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ヴァンパイアの魔王異世界奮闘記  作者: Crosis
第二章
31/121

メイド型アーティファクト

「では、参ります。【夢遊病】」

「【目くらまし】そして【火の粉】」

「あら、やはり貴方も使えたんですね【目くらまし】それと【水弾】」

「【目くらまし】まぁ、基本中の基本だからな【冤罪】」


 そしてルルとクロと戦いが静かに始まるのだが、お互い一歩も動かず生み出される魔術とそれを打ち消すカウンタースペルの攻防が続く。

 しかし魔術発動の際にワンクッションが必要なクロに対し、【研ぎ澄まされた知識】のお陰で魔術段位三までなら段位一で発動できるルルとではやはりクロには不利なため徐々に打ち消せれない魔術が増えていき被弾し始める。


「ご、ご主人様っ」

「問題ないから黙って見ていろ【泡の中の幻】さらに【光の壁】」

「小賢しい事をしてくれます。しかし段位の高い魔術を使えば使うほど私との魔力量で差が広がる事に気づいていない貴方ではないでしょう?」

「まぁな。だがこれでアルの安全を確保できるのなら安いものさ」


 クロは魔術段位五、水魔術【泡の中の幻】を使う事により魔術段位三である白魔術【光の壁】をアルに施す。

 これによりアルの安全は確保できた代わりにアルからの援護もできなくなるのだが寧ろ足でまといになりそうなのでアルには悪いが閉じ込めておく。

 そしてこの二つの魔術で分かる通りクロが使う魔術のほとんどが段位一以上なのに対してルルが放つ魔術のほとんどが【研ぎ澄まされた知識】により魔術段位一に修正され、低コストで魔術を唱えているため、長期戦に持ち込まれれば魔力の枯渇によりクロの敗北は免れないのだろう。


 しかしそれはお互いの魔力総量が拮抗している場合の話である。

 レベル及びタウンを限界値まで上げているクロからすれば例え長期戦に持ち込まれたとしてもクロの魔力が先に枯渇するとはクロ自身思えないのだが、ルルの魔力総量が分からないのであれば用心するに越したことはないためできるだけ低段位の魔術で抵抗するようにするのだが、そもそものクロとルルの魔術を発動する回転率に差があるため結果クロの不利な状況は変わらない。


 そしてなにより街中での戦闘と言うことでクロは辺り一帯に影響するであろう高段位の魔術を使えない状況下という地理状況すらクロを縛り付ける足枷になっておりより一層クロを苦しい状況下に追い込む。


「徐々に私の魔術が当たって来ましたね。何でカウンタースペルにより打ち消せれないという高段位魔術で私を倒さないの?」

「分かってて聞くとか性格悪いのな」

「だって、虫けら共の価値ない命ごときに縛られる意味が分からないのよ」

「俺からすればお前も等しく虫ケラと平等の命だがな」

「ふふ、おかしな事を言うのねあなた」


 お互いにまだ余裕があるのか無駄口を叩くのだが、クロが被弾する数は目に見えて増えて来ているのが分かる。

 しかし今のクロにはエンチャント系水魔術の防御壁により段位五以下の魔術は無効化されて行くのだがルルは底段位の魔術を繰り出して行く。

 その行為がクロに違和感を与えるのだが、ギルティ・ブラットの世界では無効化したとしても別におかしな事ではなく良くある光景なので効果が危ない魔術は出来るだけ打ち消して行く。

 しかしそれは魔術段位十の魔術を使える事を前提とした戦い方なためこの世界とギルティ・ブラットとの魔術レベルの差がクロに違和感を与えるのだが、無効化されると分かっていても攻撃の手を緩めず、そして底段位の魔術を繰り出しているあたりルルは何かしらの方法で底段位の魔術をクロに当てるないし、クロに当てた魔術を生かす何かしらの方法があると考えるべきだろう。



 それに対してアルは何故ルルは意味のない攻撃を繰り返すのか、何故クロはその意味のない攻撃を打ち消して行くのか全く理解できず、しかし神成者であるルルと大魔王であるクロとの戦いである為無駄な行為ではない事だけは理解できるが、それだけである。

