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ヴァンパイアの魔王異世界奮闘記  作者: Crosis
第二章
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魔王の親友

『と、いう訳で彼氏さんには悪いけどサラは今晩私が預かりますからね!今夜予定のデートはムゴゴゴゴフッ!』

『だ、だからさっきから違うと言っているでしょう!?彼と私はそういう関係ではないとあれ程っ……あっ…き、気にしないでください。とにかく、後で今晩泊まる宿を教えなさいっ!』

『ちょっ、私が悪かったから口抑えるの止め……あらあらまあまあまあっ!?聞きましたヘルミナ奥さん?』

『ええ、わたくしには夜這いするから宿を教えろと聞こえましたわ』

『だからっ違うとっ言っているでしょう!?この犬娘達!』


 外部講師になるにはギルドでの登録したあと学園で形だけの登録も必要らしく、ギルドでサラに無理言って登録してもらった後この都市の中心部にあるらしい学園へマップを開き歩いているとサラに手渡されたほうのギルドカードが携帯のようにいきなりアラーム音を鳴らし、振動し始めたので仕舞っていたズボンのポケットからギルドカードを取り出し手にとってみると、カードの表面中央部分が【サラ】青く点滅していたのでタッチしてみると、ギルドカードからサラとその同僚らしき声が聞こえてくる。


 どうやらこのカードは通話の機能もあるらしい。


「泊まる宿はまだ決めてない。決まったら連絡する。じゃあ切るぞ」

『き、決まってないて…あ、ちょっとっ』


 サラの返事を待たずギルドカードでの連絡を切る。

 俺の経験上、切るべき時に切らなければ小一時間は通話しなければならなくなるので、その流れに乗ってしまう前にこちらから一方的に通話を切ると目指すべき学園へと足を進める。


 マップで見た感じゲームだと十分ぐらいの距離なのだが、十分経っても一向に着く気配すらみられず結果一時間かかってやっと学園入口に着く事が出来た。

 周りには生徒なのだろう若者達が学園指定の制服であろう衣服を身に纏って歩いているのが目に入る。

 学園入口にはこの世界の文字で何か書いてあるのだが、多分この学園の学園名だろう。

 マップを開き現在地をタップすると【帝国立聖ベルホルン学園】と表示される。

 その門を潜り少し歩くとまるでアニメに出てきそうなお嬢様学校のような校舎が遠くの方に見えて来る。校舎というよりも城と言われた方がしっくりきそうなぐらいである。


「学園名や、校舎さえ目を瞑れば普通に日本の学校といった感じだな」


 というのも周りにいる生徒達が来ている制服が、日本でも探せばありそうな制服であるため、異世界の学校という物珍しさよりも懐かしさが先立ってしまう。


「お師匠様ぁぁぁぁぁぁっ!」


 懐かしいのはいいが、登録場所が分からないのでとりあえず校舎を目指し歩いていると物凄い速さでこちらに向かってくるレニアが見えた。競馬で荒稼ぎできそうな足である。


「と、遠くの方でお師匠様が見えたので走って来ました!」


 と、嬉しそうに話すレニアは可愛いのだが、もう少し静かに近づく事は出来なかったのか?おかげで周りの視線を独り占めである。


 まあ、その視線の大半がレニアを見下す視線なのだが、当の本人は気付いていないのか気にならないのか「お師匠様お師匠様」と嬉しそうに話を振ってきてくれるのでこちらも意識しないようにレニアと接することにする。


「なあレニア」

「何ですか?お師匠様」


 そう言いこてんと首を傾げるレニアが可愛く見えるのはその表情故か、レニアのケンタウルス補正だからなのか……。


「いやな、ギルドで外部講師登録を済ませて来たから学園でも登録しようと思ってここに来たまではいいのだが、どこで手続きすれば良いのか分からなくてな、知ってたら教えてくれないか?」

「はいっお安い御用です!理事長室で登録出来るので案内をしますね!」


 そう言って案内を買って出るレニアからは、当初感じられたもの静けさは感じられず年相応に明るく立ち振舞っているのだが、これがレニア本来の姿なのだろう。

 その姿が見れただけでも外部講師になって良かったと少なからず思えてくる。


「それでですね、もしお師匠様さえよろしければわ…わ…私の背中に乗って行きませんかっ!」


 その後もレニアと他愛もない事を話ながら(主にレニアが一方的に話す形なのだが)少し歩くと、レニアが俺の事を気遣ってか、俺を背中に乗せて行こうと言ってくる。


「いや、大丈夫だ。気持ちだけ受け取っておく」


 確かにこの世界の現地人と比べて俺の見た目は非力に見えるかもしれないが、というより確かに体力は乏しいのだが流石に生徒に背負わせふんぞり返ってる講師というのもどうかと思うので断ると少し残念そうな顔をするレニアに気付き、頭をポンポンと軽く叩き撫でるとレニアは嬉しそうに目を細めた。

