見間違いで無ければランクBの冒険者さん三名に見えるのですが…?」

「よく分かったな。サラの呼びかけで二つ返事でこれから毎日違う冒険者達と模擬戦の相手をしてくれるらしいぞ」


そしてクロが連れてきたチームはランクBの冒険者パーティーでもあり、その事に気付いたレニアはたかだか学生である自分達ににランクBの冒険者は荷が重過ぎるとクロに視線をやるのだがレニアに視線を向けられたクロは何故か誇らしげにこれから毎日冒険者さん達と模擬戦をする事を告げられる。


「そ、そんなっ!?私達に敵う相手ではありませんわ!」

「まあそこはたたかってみて判断すればいいさ」


そして模擬戦の相手がランクBだと知りユーコがカサカサとクロに詰め寄るのだがクロに一度闘ってから判断しろと返されてしまう。


「お父様……?」


そしてレニア達が模擬戦を始め、サラとアルがタブレットでその様子を動画で録り改善点を録った動画を見ながら指摘していく。

この流れが三周ほどした所でクロの隣で一緒に模擬戦を観戦していたルルがどこか不満げな表情でクロを呼ぶ。


「ん?どうしたルル?」

「……暇で暇で、お父様にキスしてもらえないと死んでしまう」

「………ならそのまま……死んでしまいなさい」


とりあえず不満がありそうなので聞いてみるのだがルルが言葉を発した直後楓がピシャリと鰾膠も無い態度でぶった斬る。


「……お父様…怖い」

「………余程……死にたいの……ですか……?」

「まあ、楓もいきなり死んでしまえってのはどうかと思うぞ?ルルも楓をいちいち煽るんじゃない」


そしてルルはクロの背後に回りクロにしがみつくき楓に向けられるその顔は「バーカ」と如実に語っており、その顔を見た楓の無表情な額に青筋が浮かぶ。

流石にクロが仲裁に入るのだが険悪なムードまでは無くす事はできなかったみたいである。


ちなみルルの見た目は出会った頃の妖艶な出で立ちと異なり十歳前後の体型になっていた。

アル曰く長年その眼から大量の魔力を注がれたルルの身体は人間よりも精霊に近い身体に変化し、クロにより消滅は防げたものの魔力の源である眼の能力が奪われ結果として元の身体では体型を維持出来ず最も安定する身体になったのでは?だそうだ。


「まったく、仲良く出来ないのか?お前達は…そうだな…今日一日仲良く出来たら御褒美をやらんでもないんだがな」

「え?実は楓とは仲凄く良いのよ?お父様」

「そうです。……喧嘩するほど……という事なのです。実は物凄く……仲良しなのです」


未だに睨み合ってるルルと楓なのだがクロに仲良く出来たら御褒美をやらんでもないと言われた瞬間息が合った様に仲良しアピールをしだす。


なんだかんだで仲良い気がするんだけどな……。


そんな姿を見せられては実は仲良しなんじゃ?と思ってしまう。


「お師匠様!!このスキルの躱しかたなんですがっ!!」

「分かった、今行く。どのスキルだ?」

「【剛掌打•三連】ですの」

「避けようとしても拳が私達の動きを予測しているかのように追尾して来るんです」

「ああ、それはな……」




◇◆◆◇



「この話が本当なら神成者ルル•エストワレーゼは死んだとみて良いんだな?」

「俺は生きてると思うけどな。あの魔眼女は俺らでも対処のしようがない化け物なんだぜ?まあ一度は犯してみたい女でもあるな。」

「黙らぬか。下品な」

広さはあるが灯りがなく、昼間だというのに仄暗い部屋の中に長机が真ん中に置かれ椅子が十二脚据えられてるのだが今現在その椅子に座っているのは五人。


「勝手に敵視し潰れるのは構わないが俺を巻き込むな。ルルが敗れた時点で奴は俺らより強い。認めるしかないだろ」

「誰が認めるか!!この世界で一番強いのは儂じゃ!!」


その五人のうち一人の発言に聞き捨てならないと老人が激昂する。


「……どうやら死にてぇらしいなクソ爺。五体満足で死ねると思うなよ?世界一?この俺よりも弱いのにか?」

「いつ儂がお主より弱い事になったのかの?………」

「………フン、小細工が通用するとでも思ったのか?」


そう言うなり彼と老人の間で甲高い金属音と共に文字どうり火花が散る。


「……喧嘩は許さないよ」

「………命拾いしたな小童」

「貴様がな」


そして一触即発な空気をローブで身体を覆い隠した老婆の一言で収まりを見せ始める。


「お前さん達が闘った所でルルでは勝てなかった事実が変わる訳じゃなかろうて」

「しかしな婆さん…ルルがあの野郎に負けて出来た欠番はどうすんだ?そして奴は我々の存在を明るみに晒してしまう危険性もある。ルルの存在は生きる死神として世間に知れ渡っていたのだが我々神の領域に住まう者の存在はまだ知られて居らず天災として扱われていたが、今後奴に手を下そうとすれば人の目は避けられないだろう……タダでさえ我々の領域に土足で踏みにじりやがったんだ。ピリピリするなという方が無理ってもんだぜ」