 意味のない攻撃を繰り返し打ち消して行く事が何を意味しているのかアルには逆立ちしても解らないという事だけは分かるのだが、それがもどかしく感じてしまう。


「そろそろ無駄な足掻きは止めたらどうだ?火の魔術段位五【集中砲火】」

「そう言いながらも私の攻撃を打ち消している貴方にはこれが無駄な行為ではないと理解しているのではないの?【目眩まし】………へ?」


 やはりルルは意味なく底段位の魔術を繰り出していたわけではないみたいなのかその事を理解しているだろうクロに対して少し意外な顔をした後、クロが詠唱した魔術を打ち消そうとするのだがクロの魔術は打ち消されずルルに直撃する。


「戦い慣れしているみたいだが、強者との戦いが少ないのが貴様の最大の弱点だと知れ」


 そう言うとクロはもう一度【集中砲火】を詠唱し、ルルへと着弾させる。

 そして先ほどと同じ様にカウンタースペル【目眩まし】を使いクロが詠唱し、ルルへと迫ってくる魔術【集中砲火】を今一度打ち消そうとするも虚しく【目眩まし】は無残にも【集中砲火】に掻き消されてしまう。

 その光景にルルは信じれんないものを、そして目の前の魔術という奇跡を否定したくなる衝動に駆られ、小刻みに震える。


「あなた、いったい何なの?その魔術はっ!?まさかこの世界に秘伝とされてきている上位魔術では無く段位五程度の魔術で私の知らない効果の魔術を使って来るなんて……貴方いったい何者なのよ?」

「何者かと言われれば今の俺は職業は肩書きだけの大魔王であり、現実はその日暮らしの絶賛フリーター中の講師だと言えば良いのか」

「……馬鹿にしてるの?この私を……っ」


 もちろんルルが聞いてきている質問が意図する内容が現在の職業内容でないことを意味しているというのは理解している為馬鹿にしてると言われれば否定出来ないのだが現在のクロの現状を鑑みるにフリーターという答えはあながち間違いではないだろうとクロは思う。


 大魔王という肩書きはあるがだからと言って給料が発生しているわけではないし、冒険者と言われても上位ランクを目指せる力を持ちながら上位ランクを目指すわけでもなく片手間で仕事を終わらし、レニア達の講師を一応請け負ってはいるもののこちらも大魔王同様に給料が出ないと来ている。


「今やってるバンドでメジャーデビューすんだよ!と息巻くも曲を作るわけでもなく年数回程度のライブ活動程度をこなし、日々遊ぶ金欲しさにアルバイトするも極力働きたくない為実家暮らしのフリーターと何が違うと言うのだ?どう考えても人生舐めてるフリーターだろう?」

「そもそもフリーターって意味を説明しなさいっ!」

「おいおいそこからかよ。この世界、無知は死ぬぜ?」

「誰が……無知ですって………?」

「お前だお前。現に俺の魔術の能力も解らず喰らい続けているじゃないか?」

「くぅっ、最初に被弾した時より威力が上がってる…?悔しいですがこのままじゃマズイですねっ」


 そしてクロとの無駄な会話をするも会話の内容が単にルルを煽っているだけで得るものは無いと分かるとルルはクロの詠唱する魔術【集中砲火】は被弾するにつれ威力が上がって行き、更にカウンタースペルも効かないと解析すると即座に後退し始める。


「おっと、何処へ行こうというのかね?」


 そしてこのゲス顔である。


 側から見れば、どちらが悪者かと聞かれればクロがルルを襲う犯罪者と答えるだろう。

 しかしそれはそれこれはこれである。強者が弱者を追うといものはそういう事なのだろう。


「【水弾】!!」

「まだ私と戦うつもりか?さっさと逃げればいいものを……しかし逃げようとする際の胸の揺れ……素晴らしい!!サイコーのショーだとは思わないかねっ!?………ぬ……動かぬ……身体が動かぬだと……」


 ルルは後退しながら苦し紛れの魔術【水弾】をクロに向けて詠唱するのだがクロはそれを難なくカウンタースペルで打ち消して行き、クロのテンションが更に上がり始めた頃、クロの身体は突如動かせなくなり身動きが取れなくなる。

 背後でアルが「胸に目が行くからだ馬鹿野郎っ!」とクロを罵倒する声が聞こえて来るのだがまんまとルルの策に嵌まってしまっては返す言葉も見当たらない。


「まさかまんまとひかかってくれるとは、貴方ひょっとして馬鹿なの?」

「揺れるお乳様の前では男性は等しく馬鹿になるものさ」


 さらにルルにまで馬鹿にされるも何故か誇らしげにルルに発せられた罵倒を受け入れるクロ。


「しかし、ただ無闇に魔術を詠唱しながら逃げているのでは無くエンチャント系魔術を無効化する魔術【解除】の上位交換であり、カウンタースペルなどにより打ち消されない効果を持つ光魔術段位四【解消】と闇魔術段位五【ツケの代価】を光魔術段位五【時の凍結】により設置しトラップを張っていたとは……まるでギルティー・ブラットでの対人戦を彷彿とさせる良い立ち回りじゃないか」


