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ヴァンパイアの魔王異世界奮闘記  作者: Crosis
第二章
19/121

弟子

 そう言いながら頭を下げるレニア。

一応魔力制御は魔術を扱える者なら誰でもできるらしいのだが慣れてないと御さする為にさらに多くの魔力を消費するため結果水を井戸などで汲みに行った方が楽なのだという。


 異世界でも魔法で楽々生活とはそう簡単に行かないみたいである。むしろ前世の方が家電や様々な高度技術により誰でも楽々生活である。


 そんなこんなでギルド受付嬢をレニアに任せ、レニアの部屋で待機していると、玄関が開き誰かが入って来る気配がする。


「レニアの好きな人参を手に入れて来ました…………よ」

「どうしましたの?固まってないで早く入りなさいな」

「ど、どうも。おじゃましてます……?」

「お、お、男ですぅぅうっ!」

「きっと強姦魔に違いありませんわぁぁぁあ!」


 そしてルームシェアしている住人なのだろう女性が二人、レニアの部屋の仕切りにしている布をめくり入って来ようとするのだが、俺と目が合った瞬間強姦魔と勘違いしたらしくにょろにょろカサカサと素早く借家の角に異動し、俺から距離を取ると警戒心と恐怖心が混じった視線を向け、ガタガタと小さく震えだす。

 確かに見知らぬ男性が自分たちの住んでいる家にいるという状況は女性のみで生活していたらやはり怖い状況なのかもしれない。

 しかし、しかしである。それにしてもビビりすぎではないだろうか?むしろ俺の方がビビったぐらいである。

 なぜなら彼女達の姿は普通の人間の姿をしておらず、レニア同様に下半身が人間の下半身をしていなかったのである。


 一番最初に目が合った女性は多少青みがかった長く美しい黒髪をポニーテールの要領で後ろに縛り、透き通る白いうなじを栄えさせており、目が大きく全体的におとなしい印象なのだがポニーテールにより活発的な印象も感じられるのだが、何より驚いたのが下半身が白い鱗をしている蛇の下半身をしており、現在は身を守るようにとぐろを巻いている。

 ちなみに胸は推定Dカップである。


 もう一人の女性は、くすみがなく透明度の高い金髪をしており、それをサイドアップで横に縛り、縦ロールにしてくるくるとドリルのように巻いている。

 肌は同じく白いのだが、こちらは陶器のような白さをしており、硬い印象をうけてしまうのだが、胸についたロマンの推定はFカップと大きく、部屋の角に逃げている時上下左右とその柔らかさと触り心地の良さそうなロマンを俺に見せつけていた。

 そんな彼女の顔は美しく気の強そうな目をしているのだが、その目には涙が溜まっている。

 そしてこちらの女性も下半身は人間のそれではなく、蜘蛛のような下半身をしていた。


 その二人の下半身にかなりビックリしたのだが、落ち着いて見るとやはり人間とは違うそのボディーに熱い感情が込み上げてくる。


 ミイアの婆さんも可愛かったが、所詮婆さんである。レニア含め少し若すぎるのだがやはりその下半身にはいちケモナーとして触りまくりたいものだが、こうやって実際目の当たりにできるだけでも異世界来て良かった。


「そ、そういえばレニアは?レニアはどこですのっ!?」

「ま、まさかこの強姦魔に…………」

「それに、私達を見るあの欲に支配された目つき…………常習犯に違いありませんわ……いくらレニアと言えども場数を踏んだ常習犯の前ではもう…………」

「レニアぁ…………」


 黙って訊いてたら凄い言われようである。少し下半身を眺めただけで「ひっ!?」と小さな悲鳴を上げて二人抱きつきあいガタガタと震えだすとかいくらなんでも失礼なんじゃ?

ちょっとしっぽや足の先から舐め回すように眺めていただけじゃないか。


「あぁ、わたくしユーコ・ラインハートの純潔はここで散ってしまいますのね。お父様、お母様、親不孝者でごめんなさい」

「だ、大丈夫ですよユーコ。私、エリシア・マルメティアも一緒ですっ!」

「エリシア……っ!」

「ユーコ……っ!」



「お師匠様、ぎ、ギルド受付嬢のサラ・ヴィスティンさんを綺麗にしてきましたっ!」

「全く、いきなり水をかけられたと思ったらレニアの家じゃないか。しかし私はついさっきまでギルドで働いていたと思っていたのだが、いつの間にレニアの家…………」


そしてユーコとエリシアが自分の世界に入り、その世界にり浸り始めた時レニアとギルド受付嬢のサラ・ヴィステンが水浴びが終わったらしく戻ってくる。

サラは今までの記憶を無くしていたみたいなのだが、俺と目があった瞬間に全てを思い出したらしいのだが、ギルドの時とは違いその表情には恐怖心だけではなく羞恥心も見受けられる。


