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ヴァンパイアの魔王異世界奮闘記  作者: Crosis
第二章
30/121

神成者

◇◆◆◇




「ここが一週間前アル・ヴァレンタインの消息が絶った学園都市……」


そう言うと声の主の女性は身震いをする。

その姿を見て辺りにいた人々は化け物でも出会った様な顔をすると一斉に蜘蛛の子を散らす様に、しかし音も立てず散らばり、商店は軒並み閉まって行くのだがその事に女性は気付かない。

何故ならその女性は何故か革でできた目隠しで目元を覆っている為辺りの変化に気付かないでいるようだ。

しかし目元を隠していても分かる美貌、そして艶があるウェーブがかった黒く長い髪に、高級そうな黒のドレスを纏い優雅に歩く姿をは、彼女の正体を知らない者は魅入ってしまいそうな程美しく、まるで一枚の絵画のようである。


「あれ……さっきまで人の気配で満ちてったのに……いつの間にか人の気配を感じなくなったわ……どうしましょう……これじゃ情報を得れないわ」


そう言うと女性は可愛く小首を傾げるのだがその表情からは困っているようには見えない。

すると女性はおもむろに手を伸ばすと道端で飛び跳ねる小鳥に向けてスキル【知識の対価】を発動する。

すると女性と小鳥は一瞬震えたかと思うと小鳥は魂を抜かれたかのように生き絶える。


「ごめんなさい……貴方には耐えられないスキルだと分かっていたの。でも、私も生きたいのよ……だから、私の為にみんな死んで頂戴」


そう言うと彼女の周りにいた小鳥や虫など種に関係なく命ある物が彼女のスキルによって失われて行く。


「ごめんなさい……ごめんなさい……ごめんなさい」


そして謝罪の言葉を口にするも全く悪びれる様子も無く彼女が歩き、出会った命が消えて行く。

その姿はまるで死を運ぶ死神のようである。


「……おかしいわね、こんなにクズ達の情報を集めてもアルの情報が集まらないわね………」

「お困りですか?」

「あら、人に話しかけられたのなんていつ以来でしょうか………?教えて下さる?」

「いや、教えて下さると言われても……俺はお前の事なんか知らないし……まあでも困っているのなら出来る範囲で手を貸しても良いが?」

「あら、そうね。私ったらうっかりしてたわね。私は今アル・ヴァレンタインという方を探して居るの……よ?」

「いや、疑問系で言われても……」

「あらあらあら、それもそうね。ごめんなさい……会話したのも本当に久しぶりなのよ。前に話した時が何時なのかすら忘れてしまうくらいに。何でか知らないしけど皆さん私を見ると逃げて行くのよ?」


そう言うと彼女はコロコロと笑い出した


「しかしそうだな……そのアル・ヴァレンタインと言うのが君の探している人物と同一人物かどうかは定かではないが、同じ名前の人物なら知ってるが?」

「あらそうなの。ならなら話は早いわね。あなたのその知識をくださいな………あれ?知識が、情報が入って来ないわね……?」


そしてクロがアルの事を知っていると言うと彼女はおもむろに手を伸ばしスキル【知識の対価】を発動するのだが上手く決まらず首を傾げる。

そしてその様子を見ていた男性も不思議そうな顔をした次の瞬間、男性は何者かに吹き飛ばされ、吹き飛ばされた先で綺麗な金髪をショートカットにし、髪と同じ色の耳を頭に生やした女性が吹き飛ばした男性を守る様に立ち振舞う。


「大丈夫なのか御主人様っ!?何かこいつにされなかったかっ!?」

「痛っ………大丈夫か大丈夫でないかは大丈夫じゃないだろどう見ても。お前のせいでな」


そして吹き飛ばされた男性は吹き飛ばした張本人であろうショートカットの女性に抗議の目を向ける。

女性の額に見える模様と、男性に対する呼び方で彼女が男性の奴隷である事がわかるのだが、所有者である男性危害を加えても奴隷であるショートカットの女性に何も変化がない所からどうやら奴隷と言うよりも家臣と言って良い程度の契約でしか縛られてないみたいである。


「その様子だと大事には至らなかった様だな…」

「いやまあ何もされてないしな。で、いきなりどうしたんだよ?」

「目の前のこいつが、以前隷属された時に御主人様に話した内容の中の一つ、この俺を探しに来るだろう人物、十二人いる内の一人成神者…死を運ぶ女神ルル・エストワレーゼなんだよっ……よりにもよってルルが来るなんて……」

「あら、先ほどから聞こえてくるこの声は……アル・ヴァレンタインよね?しかも、感じ取る波動の感じからして貴女……隷属されてしまったのね」


そして目の前で話す女性の声を聞き取り、目の前の人物がアル・ヴァレンタインだと分かるとルルはとても悲しそうな表情をするのだが、表情が作られたものだという事が分かる。


「ごめんなさいね……隷属されてしまったのなら貴女も殺さなくちゃいけないわね……」

「隷属されてなくても何かに理由を付けて殺すくせに良く言うぜ。分かりやすいんだよ貴様のそのハリボテのような作られた表情はよっ!【霊魂焼却】っ!」

「手癖が悪い娘だこと……【目眩まし】」


ルルに殺害宣告されたアルは先制攻撃と言わんばかりに魔術を発動するのだがそれをルルに難なく返される。

◇◆◆◇


「ったく、乱暴に扱いやがって………」


そう言うとクロは痛めた腰を摩りながら、アルとルルの戦いを眺める。

アルが言うにはルルは神成者らしいのだがアルの言うことが正しいのであれば超越者のアル、その上のランクに選定者がありさらにその上のランク神成者がありアルには荷が重い事はランクからも、目の前で繰り広げられている戦闘からもうかがえる。