 ルルが張ったトラップの効果は、まず【解消】によりクロが自身にエンチャントしている底段位の魔術を無効化する魔術を破壊し、【ツケの代価】のより今まで貰ったルルの魔術に付与されていた追加効果が一気に発動、その結果クロは身動きが取れなくなってしまったのである。

 いくら相手を下に見ていたとはいえクロに気付かれず段位三以上の魔術を三つも駆使してトラップを張るルルの技術と魔術の知識、コンボを考え付く柔軟性は目を見張る物を感じさせる。


 クロと違い平均魔術段位がタダでさえ低いこの世界でネット環境も無ければ勿論攻略サイトも無い環境で実戦でこの世界では高段位に当たる魔術を駆使して使えるコンボをしようし、成功させているのである。


 彼女が強者であるという事を認めなくてはいけないようだ。


「むしろ私がやった一連の流れを一瞬で理解出来る貴方は流石と言うべきね、大魔王さん?」


 そう言うとルルは【解消】を詠唱すると「パキンッ」という乾いた音がルルの後頭部を中心にして辺りに響く。


「でも大魔王さん?無知も確かにこの世界では死ぬ要因の一つなのだけど、奢りもまた死ぬ要因の一つよね?」


そしてルルは先ほどからにやけてしまいそうになるのを我慢するのを止め、ニタリとその柔らかく色っぽい唇を歪め口角を上げるとおもむろに自身に付けている眼帯を取り外す。

眼帯を外しそこにある物は、とても人間一人の魔力とは思えないほどの魔力を本体であるルルとは別に宿し、絶え間なく溢れ出る禍々しい魔力を滝の様に空へと垂れ流す。その魔力の発生源であるルルの『眼』と呼ぶには余りにも異質過ぎ、また美形然としたルルの顔に良く似合うそれが久しぶりに見る世界の色を楽しむかのように辺りを見渡し始めると、眼前にいるクロを見付け、顔面は喜色に溢れ形の良い唇から涎を垂れ流し、それを手で拭う仕草が色っぽく感じさせる。


「この眼帯を外したのは私をこんな身体にした神成者二人を喰った時以来だわ……あの二人はまさに美味で、未だに思い出しても涎が出そうになるのだけど、貴方はどうかしらねっ!」

「お前……その眼は…まさか、魂喰いのオストロスの…………こんな……こんな事があって良いのか?」


そしてその禍々しいまでの魔力、特徴ある金色に輝く瞳、吸い込まれそうな眼孔をクロは忘れるはずもない。

唯一ソロクリア出来なかったダンジョン最下層ボスの武器であり秘宝でもあるその眼、それが今クロを睨めつけている。


ヤバいッ!どうして人間であるルルがあの眼を持ってやがるッ!?


あの眼のヤバさはクロ本人が嫌という程理解している分、ここで彼女を倒さなければその後起きるであろう悲劇が脳裏に映る。

だと言うのにクロの身体はルルの様々な魔術の効果により指一本すら動かせないでいる。


「では、貴方の魂…いただきます」

「あ、が……や、やめろ……グ、うぅぅぁぁぁあああっ!!」


そして静かにルルは言葉を発し、それと同じくルルの眼から溢れ出る魔力がクロの中へと入っていきクロの魂を食べようとし始める。


「あぁ、予想以上よっ!予想以上に美味だわっ!神成者なんかよりも全然、魂に触れただけで美味しいと分かってしまう……これ程とはっ!」


そしてルルが本格的にクロの魂を食べようとした瞬間、クロの身体は突如現れたメイド服の女性により光の魔術【封印】を施されルルのオートスキル【魂喰い】の対象から外されると、そのままクロは気絶し倒れる所を優しくメイド服の女性に抱きすくめられる。


虫けら※ミミズだってオケラだってアメンボだって─歌詞の生き物の割り振り 環形動物1・昆虫6・両生類 1・鳥類1・哺乳類1であり虫側による何らかの賄賂無いし違法なやり取りがあったと推測される。

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