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ヴァンパイアの魔王異世界奮闘記  作者: Crosis
第一章
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それぞれの思い◇

◇◆セラ視点◆◇


「行かれましたか……」


 クロ様が旅立って行かれた方角を見えなくなっても見つめ、なんとも言えない虚無感が私を襲う。


 周りの家臣達は私の次にクロ様との出会いが古く、ルシフェルが来るまではいつも一緒に旅をしていたイフリートの指示によりあわただしく動いているのが見える。

 クロ様から新たに家臣達で結成したギルドパーティーの副リーダーにイフリートが任命さた時は白く長い髭を触りながら「まだまだ隠居させてくれぬか」という口から出た嫌みとは裏腹にクロ様に頼られ嬉しそうな顔を隠せず、目にはやる気がみなぎっていた。

 そんな彼の姿を眺めていると視線に気付いたのかイフリートが私のほうに近付き声をかけてくる。


「セラはこれからどうするのだ?」

「そうですね、ルシフェルとウィンディーネ、それから何名かの仲間を募りこの世界を旅しようかと思っております」


 私はあれから考え、クロ様と同じくこの世界を旅しようと思っていた。

 勿論この世界の情報を集めてクロ様の役にたちたいという部分もあるのだが、何よりクロ様に頼らず旅をして自分達を試してみようと思ったのである。


 クロ様の力と指示に頼って来た今までとは違い、自分達で考え自分達の力で生き抜く術を身に付ける為に。


 ちなみにバハムートは竜種、龍種などがいるとされる場所を聞き出し既にその場所へ飛び去って行っていた。

 なんだかんだでこの中で一番クロ様に付いて行きそうだったため少し驚いていたりする。

 彼が何を思い考え飛び去って行ったのか分からないのだが、彼なりの考えがあっての行動なのだろう。


「そうか…あまり無茶な事は避け、安全第一に――健康には――急げばまわれという言葉が――」


 そしてイフリートの長話が始まったので話を半分以上聞き流しながら相槌を打つ。


「ではそろそろ私達は出発の準備にかかりますので…」

「儂が若い頃は……おぉ、まだ話は終わってないのだがな、お前たちなら大丈夫だろう。では儂もそろそろセバスチャン殿が待っておられるので戻るとするかの」

「身になる話、ありがとうございました。イフリートさんもセバスチャンさんもいい歳なんですから無茶はしないでくださいね。では、失礼します」


 いつもは少し、多少、微妙に煩わしく思うイフリートの説教じみた長い話も次いつ聞けるか分からないのだと思うと何故か名残惜しく感じるため不思議である。


 そしてセラはウィンディーネ達のいる場所へ向かうと、既にウィンディーネが私達と一緒に旅する仲間を集めて待っていてくれているのが見えた。


「せ、セラ様達と一緒に旅をさせてもらう事になりました、ノクタス街出身18歳、冒険者ランクBのレイチェル・グランと言いますっ!」

「……えーと」


 ウィンディーネからは一緒に旅する仲間を募ってくると確かに聞いていたのだが、まさかこの世界の住人とは思わず固まってしまう。


「東ドルトル国イノメ村出身17歳、冒険者ランクA、ミセル・ブラウンです!」


 そしてもう一人、セラの前に来ると自己紹介をする。


 レイチェル・グランはウエーブのかかった赤茶色の髪に水色の目、そばかすが目立つが逆にそれが可愛く見える。しかし胸に鎧を付け腰に短剣を下げている姿から熟練度が伺えるその佇まいからは可愛さよりも洗練された強さを感じ取る事ができる。

 また、ミセル・ブラウンは透き通るような金髪のロングヘアにキリっとした眼差し、レイチェルと同じく青い瞳に鋼の鎧を着込み、自分の背丈よりも大きいであろうランスを自らの横に置いておりセラの前で片膝を付き頭を下げている。その姿からはまるで騎士のようであるが、完璧の容姿に思えるミセルの胸は絶壁であった。


 そんな二人を前にしてセラは少し固まったあと、ウィンディーネに「何で現地の冒険者を連れて来たの?」と目で合図する。


「この世界の知識、そして旅の間の食事係」


 と、セラの耳元で彼女達に聞こえないよう短略的に説明する。特にウィンディーネは食事係の部分を強調してこたえた。


 確かに私たちは料理ができないのだが、しかしクロ様ほど多くの種類は仕舞えないのだがストレージはあるのでそこに食べ物を詰め込めばいいだけではないのか?料理ができなくても何ら困らない――


「クロ様の胃袋を掴みたくない? セラ」

「それとこれとは別です。しかし、連れて行く価値はあるでしょう。許可します」


 ――のかもしれないのだが、強敵との戦闘では私たちの足でまといにしかならないであろう彼女達が今の自分達とか重なり、ほっとけなく思い一緒に旅する事を承諾する。


 次いでに料理も覚えようかとも思う。

 けして、ウィンディーネが言ったからとかではなく、本当、興味本意で。


「では早速パーティー登録をして旅に出ましょう」

「あ、ありがとうございます!」

「かしこまりました」


 そしてセラ達は旅に出るのだが、旅に出た初日の夜にルシフェルのストレージには大量のお菓子しか入ってない事が、ウィンディーネのストレージには大量の水しか、セラのストレージには大量のクロ様をモチーフにしているであろう人形や刺繍が入ったハンカチなどが入っており、レイチェルとミセルは頭を抱えながら注意する羽目になった。