「レニア、大丈夫でしたのっ!?この強姦魔に何かされてませんのっ!?」

「れ、レニアぁぁあ!ぶじでよがっだぁぁあっ!!」

「さっ、ささささ、先ほどは遅れをとったが今回はそうも行かないぞっ!私はたた、たっ、倒せてもこの子達は命に変えても必ずしも守る!」

「大丈夫ですよ、ユーコ、エリシア。この人はなんとっ、私達のお師匠様になってくださっさ方なのです!」


 ユーコとエリシアはレニアの姿を見るやいなや駆け寄り安否の確認をし、サラは恐怖で腰が抜けかけているのかへっぴり腰になりながらもクロからレニア、ユーコ、エリシアを守る為に三人を守るように前に出て震える身体でクロと対峙する。その姿は恐怖で萎縮しているとはいえ隙はなく、恐らく彼女が全力を出せば今のクロには荷が重い相手であろう事が伺える。

 一方のレニアは約半年間にわたる指導してくれる講師を見付けるという悩みから解放しているのか清々しい顔をしており、ユーコとエリシアにクロが強姦魔ではなく自分たちの外部講師なのだと告げる。


「え……れ、レニア、今なんとおっしゃいましたの?このとの殿方が私達の講師になってくれたのだと聞こえたのですけれど?」

「強姦魔じゃなくて……講師?」

「はい!一応外部講師という立ち位置になりますが、見たこともないスキルで盗人を簡単にあしらった所を目撃したので多分強いです!これで勝てます!」


 そしてレニアの言葉を徐々に理解し始めたユーコとエリシアは自分たちに講師が付いた喜びをレニアと一緒に三人手を取り「お手柄ですわレニア!」「さすがレニア!」「今年こそは勝ちましょう!」などと嬉しさを現す。


「ま、待ちなさいあなた達!あの方が誰だか分かっているのですかっ!?あの大魔王ですよ!!」

「だ、大魔王……お師匠様が?」

「えーと、大魔王ってあの大魔王ですわよね?」

「魔王だったアーシェ・ヘルミオネを倒したっていう……」


 そんな三人を見てサラはクロの正体を告げるのだがその三人の反応はサラが思っていたものよりも薄く感じ、むしろそれを望んでいるかのように伺える。


「そうです!ギルドで確認したので間違いなくあの大魔王です!」


 サラはそんな三人に事の重大性を解らせる為、大魔王の部分を強調して伝えるのだが件の三人はギルドからの情報という極めて信頼度の高い結果を聞くのだが彼女達はサラのように恐怖にそまる事も怯えるような事も見られない。


「わ、私達のお師匠様が大魔王……」

「世界で一番強い講師……という事ですわね!」

「れ、レニア……おお手柄です!」


 そしてクロが大魔王だという事を理解すると三人は顔をほころばせ喜び始める。


「な、何で嬉しそうなんですかっ、あなた達はっ!?魔族の王なのですよ!?」


 魔族の王であるクロが怖くないのか?と三人に問いかけるサラ。

しかしレニア達三人は怖がるどころかその事を嬉々として受け入れているみたいである。


「ですが、サラさんが言うように本当に悪い人なら私達はお師匠様と会った瞬間に殺されるか犯されるかしてるかと思うのです」

「だ、男性は怖いのですがレニアが選んだ人ですから……」

「口だけで弱い方よりマシですわっ!」


 そんな三人の反応を見た上でもサラは納得いかないのかクロへの警戒心を緩めないでいるようだが、たまにクロと目が合うと「ヒッ」と小さく悲鳴

あげ、目線をずらし、顔から脂汗がにじみ出ていた。


「で、結局俺はどうなるんだ?」

「だ、だ、大魔王を講師登録する事は……で、できっ、できっ……」

「まさか出来ないわけないよな?」

「できますっ!もちろんですはい!」


 できないと言いかけたサラなのだがクロによる威圧感に負けて思わずできると言ってしまい今にも泣きそうな顔になっている。

 そもそもクロの配下である家臣達がギルドで冒険者登録出来た一番の要因は、クロ達の動向をギルドカードを通して把握できるからであり、今回の学園都市の講師登録の際にクロないしクロの家臣達が登録できないようにする為でもある。

 勿論破れば懲戒免職だけでは済まされない。


 そしてサラが異様なまでにクロを恐れる理由の一つに、一度だけアーシェ・ヘルミオネと戦った事がある事と、クロとアーシェの闘いを映像転写石を使い見ているという事が関係していた。


 その二つの理由からサラの目に映るクロは、あのアーシェを″本気にさせた″上で簡単にあしらった化け物として映ていた。

 映像転写石に映されていた戦いから今のクロが同一人物だという事をあの映像を観たはずのギルド職員の中に同一人物だと分かる職員はまずいないだろう。

 確かに角も羽も今のクロには無い上に映像転写石の映像は粗く、クロの顔を鮮明に映し出せていなかったのだが、何より今のクロからあれほどの戦いがこなせるだけの技量があるとは伺えないどころかただの優男に見えしまうだろう。

 そう思わせてしまうほどあの映像に映し出された光景、恐らく人前で見せるのは初めてであろうアーシェの本気と、そのアーシェに本気を出させた上で初めて彼女に土を付けさせたクロとの戦いはそれだけ規格外すぎたとも言えるのだが。