 そんなレニアを見て憧れの先輩上司の部下として配属された時を思い出す。多分あの時の俺もこんな感じに見えただろう。


「ここが理事長室です!」

「ありがとう。助かった」


 校舎の中は木造になっておりテレビとかでよく見る古き日本の木造の校舎そのものである。

 授業のシステムが日本と違い講師を自分で選ぶシステムだからなのか、休憩中なのか談笑している教室もあれば授業中の教室もあった。

 ちなみにレニア曰く勉学と戦闘技術その両方が一定レベルに達してないと卒業できないらしい。

 割としっかりしてるんだなと思いながら理事長室とレニアに教えられた部屋の扉を三回ノックする。

 ちなみに扉の上の方には日本の学校のように室名札が付けられているのだが、やはりこの世界の文字は読めないみたいだ。


「どうぞ」

「失礼します」


中から女性の声で返事が有ったので室内に入ると想像通りの内装をしていた。

入って左側には本棚が置いてあり、その上には歴代の校長か理事長であろう顔写真、右側には何も無く角に観葉植物が、真ん中にはテーブルと四人は座れそうな革のソファーが手前奥に二脚置いてあり、その奥に真ん中のテーブルより一回り背丈の高い机に一人用の同じく革で出来た椅子があり、その椅子にスーツを着た女性が座っていた。


年齢は四十前後だろうか?黒く長い髪を上で束ね、高そうな眼鏡をかけているのだが彼女が出す柔らかい雰囲気のおかげでそれが嫌らしく感じずよく似合っている。

そして体型もスレンダーで、何より胸がある。あと二十年出会うのが早ければと思ってしまうほど顔も整っており、若ければ美人であった事が容易に想像が出来るほどである。


「いらっしゃいレニア。そして貴方は…」

「初めまして。クロ・フリートと言うものです。本日はレニアさんの外部講師になる許可を貰いにきました。」

「初めまして。私はこの学園の理事長をしています、アンナ・ヴィステンよ。キンバリーから私の娘、サラの彼氏がこの学園に外部講師の許可を貰いに来ると連絡があったのだけど……娘の彼氏だからと言って審査を甘くするつもりは無いのでそのつもりでいてね。」


そういうと理事長のアンナ・ヴィステンはクロの事を頭の先からつま先まで品定めをするように眺め始める。

クロを眺めるその顔は真剣そのものといった感じで、その表情は確かにサラに似てなくもない。


「いや、彼氏じゃないですから。それよりも審査と言いますとテストか何かをするんですか?」

「はいはい、そういうことにしといて上げるわ。どうせ娘から口止めされてるんでしょ?テストは学力と戦闘技術の両方を審査するテストを行います。学力テストは数学だけなのと、戦闘技術はギルドランクB+の方と模擬戦をやって貰います。でもギルドのきょかが降りた貴方ならどちらもさほど難しくないレベルだ思うから緊張せず普段通りの実力を示せれば良いだけよ」