しかし場の空気までは変わらず緊張感が漂う中、顔にかかっている長い金髪を鬱陶しそうにかき上げながら唯一緊張感とは無縁のように思える飄々とした男がしゃべるのだが、しかしその眼には確かな怒りを宿しているのがうかがえる。


「確かに、ロイの言う通り我々の計画上我々の存在を世間に知られては困る。だが、これ以上メンバーから欠員が出ても困る。それに奴を倒した所で魔王アーシェはどうする?」

「そんな事は決まっている。アーシェ•ヘルミオネもクロ•フリートも俺が殺す」


軍服を纏った男性がロイという男性に質問で返すとロイにしては珍しくその顔はいつもの飄々とした表情では無く内なる感情を隠しもせず表に出し、二人とも消し去ると宣言すると側に立て掛けていた自身の身長よりも長く、大きな大鎌を手にし話は終わりだと言いたげにその場を出て行く。


「リン、ラン」

「「なんでしょうっ!?お婆様!!」」

「ロイの後をつけて来なさい。何かあれば……回収して来るんだよ?」

「「分かりましたっ!!それでは行ってきます!!」」


そしてロイが部屋を出た後、ローブを被った老婆が十歳前後の男の子と女の子を呼ぶと、二人にロイの後をつけいつものように回収する事を命令する。

すると二人はロイの後を音も無く瞬時に姿を消す。

その子供二人には血色が無く全体知的に紫がかっていた。




◇◆◆◇



クロさんがここカウベル亭に来始めて早五ヶ月位の月日が経った。

そのクロさんはレニアさん達の講師でもありサラさんの彼氏でもある。


「はぁ……」


これで何度目かのため息を吐く。


私がサラさんぐらい魅力的な女性ならクロさんを彼氏にできるのだろうか?


いや、出来ないだろう。

そう思いながら自分の胸を軽く揉む。

この胸がコンプレックスで今まで男性との交流は学校のクラスメートの挨拶ぐらいである。

花も恥じらう年齢も過ぎ、周りはどんどん結婚して行き気付けば私は二十歳である。


いわゆる行き遅れという奴なのだ私は。




だからだろうか……この匂いは子宮に効きすぎる。この匂いのせいで毎日自分を慰めずにはいられなくなってしまっている程に……。




「あら、ターニャさんじゃない」

「ひゃっ!?だ、誰ですかっ!?ってキンバリー……驚かさないで下さい」


するといきなり肩を軽く叩かれビックリしてしまうのだが、しかしそれがギルド受付嬢で私の友人でもあるキンバリーだと知り安心する。


「まあ、それはさて置き……ターニャさん、今ここで何をしてたんですか?」

「な、なななななななっ……何のここ、こっ…ことですか?お客様の衣服をこれから洗濯しようと思っていたところですがっ!?」


あ、危なかった。もう少しで私のはしたない姿を見られる所だった……。


「ふーん………」

「な、何よ?」

「やっぱりたまらない匂いだった?」

「な……何の事かしら………………何処から見てたの?」

「クロさんの下着を手にし深呼吸しながらヤバい目をしだすところから」


ふふふふふふ……終わった……。


あのキンバリーがいやらしい笑顔をしていたのだ。私の思い過ごしだと信じていたのだけれどもやはり見られていたらしい。

私と違い花も恥じらう乙女絶頂期であるキンバリーにはさぞ滑稽に見えた事だろう。


あれ?何故か目から涙が……。


「ふふふ………」

「すー………っ………はー………っ……こ、これは確かにヤバいよね……私も癖になっちゃったわ」

「…………って、何やってるんですか!?返しなさい!」

「いいじゃない。減るもんじゃないし……スーハースーハーすぅーーーーはぁーーーー」

「減ります!減る!減るから!!減るって言ってんでしょうがぁぁぁぁあっ!!」


そしてキンバリーとクロさんの下着の奪い合いが始まるのだが、これで分かった。


「お前もクロさんの下着を嗅ぎに来てたのね!?」

「気付くのが遅いのよ!!おほほほほ。もう日課ですぅー」

「この犬娘が!!離しなさいっ!」

「ターニャさんこそ離してよこの乳お化け!」


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