 そのためサラさえ黙っていればクロがあの大魔王だという事はまずバレないだろう。

 しかし人サラはそれを良しとしない。


「…と、言いたいとことですが大魔王である貴方を講師にできる事は難しいです」


 しかし、クロがレニア達の講師をできなければ悪い意味で有名になってしまっている彼女達に講師が付く事はないだろう。

 かと言ってこのままサラが目の前の圧倒的な力に屈しそうになってしまっているのも事実である。

 だがそれはビンセント・モルツが言う「強き者が正しい」という事を肯定するようなものである。

 なのでここは一つ条件を付ける事にするサラ。


「条件としましては貴方は常に私の目の届く範囲にいてください。それができなければ貴方を講師にできる事はできません」


 サラはクロの前で萎縮しそうになるのをなんとか我慢しクロの目を見据え言い切る。


「…そうか、それがルールなら仕方ない。その条件を飲もう」


◇◆◆◇


 はっきり言って殺されるか良くて半殺しぐらいの事をされると思っていた。

 サラにとって人族、魔族関係なく強さを手に入れた者の大半は自分勝手で横暴だという風に思っているのだが、しかしクロは文句も言わず素直にその条件を飲んだ結果、一日たった今サラはクロのために新たにギルドカードを制作し、レニア達の外部講師手続きを行っていた。

 もちろんバレたら懲戒免職されそのまま逮捕、死刑ないし極刑である事は間違いないだろう。

 そんな事を思いながら魔法が施されている特殊な鉄板の上で作業するサラの手は震えている。


 サラにとって見ればクロは街一つを人質にしているようなものなのではっきり言って気が気じゃない。この街の運命はサラの一挙手一投足に委ねられているのだ。


「で、出来ました。これで晴れて貴方は外部講師です」

「ありがとう。無理を言ってすまない」



「い、いえっ。そんな大したことではないのでっ!」


 本当は大したことありまくりなのだがその事を悟られまいと振る舞うのだが、クロにはお見通しらしく頭をクシャクシャに撫でられ「すまない。このお礼は必ずする」と他人に聞こえないように私の耳元で囁かれ、突然の事でビックリする。


「えっ、あっ、ちょっと!?」


 抗議の一つでも言ってやろうと思うのだが、クロは私に構わず新しいギルドカードを手に取ると直ぐにギルドから出ていく。

講師になるにはギルドでの登録の他に学園での登録をしなければならず、それは外部講師も例外ではないためレニア達がいる学園へ行くのだろう。


「……もうっ」


 ちなみに目の届く範囲内に彼を置く事は難しいため新たにギルドガードを作る際に次いでに私とクロだけのパーティーを作り、パーティー内で使えるシステム“メンバー同士の位置情報の把握ができる”という機能を使い、彼が何処にいるか確認できるようにしている。

 もちろん、私の位置情報も彼に知られてしまうのだが、この際仕方ないと割り切っている。


「見たわよサラ。まさかサラに男が出来たなんてね……せめて親友の私には誰なのか教えてよ?」


 そして大魔王がこの学園都市にいるという事実など知るよしもないキンバリーが笑顔で問いかけてくるのだが、目がマジである。


「まったく、こういう時にだけ親友って言葉を使うんだから」


 そう言うとキンバリーは「あら、そうだったかしら?」と悪びれもなく惚ける。

 剣帝と恐れられている私にも分け隔てなく接してくれる所が彼女 の良き部分なのだが、この時ばかりはそれが煩わしく思ってしまう。


「まぁ、それは置いといて……でっ、彼は誰なのかしら!?まさかサラが束縛癖があるってのも意外だったわっ!」

「誰でも良いでしょ。それに束縛癖なんてありませんっ!」

「でもパーティー登録を進めたのはサラの方からだったよね?どうしてパーティー登録なんかする必要があるのかなぁ?」

「それは彼が何処で何をしているか気になるからに決まっているでしょう!本当は私の目が届く範囲に彼を置いときたいのを我慢してるんですからね!できないからパーティー登録したんですっ!!」


 いつの間にかギルド内は静かになっており私の声がギルド内の隅々まで響き渡り、反響する。


 キンバリーが煩わしくなりつい語気を強めて反論してしまったのだが、これは取り返しのつかない事をしてしまったのではないか?どう考えても私の反論は束縛癖を肯定するような内容そのものである。


 どう説明したら良いものか。


 そう思いつつも親友の顔を見ると今まで見たことの無いような物凄く良い笑顔をしているではないか。


「…………サラ?」

「な、なんですか?」

「仕事が終わったら飲みに行くわよ」

「いや、でもクロと落ち合う約束を……」

「へぇークロさんという方ですか。すでに呼び捨てで呼んでる仲ですか」

「いや、そうじゃなくてっ」

「言い訳は飲みの席で聞いてあげるから。奢りよね?」

「………………はい」


 19歳で未だに独身のキンバリーの目を見て断る事が出来ないサラであった。



それがルールなら※日本人故にルールに弱い

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