成る程……なら何とかいけそうであるが問題はギルドランクB+の人と行う模擬戦だろう。


いくら相手を倒せてもプロの目から見たら俺の戦い方が素人だとバレる可能性があるからな。いくら強くても講師としては不向きと思われかねない。


魔法がメインではあるが今のクロの体調ではいささか威力にかけるため歯がゆく思う。


「所でクロさんはあの魔王、アーシェ・ヘルミオネが敗れたことを知っていますか?」

「い、いや…」

「あらそうなの?今冒険者の間ではこの話で持ちきりなのだけれど、まさか知らない人がいたとはね。なんでもあなたと同じ名前のクロ・フリートという方が倒したそうよ」

「そ、そうなんですか…同じ名前なんですね。いやぁ知らなかったです」


これから行うテストについて聞こうと思っているとアンナの眼が鋭くなり、次には微笑みに戻るのだが話題にしたくない話を振ってくる。

それはまるで「あなたがそのクロ・フリートですよね」と聞かれてるみたいで嫌な汗が流れ始める。


「そうなんですっ!お師匠様はあの大魔王様だったのです!」

「あらあらそうなの?レニアは物知りね」

「え?ち、違いますよ?嫌だなー…はは」


何とかこの話題から離れようと思っていたのだがレニアが物凄く誇らしげにばくだんを放り込む。

その顔はまるで自分の事のように誇らしげだ。


しかし、まだしらばっくれればば……


「所でクロさん、髪に何か強力な魔力でくっつけられてますよ?あら、これは探知系の魔術が込められた透明の糸屑のようですね。取って上げましょう」


そう言うとアンナはクロの髪に付いてるであろう見えない糸屑を取ると、『ボッ』と燃やす。


「お兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんっ!」

「……」



アンナが指先で見えない糸屑を燃やすとアーシェがどこからともなく現れ、クロに抱きついて来る。


何これ、怖い。


「あら、久しぶりね、アーシェ」

「ままま、魔王様…?初めましてっ!お師匠様の弟子のホウスレニア・アレクサンドラです!お師匠様と同じくレニアとお呼び下さいっ!」


しかしアンナはこうなる事が分かっていたのか驚きもせずまるで日常の一コマの様にアーシェに挨拶し、レニアは目を輝かせながら自己紹介を始める。

「す〜……はぁ〜……すーーーーー……はぁーーーーー……お兄ちゃんの匂い、ヤバイ」

「何でお前がここにいるかは聞かない。だがと、り、あ、え、ず、俺から離れろこのストーカー!」

「あぁ、もう少しでイケたのにぃ…匂いだけでコレとかお兄ちゃんヤバイよ…」


イケたのにって何だよイケたのにって。


とりあえずアーシェにくっつかれたままでは話もできないので俺の胸に顔を埋め深呼吸を始めたアーシェを引き離すのだが、その時発したアーシェの言葉にサブイボが出来、顔は引き攣る。


「全く、今度嗅ぐ時は最後まで嗅がせてよね、お兄ちゃん。で、お兄ちゃんに付けてた探知繊維を燃やしたのはアンナ、貴女ね?久しぶりに会ったと思ったらやってくれたわね?せっかく気付かれてなかったのに」

「あなたがそれで良いなら良いんだけど、クロさんはひきまくってるみたいよ?」

「なに言ってるのよ?私とお兄ちゃんは運命の糸で硬く、かた〜く固結びされてるんですよね?そんなお兄ちゃんが私にひくわけないじゃない」


そしてその後アーシェは如何にアーシェとクロが繋がっているかという事を長ったらしく、そして恍惚な表情をしながら語り始めるのだがアンナは慣れた感じで傍に置いているポットからガラス製の急須にお湯を淹れるとそこへ茶葉の様な物を入れると、紅茶の様な香りが辺りに漂い出す。


「クロさんは砂糖何個入れますか?」

「いや、砂糖は入れないでくれ」


そして陶器製のティーカップへ紅茶を淹れると砂糖は入れず俺にすすめる


「美味しいわよ」

「……確かに、飲みやすいですね」

「で、この状況でも貴方はシラをきるのかしら」

「……すみません」

「いえ、別に謝らなくても良いのよ?私とアーシェは知り合いですもの。で、いつも貴方の事を耳が取れそうな程聞かされてたからアーシェの魔力で付けられた探知繊維を見て、アーシェならやりかねないと思ったのよ。アーシェが敗れた事にはびっくりしたのだけれどもあのアーシェが「お兄ちゃんには敵わない」といつも自慢してたしね。ずっと妄想か何かだ思っていたのだけれど本当に存在していたとわ」


そう言うとアンナは微笑みながら、レニアにクロについて語っているアーシェを見つめる。


「ほぇー…お師匠様はあの死者の眠る闇黒の迷宮を二人で最深部まで行かれたのですかっ」

「ええそうよ。あの時の私はまだまだヒヨッコで冒険者ランクもBレベルだったのだけどそんな私を護りながら迷宮に出てくる敵を屠って行く様はまさに私のナイト様って感じで惚れ直したぐらいよっ!」


レニアも目を輝かせながら聞いているのだが、アーシェの語るクロの話は盛り過ぎている所もあり誇張して言うのは辞めてもらいたい。

ちなみに死者の眠る闇黒という迷宮は、ギルティ・ブラットにある高難易度のダンジョンの事なのだが、レベルをカンストさせ、装備を固めればソロクリアも楽にできるため、レベルが低い仲間を一緒に連れて行き仲間の経験値を稼ぐ為の場所みたいな扱いをされているダンジョンの事である。

中にはプレイスキルを上げるたに何の装備もせずソロプレイするプレイヤーもいるのだが、俺もその一人だったりする。そういう性癖たかではないとだけ言っておこう。


「ところでアンナさん、アーシェがこの学園にいるのってマズいんじゃないんですか?」

「私の古くからの親友がいるだけですから何も問題は無いわよ。それにこの学園都市は所有国こそ帝国ですが、学園内は何処の国にも属していないの。だからこそ様々な人が集まり、様々な技術を学べる場でもあるの」


親友ね…


アンナから発せられたこの言葉に嘘偽りを言っている感じは見受けられなかった。

魔王ですら親友と言える人材だからこそこの学園の理事長になれたのだろう。


遠くの方でお師匠様が見えたので※レニアの視力は2・0以上

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