それにしても、ルルとか言う人は胸大きいな……。


「ご、御主人様っ俺が生きている合間に逃げて下さいっ!」


そしてクロがルルの胸に、目が行っているとは露知らずアルが自分を犠牲にして逃げろと御主人様であるクロに叫ぶ。


しかし、アルがあそこまで必死になるほど危ない何かが有るのだろうが見た感じそれが何なのか分からないのだが、何かが引っ掛かりモヤモヤとする。


「アルのこの慌てようからしてアルの飼い主はもしかして大魔王であるクロ・フリートなの?」

「それを知ってどうするるんだよっ!?」

「何って……この世から消して頂きます【研ぎ澄まされた知識】」

「させるかっ!【狐焔の宴】っ!」

「遅い……そして無知なんですもの……無知というのはその背後に死神が鎌首擡げて待っているのよ?………っていつもすでに死んでしまっているのよね…………あれ?何で死んでないの?」


そう言うとルルは寂しそうな、そして悲しそうな表情を〝初めて〟見せるのだが、次の瞬間ルルの表情は信じれない物を見るかのように驚愕の色に染まる。


「何でって……何でだ?御主人様」


そしてルル同様に何が起こったのか理解出来ていないのかアルはこの現象の原因である張本人であろうクロへ視線を向ける。


「何でって………単に最後にルルが放った魔術が魔術段位五以下の魔術だったから俺が常に守るべき者にかけているエンチャント型のカウンタースペル系の水魔術に打ち消されただけだろ?」


実は最後にルルは闇魔術段位三【死の宣告】を無詠唱で放っていたのだが、それを打ち消されたことにアルとルルは気付けないでいるようだ。

ルルが唱えた魔術【研ぎ澄まされた知識】は水魔術段位五の魔術で唱えた術者は魔術段位三以下の魔術が段位一として唱える事が出来るのだが発動する時にデメリットがあり、【研ぎ澄まされた知識】に使用した魔力が闇の魔力として自身に逆流するのである。

普通ならばメリットだと思うのだが、戻された魔力というのが厄介であり、消費せず体内に取り込んでしまうと使用する魔力に逆流した色が加わってしまいそこで使う魔術の色が別の色だった場合、逆流し、再度利用する魔力分、本来使う魔力を阻害されてしまい、更にその分余分に魔力を注がなくてはならなくなるのである。

そこで逆流した闇の魔力と同等の魔力で使える魔術であり、モンスターないしプレイヤーを倒せる魔術が【死の宣告】である。

勿論【死の宣告】が発動したからと言って全てのモンスター及びプレイヤーを対象に戦闘不能に出来るわけではなくモンスター及びプレイヤーのレベルないしランクが双方100以下でないと【死の宣告】の対象に出来ないのである。そのためプレイヤーに使うタイミングがあるとすれば初心者狩りか、パーティー同士の乱戦で、プレイヤーランク100以下の縛り設定ぐらいだろう。

因みにパーティー同士の対人戦の場合、決められたレベルにマッチング出来る機能があったりする。

この場合設定されたランクよりも上の場合は設定されたランクになるのだが設定されたランク位下の場合ランクはそのままである。


そのランク100以下の縛り設定で魔術【研ぎ澄まされた知識】からの魔術【死の宣告】は定石であり、当然ランク100以下の縛り設定のプレイ経験があるクロからすればこの流れは常識であり考えるまでも無いのだが、アルは【研ぎ澄まされた知識】の効果すらまともに知っておらず、ルルに関しては俺が【研ぎ澄まされた知識】からの【死の宣告】のコンビネーションを知っている事に驚きを隠せないでいる。


「まあ簡単に説明すればざっとこんな所だと思うぞ?」

「じゃ、じゃあ俺は御主人様のカウンタースペルが発動して居なければあの瞬間死んでたって事か……」


そして徐々にだが理解してきたアルは事の重大性に気付くと先ほどの威勢の良さが嘘のように顔を真っ青にし始めクロの袖をさり気なく、しかし力を入れてつかみ、心無しか半身クロの後ろに隠れる。


「いや……アルのランクは106みたいだからまあ大丈夫なんじゃないか?」

「なぜそこは疑問系なんだよ……」


そしてそんなアルを安心させようとパーティー欄をアイコンから開くとアルのアイコンをタッチしてステータスを確認し、現在アルのランクを伝えるのだが、所詮先ほど語った内容はゲームの話でありこの世界でも同じだと言う確証は無いため疑問系になってしまい余計にアルをビビらせる羽目になった。


「しかし、魔術【研ぎ澄まされた知識】が発動したのも事実なんですから私の優位性は未だ健在ですね」


そしてルルの言う通り魔術【研ぎ澄まされた知識】によりルルにアドバンテージがある状況なのだがルルのその物言いに何かが引っ掛かるのだが今一ルルの考えんとしてる事を読めないでいる。


十二人※時の番人、若しくは聖闘士○矢のあいらの事ではない

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