◇◆◆◇



「あの、怒らないで聞いてくださいますか?」


 ひとまず平原を抜けることにしたセラ達は旅を舐めすぎだとレイチェルに怒らえるのだが、その説教じみた長話が終わりかけたころ今までマシンガンのように飛ばしていたレイチェルの言葉は減り、セラ達の機嫌を伺うような態度をとり始める。


「はい。何ですか?」

「セラ様は魔王様のどこがいいのですかっ? てか何で人族まで魔王軍にいたのですかっ!?」


 そしてレイチェルはセラ達と一緒に旅をする理由の一つでもあり、疑問でもある事をセラに質問するのだが、隣にいるミセルがレイチェルの質問の内容を聴き、汗を滝のように流しはじめる。


「ちょっ、お前っ!? なんて事をきいているのですかっ!? すみませんっ!コイツに悪気は無いのです! ちょっと、いやかなり頭が足りないだけなんです!」

「何よ? ミセルだって不思議がってたじゃない? 魔族は分かるが何で人族まで魔王軍にいたのか。しかも魔王軍に入っていた人族は皆魔王様を尊敬しているように見えたって」

「なぜ今ばらすっ!? い、いや、そのだな…あのですね……魔王様すごいなーと思いまして…!!」

「ふふふ…あははははっ!」


 そんな二人の姿を見てセラが我慢できないと笑い出す。


「なんだ? お前たちは仲がいいとは思っていたのですがここまで仲がいいとは思わなくて…ふふ」


 ここまでの道中、二人の会話の節々から知り合い同士だとは思っていたのだが息の合った二人のコントを見せられ思わず笑ってしまうセラ。

 ウィンディーネを見ると彼女には珍しく笑うのを我慢しているのが見える。


「このアホとは幼少期からの腐れ縁です」

「私のおじいちゃんがミセルのお隣りさんなんです。ミセルは十の時までおねしょおおおおおおお痛い痛い痛いっ!」

「なるほど、幼馴染という奴ですね。仲がいいのも納得です。では、二人はお互いの事をどう思いますか? 憎いですか? 嫌悪感を感じますか?恐怖を感じますか?」


 そんな二人にセラは問いかける。二人は互いに負の感情を感じるかと。


「ムカつく事はありますが、姉妹のような存在ですのでそこまでの感情は抱けないですね」

「だよね。まあこの場合私がお姉ちゃんかな? 胸的にも」

「ぜ、前言撤回します…今日という今日は…」

「落ち着きなさいミセル。レイチェルも一言多いですよ」

「……わ、分かりました。セラ様に免じてここは矛を収めましょう」

「ごめんなさい…」


 そしてまた二人がじゃれあいはじめたので落ち着かせる。なんだかんだで仲がいい証拠ではあるのだが、今は静かにしてもらわないと話が先に進まない。


「そうですね、レイチェルの質問ですが、あなたたちと同じですよ」

「…わ、私達と同じ?」


 そしてレイチェルの質問にやっと答える事ができたセラだがミセルもレイチェルも理解でいないでいるようだ。


「そうです。人族や魔族、精霊族などと種別で考えるから難しいのです。どの種族も、言葉を喋り互いに意思疎通が出来ます。ただそれだけです。人族だから、魔族だからと考えるから難しいのです。クロ様は私たちを種族で分け隔てたりせず同じように接してくださいます。そしてその中の誰よりも強く正しく尊い存在、それがクロ様で、魔王ではなく今は大魔王様です」


 説明してる途中からクロ様への想いが溢れ出し、説明に熱を帯び始めるのだが、それでも新しく仲間になった二人は納得いかない顔をしている。


「でも…魔族は我々の同胞を殺して来た…」


 そしてレイチェルがその不満を口にする。

 そんなレイチェルの前にウィンディーネが歩み寄りセラの代わりに語りかける。


「人間も数え切れない魔族を殺している」

「そ…それは…」

「では、魔獣や獣はどうなる? 彼らもまた人間の命を日々奪っている」

「……」

「なぜ魔獣や獣は憎まず人族は魔族を、魔族は人族を憎むか分かる?」

「…いえ」

「お互いにお互いを解り合えると分かっているから、お互いがお互いを傷つけると腹が立つし許せないと思ってしまう。何で理解してくれないんだ? …と。でも、人族も魔族も要求するのは自分の都合だけで相手の事は二の次。だから分かり合えない。クロ様はそんな小さいこと気にしない御方で、私の夫です」


 レイチェル達に説明した事よりもクロ様の事について話せた事に満足するウィンディーネなのだがその肩をセラが掴む。

 その顔は微笑んでいるのだが隠しきれない苛立ちが滲みでてきている。


「ウィンディーネ、最後の一文…聞き捨てならないのだけれども?」

「こればかりはセラがなんと言おうが仕方がない事だ。もうすでに運命で結ばれる事は決まっているの」

「今日という今日は許しません! クロ様の伴侶は私なのです!」

「よくて愛人の間違いでしょう?」


 そして口喧嘩を始める二人を眺めるレイチェルとミセルは「仲がいいんだなー」と思えてしまうのだが、そんな二人にルシフェルが近づくとニッコリと微笑む。


「あの二人魔族だよ? ちなみに私も魔族。怖い?」

「は?」

「え?」


 セラやウィンディーネの説明よりもルシフェルのその一言が二人の疑問を解消させる。


 はじめはビックリした二人だったのだが未だに罵り合ってる二人を見ると魔族も人族と変わらないと思え、クロと名乗った魔王はその事に気付きまとめ上げたからこそ種族に関係なく魔王として認められているのだと思うのであった。

なんて事を聞いているのですかっ?※気になるのは分かるがパンドラの箱だって事は分かってるでしょうがとう意味も同時に含んでいる

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